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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第42話 ピーターパン症候群ってわけじゃない

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 オレは、シルヴィアとのデートを終わらせた。

「カズヤさん。あちらに、ドロリィス先輩がいますわ」

 校庭で、ドロリィスがくつろいでいる。ツィナーが取り巻きに、連れて行かれた。今がチャンスか。

「よし、行ってみよう」

 ドロリィスに、接近する。

「先輩、かなり際どい格好ですわ」

「うむ。これは透けないタイツだから、問題ないんだけどな」

 アンの指摘通り、ドロリィスはミニスカートを穿いている。スカートを穿く少年って内容の、芝居だったのか?

 しかし、この格好、どっかで……。

「ああ、思い出した。ピーターパンだっ」

「正解だ」

 だから、裾がギザギザのスカートだったのか。

「じゃあ、ツィナーはフック船長か」

 地球の娯楽をマネた演劇は、ヴィル女子校の名物なのだとか。ピーターパンのワイヤーアクションは、文化祭でも人気だという。

「うむ。この衣装だが、ミニスカートにも見えるから、ちょっとドキドキものなんだよ」

「百合タッチにアレンジしているんでしたよね?」

「そうなんだ」

 えらい、センシティブな話題になったな。

「そうか。そんなピーターパンに、聞きたいことがあるんだ」

 オレはドロリィスに、フィーラが抱えている問題を話す。

「むむぅ。フィーラのことだから、ピーターパン症候群ってわけじゃないのだろうが」

「子どものままでいたい、ってやつか」

 この症状は本来、精神的に成熟していない「男性」を表すものだ。よって、フィーラは当てはまらない。

「わたしも、別に学校を早く卒業しておとなになりたいわけではないんです。とはいえ、いつまでもこの学校にいたいとも、考えていません」

 フィーラも同様に考えているようだ。

「お前は、責任感が欠如しているわけであるまい。いざとなったら、彼女は自分で物事に対処するだろう。だが、彼女には別の要因があるみたいなんだよなあ」

「例えば?」

「寮の居心地がよすぎて、離れたくないとか」

 たしかに、あの寮は賑やかで手放し難い。

「わたしも自己分析してみたんですが、その感情が強いですね」

 せっかく、生徒たちが学年を超えて、打ち解けているんだもんな。あの環境からサれという方が、酷かも。

「とはいえ、ワタシもシルヴィアも、卒業してしまう。いずれはあそこを去るのだ。縁が切れるのか、仕方がない」

「でも、みなさんとのつながりは保ちたいですっ。せっかく、シノブちゃんというお友達だってできたんです」

 話してみてわかったが、フィーラは人に飢えているな。迫害された経験を、持っているからだろう。人に依存しがちだ。

 ムリに引き剥がせば、また悪化しそうである。

 どうすれば。

「そうだ。だったら、ウチの社員になるか?」
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