ダブルソード 第三章 ~サリア帝国編~

磊蔵(らいぞう)

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第63話 幸せな時間

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クロエが部屋から出て行った後、暫く気まずい沈黙の中にいた二人だったが、やがてどちらともなく顔を見合せると苦笑いを零した。

「まさかクロエさんに見られちゃってたなんてね……」

「ああ、全く気付かなかったな……」

(もっと周りに気を付けなきゃなぁ……)

和哉は自分が迂闊だった事を反省していた。
もっと人目を気に掛けるべきだったのだ――なにせ、自分たちは男同士なのだから……。
男女のカップル以上に気をつけなければならないのだと思うと和哉は何だか少し憂鬱になってしまった。

(ただ、この人が好きなだけなのになぁ……)

そう、好きになっただけなのだ。
ただそれだけのことなのに同性同士というだけで何故こんなにも悩まなければいけないのだろうか?――和哉は溜め息を漏らす。
確かに、異性同士であっても色々な問題が出てくるだろうが、それでも同性愛者に比べれば世間の理解も得られるし、結婚だって出来る。
和哉自身も元々は異性愛者側の人間だったはずだが、いつの間にかギルランスの事しか考えられなくなっていた。

(僕ってバイだったのか……こんな悩みを持つ日が来るなんて夢にも思わなかったよ……)

和哉は自分の性癖を改めて実感しつつも、今までの人生で一度も感じたことのない苦悩に苛まれる。
しかし、どんなに悩んだところでこの気持ちはどうにもならないのだから仕方がなかった。

(はぁ~……どうしたらいいんだろう……)

深い溜め息を吐きながらそんな事をぼんやりと考えている和哉の横から不意に声がかかる。

「どうした?」

その声にはっと顔を上げると怪訝そうな顔をしたギルランスと目が合った。
どうやら考え事をしている間ずっと黙り込んでいたらしい。

(いけない……またやっちゃったよ……)

和哉は最近考え事をする事が多くなってしまっている自分に気付き、慌てて取り繕い笑顔を浮かべると、誤魔化すように答える。

「ううん、なんでもないんだ……ちょっと疲れただけだから……」

するとそれを聞いたギルランスは何かを察したのか、和哉の顔を覗き込んでニヤリと笑った。

「お前、またろくでもねぇ事考えてただろ」

「うっ……!」

(なんで分かるんだよ……!?)

図星をつかれてしまい言葉に詰まる和哉の様子を見て、ギルランスは笑いを堪えるようにクツクツと喉を鳴らした。

「まったくお前は……すぐ顔に出るから分かりやすいな」

「……うう……」

(僕ってそんなに顔に出やすいのかな?)

などと思いながら和哉が自分の顔に手を当てムニムニと触っていると、隣から堪えきれなくなったような笑い声が上がった。

「――ぷっ……くっくく……っ」

「ちょ、何笑ってるんだよ!?」

和哉は抗議するようにギルランスを睨みつけるが、彼にはまるで効果がなかったようで、尚も可笑おかしそうに笑っていた。

「いや、悪い……くくっ、お前の百面相を見ていたらつい――っふ、くくくっ」

「何だよそれ……」

一向に収まる気配のないギルランス憮然としながらむくれてみせるが、何を言っても無駄だと悟った和哉は大きく肩を落とすと深々とため息をついた。
そんな和哉をよそに、ひとしきり笑い終えたのか、やっと笑いを収めたギルランスは目尻に浮かんだ涙を拭いながら口を開いた。

「いやぁ、悪かったって」

「ふんっ」

すぐに許してしまうのも癪に感じた和哉は少し大げさにそっぽを向き、わざと怒ったような態度を取ってみる――すると、ギルランスは苦笑い交じりに和哉の顔を覗き込むように見つめて言った。

「なんだよ、拗ねんなよ」

「別にー?拗ねたりしてませんけどぉ?」

和哉が明らかに”拗ねています”とばかりの口調で答えると、さすがのギルランスも眉尻を下げ困った様子を見せる。

「あー……分かった、俺が悪かったって……機嫌直せって」

「うーん……どうしよっかなー……」

(本当はそこまで怒ってるわけじゃないんだけどね……)

内心でそう思いながら、和哉はチラリとギルランスへ視線を向けると、ふと思いついた案を悪戯っぽい笑みと共に口にした。

「そうだなぁ……じゃあ、“お休みのキス”させてくれたら許してあげる」

和哉の提案に一瞬目を大きくしたギルランスだったが、すぐにククッと喉を鳴らして笑う。

「なんだそりゃ?まあ、いいぜ……ほら」

“仕方ねぇな”とばかりに言いながらもどこか嬉しそうに笑うギルランスは、ベッドに座っている体を少し和哉に向け座り直すと両手を広げて迎え入れるポーズを取った。

(やった!)

和哉が喜び勇んでギルランスの胸に飛び込めば、「おっと」と言いながらも彼はしっかりと受け止めてくれる。
その腕の温かさを背中に感じながら、和哉はギルランスの肩に腕を回して抱き付き――そのまま顔を近づけていくと彼の唇が降りてくる。
軽く触れるだけの口付けだったが、それだけでも和哉に幸せな心地をもたらしてくれる。
唇が離れた後、互いの視線が絡み合うと自然に笑みが溢れた。

「えへへ……」

「ふっ……」

どちらからともなく額を合わせ、鼻先を擦り合わせるとクスクスと笑いながらも、和哉は幸せだと感じると同時に胸が締め付けられるような切なさを感じていた。

(ああ……本当に、この人が好きだ……)

再び顔が近づき、今度はもう少し長く唇を重ねる――お互いの唇の感触を確かめる啄むようなキスだ。
ちゅ、ちゅっと軽いリップ音を立てながら何度も繰り返しているうちに、和哉は段々と気分が高揚してくるのを感じた。
もっと深く彼と繋がりたい――再びそんな欲求に駆られてしまう。

(もっと深く――)

そう思った瞬間、先程のギルランスに拒絶された場面が和哉の脳裏に浮かび、躊躇してしまう。
和哉は自分の中に沸き上がる欲望をぐっと我慢すると、そっと唇を離した。
少し寂しい気持ちになりながらも、これ以上ギルランスを困らせるのも良くないだろうと思い直し、そっと体を離し微笑み掛けた。

「ありがとギル――じゃあ、おやすみ」

ベッドから立ち上がり笑顔を作りながら言う和哉に、ギルランスはなぜかきょとんとした顔をしていた。

(あれ?なんか変なこと言ったかな?)

自分の言動を思い返しながら首を傾げる和哉だが、やはり思い当たる節は無い――が、ギルランスは不可解そうな表情を浮かべたままだ。

「――?……どうかした?」

和哉の問いにギルランスは何かを思案するように顎に手を当てていたが、やがて首を傾げながら口を開いた。

「いや……お前の言う『大人のキス』とやらはしなくていいのか?」

キョトン顔で見上げながら首を傾げる、などという可愛い仕草でそんな事言われてしまえば、堪ったものではない。

「――っ!!」

その瞬間、胸に甘い痛みを覚えた和哉は、思わず胸を押さえて床にうずくまってしまった。

(なに、この可愛い生き物っ……!無自覚煽りスキル、恐るべし!!)

突然の不意打ちとも言える攻撃に和哉が悶絶していると、頭上から心配そうに慌てる声が降ってくる。

「お、おい、どうした!?大丈夫か!?」

(だ、大丈夫じゃない!主に心臓が!)

「……む、無理……」

「なんだ!どっか痛ぇのか!?腹か!?」

和哉の異変にギルランスは焦ったように立ち上がると、蹲っている和哉の横にしゃがみ込み背中をさすってくれた。
その優しさが更に追い討ちとなり和哉はますます悶える羽目になったのだが、なんとか言葉を返す。

「いや……心臓が……」

「――し、心臓!!?」

胸を押さえながら応える和哉に、ギルランスはぎょっとしたように目を見開いたかと思うと、オロオロしながら和哉の顔を覗き込んだり背中をさすったりし始めた。
そんなギルランスに嬉しさと申し訳なさを感じながらも、和哉は彼の鈍さに内心苦笑いしていた。
普段はあんなに鋭いくせに、こういう時だけ何故こうも鈍いのだろうか――と心の中で溜め息を吐く。

(でもそこがまた可愛いんだけど……)

そんな事を考えながら、和哉は正直な気持ちを口にする。

「もうさ……ギルが可愛すぎて僕の心臓がもたないよ……」

「――なっ!!??」

まさかそんな返事が返ってくるとは思っていなかったのだろう、ギルランスは驚愕したように目を見開き絶句した。

(あ、今の顔もちょっと可愛かったかも……)

などと和哉が呑気な感想を抱いている間にも、ギルランスの顔はどんどん赤みを増していき――何か言おうとしているのか、口をパクパクとさせているが言葉にならない様子だった。
おそらく『可愛い』などと、およそギルランスにとって人から言われ慣れていないであろう言葉に混乱しているのだろう。
顔を赤くして狼狽えるギルランスの姿が可愛くて、和哉は思わず笑みを零してしまう――が、次の瞬間、頭にゴツンと拳骨が降ってきた。

「イテッ!」

どうやらギルランスが正気に戻ったらしい。

「……痛いよ、酷いなぁ」

「ば、バカ野郎!!心配させんじゃねぇよ!!」

涙目で頭を押さえて見上げる和哉に、ギルランスは怒ったような表情で睨みつけていた。

(あ、いつものギルに戻った……)

先ほどまでの初心うぶな反応を見せていた彼はどこへやら――すっかり普段の調子を取り戻したらしいギルランスは、呆れたように溜め息を吐きながら立ち上がる。

「ったく、紛らわしいんだよ、お前は……心配して損したぜ……」

ブツブツと文句を言いながらそっぽを向くギルランスに、和哉は慌てて立ち上がり弁解した。

「ご、ごめん……まさかギルのほうからそういうキスをしていいなんて言ってもらえるとは思ってなかったからさ……つい、ね……」

するとギルランスは和哉の方を向き直り、ニヤリと笑ったかと思うと先ほどの反撃とばかりに揶揄からかうようなセリフを口にする。

「そりゃ、お前があんまり物欲しそうな顔してっからだろ」

「うっ……!」

図星をつかれてしまった和哉は言葉に詰まってしまう。
そんな和哉の顔をギルランスは覗き込むと、さらに煽るような悪戯な笑みを浮かべてみせる。

「で?どうするよ?」

「でも……ホントにいいの……?」

つい先刻裏庭で見せた彼の姿を思い出しながら窺うように和哉が確認すると、ギルランスは苦笑いしながらも、あっさりとうなずく。

「ああ、まあ、別に減るもんじゃねえしな……それに、お前がそうしたいってなら構わねぇよ」

その言葉を聞いた途端、和哉は一気に自分の体温が上昇していくのが分かった。

(うわわゎ……や、やった!)

思いがけず早い段階で次に進めることが出来、和哉は天にも昇る心地で歓喜する。
あまりの嬉しさに今にも踊り出してしまいそうな心地の和哉は、浮かれた気持ちのまま早速ギルランスに伝えてみたが――その伝え方が少々間違っていたようだ。

「じゃあさ――ギル、舌出して?」

「――はぁ!?」

想像の斜め上をいく和哉の要求だったのか、ギルランスは思わずといったように素っ頓狂な声を上げた。

「……お、お前は、いきなり何を……」

若干引き気味の反応を見せるギルランスに対し、お構いなしの和哉は満面の笑顔で彼の頬に手を添え、ワクワクしながら催促した。

「ほら、早く♪」

「おま……もしかしてまだ酒、抜けてねぇんじゃ……?」

ギルランスは疑わしそうな目つきで和哉を問いただす。
そう、確かにギルランスの言う通りだった――普段の和哉であればここまで大胆な行動は取らなかっただろう(後で思い返して死にたくなるほど後悔したが)。
だが、今の和哉にはそんな自覚は微塵もない。
あるのはただ、目の前にいる愛しい男と深く繋がりたいと強く望む気持ちだけだった。

「ねぇ、お願いだよ……ギル……」

「……う……わ……かった……」

和哉が懇願するように言うと、ギルランスは暫くの葛藤したのち、とうとう観念したように承諾してくれた。

「やった♪」

「ったく……お前って奴は……」

無邪気に喜ぶ和哉の様子に毒気を抜かれたのか、ギルランスは苦笑いをしながら大きな溜め息を吐くと、「これでいいのか?」と言いつつあかんべをするように舌を出してみせた。
その赤い舌を見た瞬間、一気に和哉の興奮が高まり頭が沸騰しそうになる。

(うわぁ~~~~~!!!!やばい!これは想像以上にエロい!!)

あまりの衝撃的な光景にゴクリと唾を飲み込む。
今すぐむしゃぶりつきたい衝動に駆られる和哉だったが、何とか自制心を総動員させて我慢した。

(落ち着け!落ち着くんだ!こんなチャンス二度と無いかもしれないんだぞ!ここは慎重にいかないと!)

ここで理性を失って暴走してしまっては全てが水の泡になってしまうので、和哉は必死で逸る気持ちを抑え込みギルランスに微笑みかけた。

「うん……ありがとう、嬉しいよ」

礼を言いながらギルランスの瞳を見つめると、その琥珀色の奥に微かな期待と欲望の色が垣間見えるような気がした。
その瞳の色に誘われるように和哉はギルランスの頬にそっと手を添え、顔を近付けていく――。

(うわ……なんか、緊張してきた……)

自分から誘っておいて今更ながら緊張してしまっている事に気が付くが、ここまで来たらもう止められない。
バクバクと暴れる心臓を抑えつつ和哉はゆっくりと舌を出し近づけていき……彼のそれに触れる。
瞬間、一瞬ギルランスは少しだけ身体を固くしたようだったが、それ以降は大人しく和哉のするがままになっていた。
その様子に安堵しつつ、和哉はお互いの舌を絡め合うように舐めて行き、そのまま口を塞ぐように深く口づけた。

(うわ……すごい……気持ちいい……)

ギルランスの口の中はとても熱くて、まるで溶けてしまいそうだと思うほど心地良かった。
今回はギルランスも拒絶することなく、戸惑いながらも和哉の行為を素直に受け入れてくれている。
しかも、最初はぎこちなかったギルランスの舌が徐々に積極的になっていくのを感じる――それは彼が受け入れてくれた証拠だ。
和哉の中に嬉しさと同時に抑えきれない程の愛おしさが込み上げて来る。

(ああ、ギル……好きだ……愛してる……誰にも渡さない!)

そう思うと堪らなくなり、もっと彼を感じたくて和哉はギルランスの首に腕を回し、しがみ付くように抱き着くと、彼もそれに応えるように強く抱き締め返してくれた。

(幸せ過ぎて死にそう……)

今まで味わった事のない幸福感に包まれながら、和哉はこの至福の時間を噛み締めていた。
何度も角度を変え、深い口付けを繰り返すも、それは貪るような激しいものではない――初めてディープキスを経験したであろう息継ぎもままならない様子のギルランスに合わせ、和哉はあくまで優しく穏やかな口付けに専念していた。
重ねた唇の間から時折どちらの物とも分からない熱く甘い吐息が漏れ、静かな室内に響きわたる。
その行為は、時間にしてほんの数分だったが、和哉にとっては永遠のようにも思えるものだった。
やがてどちらともなく唇が離れていき――名残惜しむように二人の間に銀色の糸が伝い落ちる。

「……」

ギルランスはそれを拭うことも忘れたように、潤んだ瞳でぼんやりと和哉を見つめていたが、「……ギル」と呼ぶ和哉の声に漸く我に返ったらしくハッと瞬きをすると、慌てて口元を袖で拭った。

「あ、わりぃ……つい……」

照れ臭さからなのか、バツの悪さからなのかは分からないが、そう呟きながらポリポリと頬を掻くギルランスの仕草がまた一段と可愛くて、和哉は思わず胸がキュンとなる。
その様子を見る限りでは、ギルランスが初めてのディープキスに戸惑いこそすれど、決して嫌がっているわけではないということは明白だった。
むしろ、彼も少なからず快感を覚えているのではないか?――と思える反応だ。

(よかった……ギルも気持ち良くなってくれたみたいだ)

そんなギルランスの様子にホッと安堵した和哉は、同時に胸の奥から一気に喜びが込み上げてくるのを感じる。
そして、無性に嬉しくなってしまい、堪らず飛びつくようにギルランスの首に抱き付いた。

「うおっ!?なんだよ!?」

いきなり抱きつかれて驚いたのだろう、ギルランスは困惑の声を上げるが和哉を引き剥がそうとはせず、そのまま抱きとめてくれる。
その腕がまた嬉しくて、益々込み上げる愛おしさを覚えながら、和哉は背伸びをするようにギルランスの首元に顔をうずめると、深く息を吸い込んだ。

(あぁ……ギルの匂いだぁ……)

服越しに感じる逞しい体とその肌の熱に、ドキドキと鼓動が早くなり、頬が熱くなる。
同時に嗅ぎ慣れたギルランスの匂いが鼻腔を擽り、和哉はますます胸が締め付けられるような感覚に襲われる。

(はぁ……幸せだなぁ……ずっとこうしていたい……)

そんな思いに浸りながらギルランスの匂いを堪能している和哉の頭上でフッと笑う気配がしたかと思うと、ギルランスの手がぽんっと和哉の頭に置かれた。
そのままゆっくりと髪を梳くように撫でられて、その心地良さに思わず目を細める。

(気持ちいぃ……)

ギルランスの手の暖かさと優しさは和哉を堪らなく安心させるものがあった――この手が自分に触れている時だけは、自分はこの人にとって特別な存在なのだと思えるからだ。

(……好き……大好きだよ、ギル!)

和哉は心の中で口に出来ない想いを叫びながら――その熱い想いを伝えるかのように――つい、ギルランスの首に縋り付く腕にギュッと力を込めてしまう。
すると、ギルランスはそんな和哉の頭をポンポンと軽く叩きながらクツリと喉を鳴らした。

「……おい……絞め殺すつもりか?」

少し困ったような優しい声音で、窘めるようにかけられたその言葉にハッとした和哉が慌てて腕を緩めると、ギルランスは「冗談だ」と言いながら小さく笑った。
その笑みに釣られるようにして和哉もクスリと笑みを零しながら、自分も冗談めかして言ってみる。

「えへへ……そしたら僕も一緒に死ぬからさ」

その言葉にギルランスは一瞬驚いたように目を見開くと、すぐに嬉しそうに目を細めた。

「……そうか」

「うん……」

お互いに微笑み合い、二人はもう一度キスを交わすと再び抱きしめ合う――そして互いの温もりを分け合うように暫くの間そうしていた。

ここまで来てもまだ、ギルランスの気持ちを測りきれずいまだに告白も出来ない自分に内心苦笑いを零しながらも、和哉はその温かい腕の中で、少しづつだが確実に二人の仲は深まっているという実感を得ていた。

(この先、どうなるかはまだわからないけど……今はこの関係を大事に築いていきたいな……)

そんな風に考えつつギルランスを抱きしめ返した和哉は、彼の肩に頬を寄せて目を閉じると、今受け取れる幸せを存分に堪能することにした。
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