ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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第六章 王都のカレーとドワーフ

第61話 ダリエンツォの城へ

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 結局、ダリエンツォの王都へ向かうことになった。

 改めて「ネイス・クロトン村にドワーフがほしい」と、お願いをするために。

 厳密に言うと、失神したお姫様を送るためなんだけど。

 ボクたちを乗せた馬車の後ろで、ヴェリシモ姫様はノビている。

「コーキの住んでるネイス・クロトンにも、岩盤があるのか。そいつぁ。ウチの鉱山と繋がっているな」

 スプルスさんによると、地盤の硬い山脈一帯は王都とネイス・クロトン村を繋ぐ形で続いているらしい。だが、村のあるアプレンテスは荒野ばかりで環境が悪い。王都からしか、掘り進められないそうだ。

「さすがのトレントも、あのエリアは避けていったよね」

 パロンのいうとおり、世界樹から派生したトレントたちでも、山脈地帯の方へは足を運んでいなかった。岩場の下で根を張るのが、精一杯だったみたい。森林限界ってのも、あるだろうけど。

「鉱山は、ヴェリシモ王女様が管理していてな。オレっちたちの主な仕事は、警備隊さ。あるとき、ずっと干上ていた岩石の湖が、満たされていた。何事か、って報告に行ったんだよ。そしたら、クレキシュ峡谷に雨が来た、ってんだから驚きだぜ」

 おそらく、峡谷からウチの湖に流れた水だね。

「ネイス・クロトンにお邪魔しようってときに、魔物が近隣の村に悪さをしていてな。村を助けてくれて、ありがてえ。オレっちたちだけじゃ、対処しきれなかった」

 ボクとしても、海の幸を分けてもらえることになったから、大変ありがたい。
 
「スプルスたちが音を上げるくらいの、事案だったのかい?」

「そうでさあ、パロン殿。一体一体はたかがしれているが、数が多すぎる。そのうち、本格的な討伐隊が組織されるでしょうなあ」

「その必要はないよ。大型の魔物は討伐したから、もうあそこに、強い魔物は湧かないだろうさ」

 あの地域には、世界樹が放ったトレントが根を張っている。あとは、トレントが魔物を寄せ付けないだろう。来るとしたら、トレントが実らせる果実を求める動物くらいだ。

「お前さんたちには、ほんとに頭が上がらねえや。コーキ、ありがとうよ」
 
「いえいえ。カレーのためなら、なんなりと」

「着いたぜ」
 
 でもやはり、王様にあいさつは必要みたい……。

「相変わらず、すごいね。コーキ、ここが王都だよ」

 馬車から足を出して、パロンが景色を見上げる。

 コラシェルも相当な都会だったけど、王都ダリエンツォはそれより遥かに巨大な都市だった。いわゆる、「スチームパンク」の世界観に来たみたいである。あちこちで、蒸気が発生していた。電灯も、ガスを使っているみたい。

 ティンバーさんが飛行船を作っているみたいだったし、ある程度の航空技術も発達しているんだろうね。 

「はっ」

 王都の気配を察知したのか、姫様が目を覚ました。

「こうしてはおれん。すまんがコーキよ、ここで一旦戻る。王城で会おう」

 ヴェリシモ姫はすっかり元気になり、王城へと走っていく。

 ボク、パロン、クコは、応接室に通された。

「オレっちから、王様には話を通しておくからよ」
 
 スプルスさんのツテで、王様と会うことになった。

 やっぱり、お城にはいかないといけないみたい。

「おまたせした」

「おおお」

 騎士風の戦闘服とはうってかわり、ヴェリシモ姫はドレス姿に。カールしている髪のせいか、肩の露出が際立っている。それに、意外と見事な谷間が。戦闘服では、わからなかったけど。

「本当はイヤなのだ。野山を駆け回るほうが、私は好きなのだが」
 
「似合っていますよ」

「世辞などよいのだ、コーキ」

 姫がモジモジしていると、パロンがヒジでボクをつついてきた。

「案外さ、まんざらでもないみたいだね」

「だよねー」

 ボクたちは、姫様の貴重なシーンを見られてニヤニヤしている。

「バカなことを言うな。本当は、ヨロイを着ている方が落ち着くんだ」
 

「では、まいろうか」

 ヴェリシモ姫に連れられ、王の間へ。

「本当に感謝する。娘まで助けてもらって」
 
 ダリエンツォ国王陛下は、低姿勢で迎えてくれた。

 結構な額の、報酬をいただく。さらに村を拡張できるだろう。

「しかし、話には聞いていると思う。お主たちに、不利益をもたらそうとする輩が大勢いると」

「存じ上げております。さっき聞きましたので」

「そうなのだ」

 たしかにアプレンテスの自然は、誰だってほしくなっちゃうよね。

「ボクとしても、王様に献上するつもりではいるんですが、管理してくださる方は厳選したいとは考えております」
 
「感謝する。とはいえ」

 王様も、頭を悩ませているらしい。

「心配しなくて、いいんじゃないかな?」

 ただ一人、パロンだけはノホホンとしている。

「どうして、そう楽観視できるのだ? いくら開拓の第一人者である魔女と言えど、こればかりは」

「そんなの、どうってことないよ。なんせワタシは、最強の厄介貴族を知っているからね。あいつに土地を任せたら、貴族たちはでかい顔できないよっ」

 とにかく、パロンの自信がすごい。

「ほう、まことか。その者の名は?」

「ティンバー」
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