病弱令嬢、魔王に憑依されてムキムキになる ~思いの分だけ、筋肉が膨れ上がる~

椎名 富比路

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第四章 肩に小さいドラゴンを乗せる

第41話 ドラゴンの怒り 筋肉の怒り

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 黒い肌を持つ男の頭から伸びているのは、ムカデの触覚らしい。角だと思っていたが。上半身は裸だ。肉体美に自信があるのだろう。見た目はクソガキだが。

「てめえか、うちの天狗を殺ったのは?」

 邪竜ヴリートが、こちらを煽ってくる。

「あのカラス共ですか。はい。そうですね」

「調子こいてんじゃねーよ。里を孤立させる計画がパーじゃねえか」

 大げさに肩をすくめながら、ヴリートはこちらを挑発してきた。

「かなり苦戦なさったようで」

 ミグの救援に向かいたいが、どこに罠があるかわからない。強いと思っていたが、ミグはなにか油断したのか? 

「オオムカデを村に放ったと話したら、村が気になって戦闘どころじゃなくなってやんの」

 ケケケと、邪竜はミグをあざ笑う。 

「やっぱ切り札は、こっそり忍ばせておくもんだよなあ!」

 横たわるミグを、ヴリートは蹴り上げる。

「ああ、あの程度で切り札だったのですね?」

「な……」

「さっき、踏み潰してきました」

「て、てめえ。だが、オレの操るドラゴン共に勝てるかな?」

 二匹のドラゴンが、わたしを取り囲んだ。どちらも、さっきのムカデよりは大きい。

「ハク! トッド! もうよせ!」

 どうやら、ミグの知り合いらしい。

「ケンカ売られたから、二体ほど、わからせてきたぜ!」

「ごたくはいいから、かかってらっしゃい」

「どこまでも強気な女だ! ドラゴンに食われて、おっ死んじまえ!」

 ヴリートが、ドラゴンに号令をかける。

 ドラゴンが、襲いかかってきた。

『フォトン、こやつらは、操られているだけぞ』

「はい。彼らの内側から、怒りの声を感じます」

 彼らドラゴンは、ヴリートにムリヤリ操られている。

 ドラゴンの長い首が、わたしに巻き付こうとした。

 跳躍でかわし、上空から攻撃を仕掛ける。

「ムカデを取るには?」

『電撃じゃろう。【ショックボルト】程度でいいぞよ』

 わたしはロッドから、微量の雷撃を放つ。

 しかしドラゴンは、電撃を首を曲げただけで回避した。

「案外、器用です」

『ドラゴンは知恵も回るからのう』

 腐ってもドラゴンか。

 相手も、ブレスを放ってきた。

 ゼロまで近づけたが、わたしは後退して距離を離す。

 ロッドの雷撃も、届かない。

「これでは、近づけませんね」

『方法を考えるんじゃ』

 ドラゴンのブレスを避けながら、対策を練る。

 まだ、ドラゴンは洗脳されきっていない気がした。

 人間なら、ヴリ―トのムカデに噛まれればゾンビ化する。ドラゴンがまだ脳を汚染されていないのは、ドラゴンの肉体故だろう。

 一体のブレスが、対面のドラゴンに当たりかけた。同士討ちか。頑丈なドラゴンなら、それもアリだろう。

 しかし、ダメだ。それでは、相手を殺してしまう。

『何を狙っておるのじゃ?』

 ギリギリまで引き付けて、ロッドの先で受け流す。服が一部焼け焦げてしまった。それでも、接敵はやめない。

『ロッドで、パリィをこなすとは! 腕がもげてしまうぞよ!』

「しかし、ここまで接敵せねば、ムカデを取れません」

 急流下りのように、ロッドでブレスをすくって加速する。狙うのは、対角線上にいるドラゴンのノドだ。

「ショックボルト!」

 ドラゴンのノド元にいたムカデに、電流を放つ。
 電撃を受けたムカデが、弾けとんだ。
 正気に戻ったドラゴンが、眠りにつく。

「まずは一体! がふっ!」

 降下している状態を、完全に狙われた。尻尾で殴り飛ばされる。

 やはりドラゴンの一撃は強烈だ。わたしは猛烈な勢いで、地面に叩きつけられる。

『フォトン、ダメージは?』

「ありません。ですが、さっきの作戦はもうできませんね」

 さて、どうするか。

 ミグは負傷して動けない。さっき助けたドラゴンの協力も、得られそうになかった。

 考えあぐねていたら、赤い竜が白い龍を取り押さえたではないか。

「ハク! じっとしてな! 姉ちゃんに任せろ!」

 真紅のドラゴンが、白いドラゴンに噛み付いていたムカデを、強引にむしり取る。

「これでよしっと」

 ムカデを潰し、赤い竜がだんだんと縮んでいく。メイド服を着た女性へと。

「大丈夫かい、お嬢!」

「あなたは……アキコ!」

 赤い竜の正体は、わたしのメイドだった。
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