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第71話 悪夢
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「ギル!!だめだ!!」
和哉は叫びながら飛び起きた――!
心臓がバクバクと音を立てている。
布団を握る手は微かに震え、額からは冷や汗が流れ落ちた。
(夢か……)
和哉は額の汗を拭いながら大きく息を吐いた。
(ギル……)
先程まで見ていた夢――内容はもう既に覚えてはいなかったが――酷く禍々しかったような記憶があり、思わず身震いをする。
嫌な予感がして、どうにも不安になってしまい、和哉は自分で自分の体を抱き締めた。
「……大丈夫」
小さく呟き自分を落ち着かせるように深く深呼吸を繰り返す。
するとその時、どこからともなく「ミャ~」という猫の鳴き声が和哉の耳に届いた。
「え……?」
ハッと顔を上げ、声のした方向に目を向けると、ベランダの手すりの上の方にちょこんと座る一匹の子猫と目が合った。
(あ……白猫だ……)
そう思った時には子猫はぴょんと手すりから飛び降り、どこかへ行ってしまった。
和哉はベッドを抜け出し、窓を開けベランダに出てみたが当然の事ながら既に子猫の姿は見当たらない。
(なんだか白い子猫に縁があるなぁ……)
こちらの世界に来たきっかけも白い子猫だった事を思い出し、なんとなく不思議な気分になる。
もしかしたらあの猫にも何か秘密があるのかもしれない――そう考えた時、ふとある考えが頭を過った。
それは本当に突拍子もない考えだったが、何故か妙にしっくりくるものだったのだ。
(まさかね……)
そんな事はある筈がないとすぐに打ち消したのだが、もし仮にそうだったとしたらと考えると、やはり自分はこちらの世界に呼ばれてしまったのかも――と思わずにはいられなかった。
そして、ギルランスと出会うように運命づけられていたのではないか――そんなふうにも思えてしまう。
(いやいや……考えすぎだろ……)
いくらなんでもそんな事はないだろうと自分の考えを打ち消す様に頭を振った和哉は、朝の冷たい空気にぶるりと身体を震わせた。
空を見上げると、もうすぐ夜明けのようで、東の空はうっすらと白み始めており、星が次第に消えていくのが見えた。
そのままベランダの手すりに寄りかかり、ぼーっとしながら空を眺めていると、やがて朝日が昇り始め辺りが徐々に明るくなってきた。
見事な朝焼けだ。
まるで燃え盛るような赤――炎のような色だ。
見ているだけで和哉の胸は締め付けられそうになる――それはまるで……。
(なんだかギルの炎を思い出すな……)
そう思った瞬間、急に湧き上がる不安感が和哉を襲う――もしかしたら……ギルは――。
さっき見た夢が脳裏に蘇ってきてしまい、和哉はまたゾクリとした寒気に身を震わせた。
(駄目だ、悪い方向にばかり考えるな!今はとにかくギルを信じて待とう!)
弱気になってしまいそうな自分を叱責するように頭を振ると、気持ちを切り替えて身支度をするために部屋に戻る和哉だった。
****
****
「おはようございます」
朝食のため公会堂の食堂に行くと、すでにカエサルとエマが席に着いていた。
和哉もカエサルの隣に座ると、給仕係の女性達が食事を運んで来てくれたので、三人で一緒に食事を始めた。
「カエサルさん、昨日は魔力回復ポーションをありがとうございました。お陰様で今日は魔力フルチャージです!」
和哉が隣に座るカエサルに声をかけると、カエサルは一瞬目を見開き驚いた様な表情を見せたが――すぐにいつもの柔らかな笑みを浮かべた。
「いえいえ……!お役に立てたのなら幸いですよ!」
そう言ってニコリと微笑むカエサルを見て和哉はほっとした気分になる。
昨晩の事を思い出すと少し顔が熱くなるが、今はそれを悟られないように努め、そのまま何気ない会話を続けながら三人で朝食を食べ進めた。
その後、食事を済ませた三人は、また手分けをして患者たちに回復魔法をかけていくが――その施術中、ふと和哉は気が付いた。
昨日より重傷者の人数が増えているような気がするのだ。
(もしかして、症状の進行が早まってる……?)
「あの、これって……?」
不安になった和哉は、隣で他の患者に施術しているカエサルに小声で話しかけてみた。
「うん、どうやらそうみたいだね……」
和哉の言わんとしている事が伝わったようで、カエサルはうなずきながら難しい顔をした。
(やっぱり――!)
「そ、そんな……」
(どうしよう……もしこのまま悪化していったら……)
最悪の事態を想像してしまい、青い顔で俯いてしまう和哉に、カエサルは「大丈夫だよ」と言いながら肩をポンポンと叩いて励ます。
「必ずギルランス君が薬草を持って来てくれるよ!だから心配せず、それまでは私たちで持ちこたえよう!」
カエサルの言葉を受け、和哉はハッと顔を上げた。
(そうだ……ここで僕が不安になってどうする!しっかりしないと!!)
「はい!そうですね、頑張りましょう!!」
改めて気を引き締めながら大きく頷いた時、和哉の耳にパラパラと窓を打つ音が聞こえてきた。
その音に外を見れば、厚い雲に覆われた空から雨が降り始めているようだった。
「……これは荒れそうだね……」
カエサルが曇った表情のまま窓の外を眺めて呟いた。
確かに、風も出てきており、雲の流れも早いように見える。
(……嫌な天気だな……)
和哉は妙に騒ぐ胸の内と共に空を眺める。
もしかすると、この嵐のせいでギルランスの帰りが遅くなるかもしれない――そう思うと気が気ではなかった。
無事に早く帰ってきてほしい――祈るような気持ちで、ただじっと待っている事しかできない自分が歯痒かった――。
(きっと大丈夫だ……!)
和哉は自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
順調に行けば、明日にはギルランスは戻って来るはずなのだ。
(ギル……)
和哉は窓辺に立ち、外を眺めながら、ギルランスの帰りを待ちわびていた。
だが、その時だった。
突然外から魔物の咆哮が聞こえたかと思うと、激しい爆発音と共に建物が激しく揺れた!
(何だ!?)
慌てて外に飛び出すと、なんと、そこには巨大な魔獣がいたのだ――!!
和哉は叫びながら飛び起きた――!
心臓がバクバクと音を立てている。
布団を握る手は微かに震え、額からは冷や汗が流れ落ちた。
(夢か……)
和哉は額の汗を拭いながら大きく息を吐いた。
(ギル……)
先程まで見ていた夢――内容はもう既に覚えてはいなかったが――酷く禍々しかったような記憶があり、思わず身震いをする。
嫌な予感がして、どうにも不安になってしまい、和哉は自分で自分の体を抱き締めた。
「……大丈夫」
小さく呟き自分を落ち着かせるように深く深呼吸を繰り返す。
するとその時、どこからともなく「ミャ~」という猫の鳴き声が和哉の耳に届いた。
「え……?」
ハッと顔を上げ、声のした方向に目を向けると、ベランダの手すりの上の方にちょこんと座る一匹の子猫と目が合った。
(あ……白猫だ……)
そう思った時には子猫はぴょんと手すりから飛び降り、どこかへ行ってしまった。
和哉はベッドを抜け出し、窓を開けベランダに出てみたが当然の事ながら既に子猫の姿は見当たらない。
(なんだか白い子猫に縁があるなぁ……)
こちらの世界に来たきっかけも白い子猫だった事を思い出し、なんとなく不思議な気分になる。
もしかしたらあの猫にも何か秘密があるのかもしれない――そう考えた時、ふとある考えが頭を過った。
それは本当に突拍子もない考えだったが、何故か妙にしっくりくるものだったのだ。
(まさかね……)
そんな事はある筈がないとすぐに打ち消したのだが、もし仮にそうだったとしたらと考えると、やはり自分はこちらの世界に呼ばれてしまったのかも――と思わずにはいられなかった。
そして、ギルランスと出会うように運命づけられていたのではないか――そんなふうにも思えてしまう。
(いやいや……考えすぎだろ……)
いくらなんでもそんな事はないだろうと自分の考えを打ち消す様に頭を振った和哉は、朝の冷たい空気にぶるりと身体を震わせた。
空を見上げると、もうすぐ夜明けのようで、東の空はうっすらと白み始めており、星が次第に消えていくのが見えた。
そのままベランダの手すりに寄りかかり、ぼーっとしながら空を眺めていると、やがて朝日が昇り始め辺りが徐々に明るくなってきた。
見事な朝焼けだ。
まるで燃え盛るような赤――炎のような色だ。
見ているだけで和哉の胸は締め付けられそうになる――それはまるで……。
(なんだかギルの炎を思い出すな……)
そう思った瞬間、急に湧き上がる不安感が和哉を襲う――もしかしたら……ギルは――。
さっき見た夢が脳裏に蘇ってきてしまい、和哉はまたゾクリとした寒気に身を震わせた。
(駄目だ、悪い方向にばかり考えるな!今はとにかくギルを信じて待とう!)
弱気になってしまいそうな自分を叱責するように頭を振ると、気持ちを切り替えて身支度をするために部屋に戻る和哉だった。
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「おはようございます」
朝食のため公会堂の食堂に行くと、すでにカエサルとエマが席に着いていた。
和哉もカエサルの隣に座ると、給仕係の女性達が食事を運んで来てくれたので、三人で一緒に食事を始めた。
「カエサルさん、昨日は魔力回復ポーションをありがとうございました。お陰様で今日は魔力フルチャージです!」
和哉が隣に座るカエサルに声をかけると、カエサルは一瞬目を見開き驚いた様な表情を見せたが――すぐにいつもの柔らかな笑みを浮かべた。
「いえいえ……!お役に立てたのなら幸いですよ!」
そう言ってニコリと微笑むカエサルを見て和哉はほっとした気分になる。
昨晩の事を思い出すと少し顔が熱くなるが、今はそれを悟られないように努め、そのまま何気ない会話を続けながら三人で朝食を食べ進めた。
その後、食事を済ませた三人は、また手分けをして患者たちに回復魔法をかけていくが――その施術中、ふと和哉は気が付いた。
昨日より重傷者の人数が増えているような気がするのだ。
(もしかして、症状の進行が早まってる……?)
「あの、これって……?」
不安になった和哉は、隣で他の患者に施術しているカエサルに小声で話しかけてみた。
「うん、どうやらそうみたいだね……」
和哉の言わんとしている事が伝わったようで、カエサルはうなずきながら難しい顔をした。
(やっぱり――!)
「そ、そんな……」
(どうしよう……もしこのまま悪化していったら……)
最悪の事態を想像してしまい、青い顔で俯いてしまう和哉に、カエサルは「大丈夫だよ」と言いながら肩をポンポンと叩いて励ます。
「必ずギルランス君が薬草を持って来てくれるよ!だから心配せず、それまでは私たちで持ちこたえよう!」
カエサルの言葉を受け、和哉はハッと顔を上げた。
(そうだ……ここで僕が不安になってどうする!しっかりしないと!!)
「はい!そうですね、頑張りましょう!!」
改めて気を引き締めながら大きく頷いた時、和哉の耳にパラパラと窓を打つ音が聞こえてきた。
その音に外を見れば、厚い雲に覆われた空から雨が降り始めているようだった。
「……これは荒れそうだね……」
カエサルが曇った表情のまま窓の外を眺めて呟いた。
確かに、風も出てきており、雲の流れも早いように見える。
(……嫌な天気だな……)
和哉は妙に騒ぐ胸の内と共に空を眺める。
もしかすると、この嵐のせいでギルランスの帰りが遅くなるかもしれない――そう思うと気が気ではなかった。
無事に早く帰ってきてほしい――祈るような気持ちで、ただじっと待っている事しかできない自分が歯痒かった――。
(きっと大丈夫だ……!)
和哉は自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
順調に行けば、明日にはギルランスは戻って来るはずなのだ。
(ギル……)
和哉は窓辺に立ち、外を眺めながら、ギルランスの帰りを待ちわびていた。
だが、その時だった。
突然外から魔物の咆哮が聞こえたかと思うと、激しい爆発音と共に建物が激しく揺れた!
(何だ!?)
慌てて外に飛び出すと、なんと、そこには巨大な魔獣がいたのだ――!!
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