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第五章 新たな仲間、姫騎士
第60話 アプレンテス所有権問題
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「実は今頃になって、貴族共が土地の所有権を主張し始めてな。これまで、アプレンテスに何もしてこなかったくせに」
ヴェリシモさんが、憤る。
「なんかボク、やらかしてしまったんでしょうか?」
「そうではない。コーキ殿の活躍は、見事なものだ。王家にできなかったことを、一個人が成し遂げなさるとは」
ボクが緑化させたこと自体は、悪くないそうだけど。
「荒れ地から緑が溢れる土地になって、アプレンテスの天候も安定した。コーキ殿の功績には、感謝している」
ヴェリシモさんがによると、荒れ地となったアプレンテスを、どうにか人が通過できる場所にしたいという。
「王都は、南や東側との交流が乏しくてな。どうしてもあの荒野を通過できるようにしたかたのだ」
西側の国と交易しているが、どちらも寒い国だ。そのため発展が、手詰まりの状態なんだとか。
「海路を使えばいいのでは? ダリエンツォは海に面しているから、問題ないはずだ」
パロンが、ヴェリシモさんに質問をした。
「貴族たちが占領していてな。私としては、市井の人々に使ってもらいたいのだ」
まして寒い国なので、氷が張った地帯を進むことになる。海路は余計に辛いそうだ。
別に貴族たちも、特別に意地悪しているわけではない。単純に、運行費が高くなってしまうのだ。何度も氷の張った海を往復して、航路を確保しようとしたらしい。だが、また新しい氷ができてしまうとか。
「イジワルな質問だけどさ、攻め込みたいってわけじゃないんだよね?」
ホントに意地の悪い問いを、パロは投げかける。
「ありえない。戦争なんてする意味がないからな」
「資源が乏しいわけじゃ、ないんだね?」
「まあな。そこへ、クレキシュ渓谷郡が攻略されたと、報が入ってな」
調査の結果、本当に嵐が吹き荒れる土地になっていたと、王都が知ったわけ。
「今では嵐も落ち着いて、人が通過可能な土地になっている」
ならば、よかった。今まで季節とは無縁の荒れ地だったからね。ぶり返しがものすごかったんだろう。
「我々としては、なんとしてもこの功績を成し遂げた人物に会いたくなったのだ。手土産を持参して行かねば、と思ったのだ」
「王女様、自ら?」
「もちろんだ。交流の証として」
「彼だよ。このコーキこそ、クレキシュに雨を蘇らせたんだ」
パロンが、ボクを引き寄せた。
信じられないという顔を、王女がボクに向ける。
「ウソだと思うなら、冒険者カードを見せてもらいなよ」
ボクは言われたとおり、カードを姫様に見せた。
「本当だったのか!」
カードをボクに返却し、なんとヴェリシモさんはボクにひざまずく。
「あのひび割れた大地に水を呼び戻してくれて、このヴェリシモ、王族に代わって感謝する」
「頭をあげてください。どうしてまた?」
「あそこに、干からびた河川があっただろ? 王都にも続いているのだ。もう何年も、あの場から水が入ってこず、栽培できなかったものが多数あったのだ」
「たとえば?」
「ワサビなる調味料や、カレーの原料などだ」
「カレー!」
王都の水でもいいが、クレキシュのキレイな水で作るのとは段違いだったらしい。なにより、どれも治癒効果があるとか。ボクが知っている香辛料とは、イメージが違うね。さすが異世界。
それより、王都ってカレー用の香辛料を栽培しているのか。だったらなおさら、水を引いて正解じゃん。
「ウソではありませんね。地下水は一応、生きていましたから」
地下からの湧き水は、王都に流れていたと。
その水が心もとなくなり、調査隊を出すか考えていたという。
「しかし、問題は解決した。今やクレキシュは、我々にうるおいをもたらしてくれる。自然に感謝だ。コーキ、貴殿にも」
「もったいないお言葉です」
「ぜひ、王都に来てくれ。王にも礼をいわせる」
「結構です結構です!」
ボクは手をバタバタさせた。
「感謝はさせてくれ。でなければメンツが立たぬのだ。恩人を手ぶらで帰したとあっては、こちらとしても」
「……ほしいものといったら、カレーくらいですかねえ」
ボクとしては、世界樹から十分な潤いをもらっている。
欲を求めても、せいぜいカレーを久しぶりに食べたい程度だ。
「カレー程度でいいのか?」
「なにをおっしゃいますか? 国民食であるカレー、ぜひ味わいたいですね」
こっちでカレーが、国民食かどうか知らないけど。貴族や王族だけが楽しめる食べ物かもしれない。
「カレーなんぞ、そこらの酒場でいくらでも食べられる。もっとも、高級な素材を使ったカレーもあるが。そちらをご所望なら、用意しよう」
「庶民の味で、満足です」
高いカレーって、それはそれでおいしいんだろう。
けど、ボクがほしいのはそっちじゃない。
「カレーだけでは、足りぬ。我々としては、もっと誠意を示したいのだが」
「では、ドワーフを何人かよこしてください。それで手を打ちましょう」
「ドワーフでいいのか?」
「はい」
こちらとしては、王都とのパイプがあるだけで十分メリットがある。そのコネクションを使い、領地を住みやすくしたい。鉄の生産も行って、災害に強い頑丈な家も建築可能になるだろう。
「ぜひドワーフをボクたちの住むネイス・クロトン村に」
「クロトン村だと!? あの村をも再生させたのか?」
「はい。時間はかかりましたが」
「はうう」
王女が気絶した。
側仕えのスプルスさんが、倒れた王女を介抱する。
(第五章 おしまい)
ヴェリシモさんが、憤る。
「なんかボク、やらかしてしまったんでしょうか?」
「そうではない。コーキ殿の活躍は、見事なものだ。王家にできなかったことを、一個人が成し遂げなさるとは」
ボクが緑化させたこと自体は、悪くないそうだけど。
「荒れ地から緑が溢れる土地になって、アプレンテスの天候も安定した。コーキ殿の功績には、感謝している」
ヴェリシモさんがによると、荒れ地となったアプレンテスを、どうにか人が通過できる場所にしたいという。
「王都は、南や東側との交流が乏しくてな。どうしてもあの荒野を通過できるようにしたかたのだ」
西側の国と交易しているが、どちらも寒い国だ。そのため発展が、手詰まりの状態なんだとか。
「海路を使えばいいのでは? ダリエンツォは海に面しているから、問題ないはずだ」
パロンが、ヴェリシモさんに質問をした。
「貴族たちが占領していてな。私としては、市井の人々に使ってもらいたいのだ」
まして寒い国なので、氷が張った地帯を進むことになる。海路は余計に辛いそうだ。
別に貴族たちも、特別に意地悪しているわけではない。単純に、運行費が高くなってしまうのだ。何度も氷の張った海を往復して、航路を確保しようとしたらしい。だが、また新しい氷ができてしまうとか。
「イジワルな質問だけどさ、攻め込みたいってわけじゃないんだよね?」
ホントに意地の悪い問いを、パロは投げかける。
「ありえない。戦争なんてする意味がないからな」
「資源が乏しいわけじゃ、ないんだね?」
「まあな。そこへ、クレキシュ渓谷郡が攻略されたと、報が入ってな」
調査の結果、本当に嵐が吹き荒れる土地になっていたと、王都が知ったわけ。
「今では嵐も落ち着いて、人が通過可能な土地になっている」
ならば、よかった。今まで季節とは無縁の荒れ地だったからね。ぶり返しがものすごかったんだろう。
「我々としては、なんとしてもこの功績を成し遂げた人物に会いたくなったのだ。手土産を持参して行かねば、と思ったのだ」
「王女様、自ら?」
「もちろんだ。交流の証として」
「彼だよ。このコーキこそ、クレキシュに雨を蘇らせたんだ」
パロンが、ボクを引き寄せた。
信じられないという顔を、王女がボクに向ける。
「ウソだと思うなら、冒険者カードを見せてもらいなよ」
ボクは言われたとおり、カードを姫様に見せた。
「本当だったのか!」
カードをボクに返却し、なんとヴェリシモさんはボクにひざまずく。
「あのひび割れた大地に水を呼び戻してくれて、このヴェリシモ、王族に代わって感謝する」
「頭をあげてください。どうしてまた?」
「あそこに、干からびた河川があっただろ? 王都にも続いているのだ。もう何年も、あの場から水が入ってこず、栽培できなかったものが多数あったのだ」
「たとえば?」
「ワサビなる調味料や、カレーの原料などだ」
「カレー!」
王都の水でもいいが、クレキシュのキレイな水で作るのとは段違いだったらしい。なにより、どれも治癒効果があるとか。ボクが知っている香辛料とは、イメージが違うね。さすが異世界。
それより、王都ってカレー用の香辛料を栽培しているのか。だったらなおさら、水を引いて正解じゃん。
「ウソではありませんね。地下水は一応、生きていましたから」
地下からの湧き水は、王都に流れていたと。
その水が心もとなくなり、調査隊を出すか考えていたという。
「しかし、問題は解決した。今やクレキシュは、我々にうるおいをもたらしてくれる。自然に感謝だ。コーキ、貴殿にも」
「もったいないお言葉です」
「ぜひ、王都に来てくれ。王にも礼をいわせる」
「結構です結構です!」
ボクは手をバタバタさせた。
「感謝はさせてくれ。でなければメンツが立たぬのだ。恩人を手ぶらで帰したとあっては、こちらとしても」
「……ほしいものといったら、カレーくらいですかねえ」
ボクとしては、世界樹から十分な潤いをもらっている。
欲を求めても、せいぜいカレーを久しぶりに食べたい程度だ。
「カレー程度でいいのか?」
「なにをおっしゃいますか? 国民食であるカレー、ぜひ味わいたいですね」
こっちでカレーが、国民食かどうか知らないけど。貴族や王族だけが楽しめる食べ物かもしれない。
「カレーなんぞ、そこらの酒場でいくらでも食べられる。もっとも、高級な素材を使ったカレーもあるが。そちらをご所望なら、用意しよう」
「庶民の味で、満足です」
高いカレーって、それはそれでおいしいんだろう。
けど、ボクがほしいのはそっちじゃない。
「カレーだけでは、足りぬ。我々としては、もっと誠意を示したいのだが」
「では、ドワーフを何人かよこしてください。それで手を打ちましょう」
「ドワーフでいいのか?」
「はい」
こちらとしては、王都とのパイプがあるだけで十分メリットがある。そのコネクションを使い、領地を住みやすくしたい。鉄の生産も行って、災害に強い頑丈な家も建築可能になるだろう。
「ぜひドワーフをボクたちの住むネイス・クロトン村に」
「クロトン村だと!? あの村をも再生させたのか?」
「はい。時間はかかりましたが」
「はうう」
王女が気絶した。
側仕えのスプルスさんが、倒れた王女を介抱する。
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