懐古主義オッサンと中二病JKは、上級職として召喚させられても、無双なんてしない

椎名 富比路

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第一章 無双しないとダメ?

第6話 冒険者登録と、アジト作り

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「いただきましょう、クニミツ。願ってもないこと。宿屋だと気を使う」

 ああーっ。接客されることすら、しんどい子か。モモコは。

「ありがたく使わせていただきます。お部屋は、こちらで修繕します」

「まあ。遠慮なさらなくても」

「いえ。いただきものなので」

 ならばと早速、ドリスさんが一筆書いてくれた。ギルドには、伯爵が話をつけておくという。

「何か必要なものがあったら、いつでも何度でもいらしてくださいね。歓迎いたしますわ」

「世話になりました。魔王の残党狩りに行くときは、呼んでいただけると」

「承知いたしました。ではクニミツさん、ごきげんよう」 

 続いて、ドリスさんはモモコに黙礼をした。

 何度も、モモコは会釈を返す。 

 こうして、オレたちは家を手に入れた。

 必要な家財道具は、部屋を見てからにするか。その前に。

「次は、冒険者登録だな」

 アンファンの街で、冒険者登録を行う。やはり冒険者として転生したなら、登録しておく必要があるだろう。仕事も必要だ。

「いらっしゃいませ」

 受付嬢まで、エルフではないか。ここは、エルフ国家か?

「ええと、ではお二人のご関係を」 

 必要事項を書いた後、オレたちはエルフの受付嬢から質問された。

「私はブラウ・ドラッヘ。ダークナイトをやってる」

「パラディンのクニミツだ。この子とは、腐れ縁でな」
 
 特別な関係ではないと、お互い主張をする。
 
「同じパーティということですね。では、ステータス表を」
 
「いや。オレはもう持ってるんだ」

 オレとモモコが、端末を差し出す。

「ヤバいのか? オーバーテクノロジーすぎるとか」

「特に問題はありません。いやあそれにしても、女神から直接支給されるとは」

 受付嬢が端末を調べながら、オレのステータスを確認をした。

「みんな紙だね。ステータス表とか、もっと大きい金属板だった」

「オレたちの端末は、拡大縮小機能があるな」

 他の冒険者たちのステータス表を覗き見する。四回折りの金属板に、スキルツリーが書かれていた。それにスキルポイントを打ち込んで、スキルを手に入れる仕組みのようである。

 オレたちと同じ、ツリー形式だ。欲しいスキルに到達するまでは、レベルとポイントを要求される。

「お二人の職業欄も驚きました。低いレベルで上級職でいらしたので」

「そうなんだよな」

「以前に転職なされたので? あっ、でも、レベルが低いとそもそも転職が難しいですし」

「色々あってな。レベル一から上級職に就かせてもらっている」

「わかりました。実績もそれなりですので、問題はありませんね」

 オレたちの功績を、受付嬢が確認した。

 スキルツリーの内容は、他の冒険者と変わらない。だがオレたちは初期レベルの段階で、上級職を選べるようだ。

 他の冒険者たちは、初級職をある程度経てからでないとオレたちのような職業は選べないらしい。

 いろんな過程をすっ飛ばしているんだよな。

「ステータスやスキル等のご説明も不要ですね? 端末が教えてくれるようですし」
 
 スキルについての説明書がついているのも、この端末のすごいところだ。

「依頼書はあちらの掲示板に貼ってありますので、気になるものは端末にメモしておいてください」

「OKだ」

 例の魔王の残党を討伐する依頼も、依頼書に含まれていた。誰も手に取ろうとしていないが。

 気になる依頼だけチェックだけしておいて、新居へ向かう。
 
 街外れの林って言っていた。とすると、ここか。
 
「おお、これは本当にボロいな」

 見せてもらった小屋は、雑草どころか木まで生えていた。井戸は枯れ、小屋からは広葉樹が天井を突き破っている。

「リノベーション、お願いしたほうがよかったか?」

 オレがうなだれていると、モモコは腕をまくった。

「これくらいがいい。クラフトの出番」

「そうだったな」

 オレは、クラフトの主なやり方を学ぶ。

「クラフト」

 木の中に生えている大木に、オレは手を当てた。

 のこぎりなどを必要とせずに、木は丸太へと変化する。

 モモコは、風魔法で草むしりをしていた。

 みるみるうちに、作業場が広くなっていく。

「で、作業台を置くか」

「うん。クラフト」

 ある程度の広さを確保した後、モモコは【作業台】を開発した。材料は少量の木材と、岩である。

「鉄ってない? 作業台に必要なんだって」

「あるぞ」

 オレは、ドロップ品の剣やヨロイをモモコに提供した。

「これで……いけた」

 作業台が完成する。

 見た目はミシンの台といえばいいか、長細いスタンディングデスクを思わせた。

「これで、銃の製造に一歩近づいたな」

「だね」

 オレの作業台も完成した。モモコのデスクより、もっと業務用っぽい。

「クニミツの作業台、飾りっ気がない」

「お前のがゴチャゴチャなんだよ」

 作業台の隣に、木材を集めていく。

「オレは小屋の草と、周辺の石をどけていく。モモコはそれを材料に、必要なものを作ってほしい」

「わかった」

 モモコが次々と、木材を加工していった。

 オレは井戸を埋め尽くしていた土をクラフトで撤去し、水を確保する。

「よし」と、オレは手を高く上げた。

「いえーい」

 モモコと、ハイタッチをする。

「さっそく」

「まだだ。ある程度循環させないと。今日一日は飲めないだろう」

 井戸水は当分、作業用水にすることになるだろう。

「任せて。クラフト」

 作業台で、モモコが何かを作り始める。

「できた」

 雑草で、花を作っていた。

「水をキレイにするポーションでも、作るのか?」

 花は薬草や、ポーションの素材になるとあるが。

「これを、井戸の周辺に植えて。花の蜜につられて精霊が来て、お水をキレイにしてくれるって」

 オレは、モモコの言うとおりにする。

 光る小さいな物体が、井戸の側に寄ってきた。ハチかホタルかと思ったが、違う。

「お、あの青く光ってるのがそれか?」

「精霊かも。見て」

 水が、みるみるキレイになっていく。

 井戸用の屋根と桶、ロープができた。まだ汲み上げ器は作れない。当分はこれでいく。

「ガラスコップ作った」

「ナイス。では」

 きれいになった水をひとくち……うん。

「うまい」

「いえーい」

 また、モモコとハイタッチをした。

「こうやって、精霊に手伝ってもらえるのか」

「そうみたい。クラフトのレベルが上ったら、もっと精霊を呼べるって」

 ゆくゆくは精霊に、農作業や家の管理を任せられるようになるらしい。

「精霊に任せたら、クラフトのレベルが上昇しないなんてことは」

 自分で作業しないわけだから。

「ないんだって。自分の魔力を差し出しているから、ちゃんと生産レベルには反映されるって」

 よって、モモコは大量の花をクラフトし続ける。精霊に手伝ってもらうため。

「精霊に動いてもらっている間に、オレたちはクラフトとクエストをこなせばいいのか」

「そういうことみたい」

 おそらく、前の住人もそうやって精霊を集めていたのだろう。が、反動でこんなにひどくなったに違いない。

 オレも風魔法で小屋の中を掃除し、屋根や壁、窓を修繕する。一階建てだったので、やることは楽だ。

「後は家具類を運び込むだけ……うおっ!?」

 オレの側で、何かが弾けた。精霊か?

「なんだ、今のは?」

「虫よけの魔法」

 雷魔法の応用で、ハエトリライトで自分の周辺を包んでいるという。

 では、農作業でもするか。

 ムギ、コメ、野菜を蒔いていく。クラフトで魔力を土に込めて、あとは待つだけ。

 農作物だが、種はいつ蒔いてもいいらしい。

 普通農作業は、季節などに左右されるものだ。が、クラフトなら問題ないとある。

 ただし自分たちが食べる分しか育たず、売り物にはならない。売る分は、普通に育てる必要がある。

 また、種類は増やせるが、クラフトで作る分は育つ領域が狭い。魔力で強制的に育てるからだろう。

 一日あれば育つらしいが、今はメシがない。

「今日は、宿で泊まるか」

「うん。せっかく家ができたけど」

 棚は自作して、食器類は買うことにした。今後作っていくための参考に。ベッドに敷く布団も購入するも、やはり平べったい。こちらもクラフト予定になった。

 あとは、装備品を見る。要らないものを売って、素材になりそうなものを買う。

 アイテムボックスに買ったものを詰め込んだ。

 宿を取って、食事にする。

「前から思ってたけど、お酒飲まないんだね、クニミツって」

「匂いが苦手なんだ。飲むと全身が痒くなる」

 アルコールを早く外へ出そうとしてしまうらしい。

「モモコ。お前、よくオレと旅をしようって考えたな?」

「なんでもいいから、逃げたかったんだよね」

 モモコが、ジュースをぐっと煽る。

「家のイメージもあるし、クリーンさが求められたんだよ。アンタもわかるでしょ? 龍洞院がどんな印象を世間から持たれているかくらいは」

「まあ、な」
 
 龍洞院といえば、広域暴力団だ。
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