病弱令嬢、魔王に憑依されてムキムキになる ~思いの分だけ、筋肉が膨れ上がる~

椎名 富比路

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第五章 アンデッド VS 筋肉

第54話 ガイコツ 対 筋肉

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『フォトン、くるぞ!』

「問題ありません」

 わたしは左手の手甲を天にかざし、アンデッドを消滅させた。手甲は、ロプロイで女王からもらったものである。

「光と闇による、二重の【ターン・アンデッド】です」

 ダークプリースト特有のスキルで、強制的にアンデッドの魂を天へ送り返す。闇の力で鬼火を消し、光で穢れた魂を洗い流すのだ。ターン・アンデッドを施せば、二度と復活はできない。

「ヒョヒョ。まだまだおかわりはありますぞ」

 ゼム将軍が、さらに鬼火を展開した。
 アンデッドの群れが、すべてわたしに殺到してくる。
 さすがネクロマンサー。自分からは攻めてこないか。
 一体一体の力は、それほどでもない。とはいえ、これだけの数を相手を、さばききれるか?

「よけろ、フォトン! 【ファイアーバード】!」

 ゾンビたちの背後から、火の鳥が迫ってきた。アンデッドをすべて、燃え盛る翼で焼き尽くす。

 並の火炎魔法では倒せなかったゾンビやスケルトン兵が、消滅した。

「無事か、フォトン!」

 火の鳥を放ったのは、カチュアである。聖なるヤリにアキコの炎を乗せて、火の鳥を作り出したのだ。

「フォトンお嬢!」

 両手に包丁を携えて、アキコも参戦してきた。

「二人は周りの敵をお願いします。わたしは将軍を」

「一人で平気かい、フォトンお嬢?」

「大丈夫です」

 わたしは、ゼム将軍と一対一になる。

「愚かな。魔王の力を得たといえ、私と相対するなど」

 鬼火を持つ手を後ろへ下げて、ゼム将軍はサーベルを構えた。フェンシングのポーズである。

「私は『女性を斬る剣は持たぬ』などとぬかす、フェミニストではございません。等しく死を差し上げましょうぞ。フォルテ姫」

「もとより覚悟の上。ゼム将軍、あなたもお覚悟を」

 質量を持ったファイアーボールを、ロッドの先端に込めた。ゼム将軍へと、振り下ろす。

「あなたに、私が倒せますかな?」

 片手のサーベルで、軽々とロッドを受け止めた。
 火球が爆発し、将軍の視界を奪う。

「ふうう、だがこの程度」

「アイス・リーパー」

 わたしは火球を氷のカマに変換し、ゼム将軍の左腕を切った。
 将軍の左腕が、ボトリと落ちる。

「ぐう! 死神の力を得た私に、死神のカマを見舞いますか。しかし、腕を切り落としたくらいで」

 ゼム将軍が、腕を拾い上げようとした。

「腕を切り落とすのが目的ですので」

 わたしは、切れたゼム将軍の腕を蹴り飛ばす。

「今です!」
「ファイアバード!」

 再度、聖なるヤリが炎をまとう。しかし、今度はゾンビたちを狙わない。ゼム将軍の腕に集中攻撃を仕掛けた。

 ゼム将軍の腕が、聖なる炎に包まれる。
 鬼火が、フッと消えた。

「く、鬼火が」

 同時に、将軍が操っていたゾンビやスケルトンが、砂と化す。

「おお、モンスターが消滅したぞ!」

 戦場を覆い尽くすほどにいたアンデッドたちが、一瞬でいなくなった。不利だったロプロイの軍勢が、一気に優勢になる。

「これでもう、アンデッドを喚び出すことはできません」

「ほお。味なマネをなさる」

 ゼム将軍は、手に持っていた鬼火をかばうように戦っていた。おそらく鬼火さえなんとかすればいいと、わたしは考えたのだ。

「しかし、私に勝てねば無意味というもの。私一人でも、ロプロイは落とせますぞよ」

 配下を失ったというのに、将軍はまだ余裕の表情である。

「その傲慢さを、後悔させてくれる! くらえファイアーバード!」

 カチュアが、将軍に向けて火の鳥を放った。

「地獄の業火に比べれば、こんなもの!」

 ゼム将軍は、サーベルを振り回しただけで火の鳥を蹴散らす。

「なんと。私の最大の技を」

「この程度が最終奥義ですか。ロプロイの姫騎士も、大したものではありませんな。死ねい!」

 サーベルで、ゼム将軍はカチュアの心臓を突こうとした。

 ロッドを振り、ゼム将軍のサーベルを弾き返す。

「あなたの相手は、わたしです」
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