上 下
39 / 47
第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第39話 今日は、お手伝い禁止

しおりを挟む
 強引に、オレはフィーラを連れ出す。

「どういうことでしょう、カズヤさん。デートだなんて」

「実は、シノブに頼まれてな。お前さんの相談に乗ってやってほしいと」

「わたし、悩みなんて」

「お前だけなんだよ。ダンジョンの目星がついていないのは」

 フィーラが、立ち止まる。

「わたしは、みんなのお役に立てれば。自分のことなんて」

「それだと、余計にユーニャさんを心配させてしまう!」

「……っ」

 やはりフィーラも、心得ているようだ。自分がはっきり目標を掲げないせいで、ユーニャさんが気をもんでいることを。

「だがそうはいっても、すぐには決められないだろ? 相談に、うってつけのやつがいる。会いに行こう」

 オレはフィーラを連れて、アンネローゼがいる二年生のクラスへ。

「あと、今日はお手伝い禁止な」

「はい」

「人のことは、人に任せるんだ」

 アンネローゼのクラスは、【サムライ茶屋】という催しをしていた。武士やニンジャの格好をした、給仕がいる。

「いらっしゃいませでござるですわ、ニンニン」

 ミニスカ網タイツニンジャのアンが、お茶とお菓子を持ってきてくれた。いつもはパーカーや包帯で顔を隠しているから、ニンジャ役はお手の物のようである。

「おう。ありがとうな。アン」

「いえいえニンニン。フィーラちゃん共々、楽しんでいってほしいでござるですわニンニン」

「待ってくれ。実は、相談に乗ってやって欲しいんだ」

「ニンジャはなんでもしっているでござるですわ、ニンニン」

 アンが、オレたちの席に座った。

「お前、ダンジョンというか、玄室を持っているよな?」

 オレがドナの部下として、ダンジョンの大家に着任したときのことである。アンネローゼはオレから、玄室を買った。今もそこを拠点として、自身の腕を磨いている。

「アンの観点からして、シーラにどういったダンジョンがオススメか、アドバイスしてやってもらえないか? お前の意見でいいんだ」

「まずは、フィーラちゃんがどうなさりたいのか、お聞きしたほうがいいのではないでしょうか……おっと、ニンニン」

 一瞬、アンはキャラを見失いかけていた。

「わたしですか? 自分がどうしたいのか、という質問が、一番困ります」

「それだけ、あなたが他人の顔色を伺いながら過ごしていらした、ということですわ。ニンニン」

 かなり、気に入っているな、その口グセ。

「ご自身で、よく思い起こしてみなさいな。あなたは今まで、自己決断をしたことなんて、ほぼなかったのでは? 誰かに言われるままに、動いていたかのような」

「はい。そんな気がしますね」

 さすがアンネローゼだ。よく人を観察している。ともに生徒会をしてるからか、フィーラの人となりをよく理解していた。また自立心が強いのもあって、控えめなフィーラを放っておけないのだろう。

 最初の相談相手として、適任だ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,893pt お気に入り:35,206

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,980pt お気に入り:3,500

【完結】待ってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,868pt お気に入り:44

修学旅行の温泉なのに、二人きり

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

処理中です...