病弱令嬢、魔王に憑依されてムキムキになる ~思いの分だけ、筋肉が膨れ上がる~

椎名 富比路

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第一章 病弱令嬢、筋肉に愛される

第3話 病魔をぶっとばす

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 ボクは、フェターレ。王都ダメリーニの第一王子である。

 愛するフォルテ・マッスリアーニに、変わらぬ求愛をしにきた者だ。

 実は近い将来、ゼム将軍の娘との結婚が決まっている。
 が、ボクはフォルテが好きだ!

 なのに麗しの婚約者の命は、もはや風前の灯と言うではないか。

 今日は、万病に効くという秘薬を手に入れた。幾多の野山を駆け回り、世界中からの治療法を学び、この秘薬にまでたどり着いたのだ。これが効かずして、なにが効果があろうか!

 この薬を飲めば、彼女はたちまちよくなるだろう。

 さあフォルテ、ボクが取ってきたこの薬を――おうっふ!

 なにか大きな物体が、フォルテの部屋から飛んできた。

「ああ! 薬が!」

 なんと、ボクが取ってきた薬が、木に当たって割れてしまったではないか。

 これでは、愛するフォルテを助けられない。ボクはなんて、ダメな人間なんだ!

 しかし、ボクを突き飛ばしたあの少女は何者だろう。フォルテの部屋から降ってきたような気が。愛するフォルテは無事か……なんだこの、ムキムキ女性は? 

 あっ!

「キミは、フォ、フォル、テ。無事だった、の、か」

 ボクは気を失った。

 そのムキムキ女性が、フォルテだと気づいたときに。



=== === ===
 
 
 わたしは病魔ごと、屋敷から着地した。ヒザ蹴りのまま、病魔を地面に叩きつける。

 屋敷の三階から落ちたというのに、傷どころか痛みもなかった。

「これが、新しいわたし」

 ムキムキとなった自分に、思考がおいつかない。細マッチョな自分が、まだなじんでいないのか。

『ほほう。フォルテよ。こやつ、使い魔であるぞ』

 庭に転がっているモンスターを見て、魔王レメゲトンが助言をしてくる。

「使い魔とは?」

『誰かに指示されて、動いておる。何者かお主を殺すために、放ったのじゃ』

 ならば、聞き出さねば。

「誰に命令されていたのか、言いなさい」

 地面でのたうち回る病魔に、問いただす。

「げゲハは。ダれガ言ウか」

 だが、魔物は暴れるだけで口を聞こうとしない。

「早く」

 足を一本、踏み潰してやった。

 どのみち、このモンスターは生かして帰さない。

「パギャアアア!」

 また、魔物は絶叫して暴れだす。それでも、頑なに口を割ろうとはしなかった。思考する頭がないのか、命令されて動いているだけか。
 あるいは、飼い主がよほどのクズなのだろう。

 わたしは、そのクズに心当たりがあった。

「大方、ゼム将軍あたりでしょうね」

 隣国に仕える、有力者である。

 野心家のゼム将軍は、この肥沃な土地一帯を狙っていた。そのため、嫌がらせをしてくることも多い。将軍が仕えている王都はまだマシなのだが。

 父上は気丈な方だったが、わたしの世話に気を取られ、なかなかゼム将軍の対処ができないでいた。

 もしかすると、わたしを弱らせたのはゼム将軍かもしれない。 

『使い魔の痛みは、術者にダイレクトに伝わる』

「それはすばらしいですね。もっと、なぶりましょう」

 わたしは、魔物の折れた方の足を掴む。そのまま、魔物の背中を岩に叩きつけた。

「待て! 話す! 話すから許して!」

 魔物がようやく、口を開く。話す気になったようだ。

 だが、もう遅い。

「もう、しゃべれなくしてあげますね」

 わたしが受けた、一七年分の痛みを、わからせる。

 何度も岩に、魔物を叩きつけた。顔の原型を留めないほどに。絶命しそうになったら、魔力を注ぎ込んで傷を直した。回復次第、また潰す。

 自分の力を試すには、ちょうどいいかもしれない。

「やめテくれ! やメてえェ!」

「イヤです。あなたは一七回殺します。わたしに嫌がらせをしていた一七年分の怒り、思い知りなさい」

 わたしは、使い魔を岩ですりつぶした。

「まマま待っテぐへェ!」

 とうとう、一度絶命して終了しまったようだ。

 もろすぎだ。一七回殺そうと想ったのに。
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