異世界ダンジョン秘湯巡り。バニーガールと共に ~宝箱には目もくれず、回復の泉だけ求める男(ヘンタイ)~

椎名 富比路

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第二章 宝箱? そんなものより まず風呂だ! 

地底湖の秘湯

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 ポーションのような聖なる属性を持つ薬品の中でも、エリクサーは最上級の逸品だ。
 ボクも、こういったアイテムがゾンビ系にダメージを与えるゲームをプレイしたことがある。
 これなら、死属性の相手にも効果があるのではないか、と考えた。

「でもね、気づいたことがある」

 ボクがさっきから嗅いでいたこの匂いと、エリクサーの香りが同じだってコトを。

「きっとこの部屋のどこかに、温泉があるはずだ!」

 温泉を飲めるタイプにしたのか、はたまた温泉にこのエリクサーを混ぜているのか。

 探す前に、この玉座型ボスをなんとかしないと!

「オケアノスさん、アイテムボックスをお借りしますよ!」
 ボクは、オケアノスさんが倒れている場所までダッシュする。

「ちょっとどこへ行くんですか、カズユキさん!」

「あいつにエリクサーをぶん投げます!」

「そんな! オケアノスの場所まで行ったら、あなたまで巻き込まれます!」

「ボクは大丈夫」

 女神の加護をもらって、ステータスがカンストしているボクなら。

「うっ!」
 墓標へと近づくたび、軽い頭痛に襲われる。
 低気圧の時、体調が悪くなる感じに似ていた。
 しかし、ガマンはできる。

「ほら、大丈夫だ! でも!」

 オケアノスさんたちを引っ張ろうとしたが、動かない。

 装備が重すぎるんだ。

 仕方なく、アイテムボックスからエリクサーだけ借りる。
 大量のエリクサーを手に、ダッシュで帰ってきた。

「ええいこの! 二人を解放しろ!」

 呪いの文字に、エリクサーを投げつける。
 命中はするのだが、下側ばかり。

「もっと上に向かって放り投げないと、効き目がないみたいだな!」

「じゃあ、私に任せてください! それ!」
 シズクちゃんも、エリクサーを取り出して蹴り上げる。

 見事、瓶が上側の文字に命中した。
 更に、ダメージを与えることに成功する。

「この調子で、トスしてください! 私が命中箇所をコントロールします!」

「お願いするよ、シズクちゃん。キミだけが頼りだ!」

「はい、お願いされましたよカズユキさん!」

 オケアノスさんの所持していたエリクサーを、ボクは片っ端からシズクちゃんの足下へ放り投げる。

「ほい!」
「てい!」

 それをシズクちゃんが、墓標型玉座の文字群へキックしてぶつけていった。

「もういっちょ!」
「えーい!」
「効いているぞ! いけいけー。やっつけろ!」

 バンバン、エリクサー攻撃を連続で蹴り込む。

 玉座に描かれた文字群が、苦しんでいるかのようにのたうち回った。
 やがて、文字らはケイレンして、消えていく。

 効き目はバッチリだったようである。
 オケアノスさんのもったいない精神が、彼を救ったのだ。

「やっつけたよ!」

 もう被害は出ないと察して、オケアノスさんに駆け寄る。

「息はある!」
「でも、目を醒ましません!」

 どこかに、回復の温泉さえあれば。

 いちかばちか、ボクは玉座の反対側へ。

「そこには財宝しかないのでは?」
「ボクのカンが正しければ、おそらく地下へ続いているはずだ」

 いかにもな場所に財宝なんて、ありきたりすぎる。
 見つけてくれと言うようなものだ。

「本命は、やっぱりこの玉座の裏側にあるみたいだね」

 思った通り、さらなる地下に続くルートが。

 これだけのトラップを仕掛けているのだ。
 きっと、もっとすごいお宝か、あるいは。

 短いらせん階段を抜けた先に、想像通りのものが。

「あった!」

 ボクたちは、水場を見つけた。水面が、黄金に輝いている。

「ここは?」
「地底湖さ」

 ここまで大規模な宝物庫だ。
 ならば、地下でずっと滞在する可能性もある。
 生活面もカバーされていたのではないか。そう思ったのである。

「金貨を沈めている?」

 それで、光輝いていたのか。

「ああ、まるで雑誌の広告みたいだ」

 あれは札束風呂だけど。

 おそらく、この遺跡のヌシは、見栄っ張りの成金賢者だったのでは?
 何らかの方法で稼ぎ、「自分はこれだけの財産がある」と周りにも言いふらしていたのかも知れない。
 この地底湖に溢れる金貨のように、自己顕示欲を膨らませて。

「賢者なのに?」
「元遊び人が賢者なんて、ボクが子どもの頃からあるお話だよ」

 で、盗賊に襲われた。
 その際に、加害者を祟ったのだろう。
 未だにその防衛システムが、働いているらしかった。

「シズクちゃん、キミはシャンパさんをお願い。ボクはオケアノスさんを!」 

 さっそく、戦闘不能になった冒険者二人を、お湯につける。
 装備の外し方がわからないので、その格好のままに。

「シズクちゃん、シャンパさんを溺れさせないように、後ろから押さえてて」

「はい。心得ています」
 バニーガール姿になったシズクちゃんが、シャンパさんの後ろに回って、細い身体を抱え込んだ。

「ボクもさっそく」
 服を脱ぎ、ボクも湯船に身体を浸ける。ボクの担当は、オケアノスさんだ。

「おおお、熱い! でもちょうどいい!」

 地熱の影響か、湯は若干熱めである。
 とはいえ、日の当たらないダンジョンで、この温もりはありがたい。

「それにこのお湯の香りは、エリクサーにそっくりだ」

 若干、香りが薄いが。

「入浴剤代わりに使っていたのかな。それとも……」

 錬金術の正体が、掴めたかも。
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