異世界ダンジョン秘湯巡り。バニーガールと共に ~宝箱には目もくれず、回復の泉だけ求める男(ヘンタイ)~

椎名 富比路

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第二章 宝箱? そんなものより まず風呂だ! 

古代人のエリクサー金貨風呂

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「うーん」
「ふわあ」

 二人が、ため息と共に目を開ける。

 よかった。気がついたか。

「ここはいったい?」
「これ、エリクサー風呂ですよ!」

 さすが賢人だ。
『ラストバトルまで使われず、大量に余ったエリクサー』
 を全部買い取って、温泉に使うなんて。

「ワイン風呂みたいなもんか? 貴族が自分の私財を自慢するために振る舞うような」

 一応、エリクサーは度数の低いアルコールだという。
 子どもが誤って飲まないようにするためだ。
 それで、独特の香りがするのか。

「ですね。ボクの国でもお酒やチョコのお風呂はあります」
「贅沢な使い方をするよな」

 それを地底湖のお湯で薄めて、民間人にでもエリクサーとして売り出していたのだろう。
「本物のエリクサー」と見せかけて。

「ほほお。まさに古代の錬金術と。エリクサーはさしずめ、金のなる木というワケか。天才なのかバカなのか……」

 きっとバカなんだ。
 結局は自身もエリクサーを使わず、殺されてしまったのだから。

「宝の持ち腐れってヤツですよ」
「だな。俺も今回、色々と学んだ。この歳で、まだ考えさせられるとはな」

 鎧を脱ぎ、オケアノスさんは本格的に温泉を堪能するようである。

「わたしも脱いじゃおっと」
 男性陣の目も憚らず、シャンパさんが濡れたローブを魔法で取った。杖を浮かせて、脱ぎ捨てたローブを吊す。

「どお? バニーちゃんには及ばないけど、あたしだって結構イケるでしょ?」
 しなを作りながら、シャンパさんがスレンダーな身体を見せつける。

 シズクちゃんがグラビアアイドルなら、シャンパさんはモデルという感じだ。

 うわぁ、シズクちゃんの視線が痛い。

 オケアノスさんは我関せずで、エリクサーをお酒代わりに飲んでいた。

「じゃ、じゃあ、レポート始めようか」

 ボクは、話題を変えることに。
 ボクも早く上がって、コーヒー牛乳で一息つきたいよ。
 こんなにも落ち着かない風呂は、初めてだな。

「用意スタート」と、合図を送った。

 シズクちゃんによる、レポートを始める。

『どうも、シズクです。これはエリクサー風呂といって、戦闘不能レベルでも瞬間的に回復しまーす。お湯加減は熱めですね。金貨が底で温められているからでしょう』

 手の平に、シズクちゃんが湯を少量すくった。

『違いはなんといっても、入浴剤代わりのエリクサーです。成金趣味ですが、このおかげで体力全快! 疲労も回復。さすがにね、死者蘇生まではいきません。が、そこはエリクサーです。死属性のモンスターに大ダメージを与えるという特典付きですよ! ここにいたら安全。みなさんも是非一風呂浴びにおいでませ!』

 これまでにない、ハイテンションなレポートである。

 レポートを終えて、安全地帯認定された。
 ここもキャンプとして活用できる。

 とはいえ、宝物庫の中でもっとも貴重なのは、エリクサーまみれの地底湖だろう。

「でも、ごめんなさい。手持ちのエリクサーがなくなってしまいました」
 ボクが謝罪すると、オケアノスさんは腹を抱えて笑い出した。

「エリクサーの代金か? いらねえよ。それくらい稼いだからな」
 オケアノスさんが、周りを見渡す。

「それによ。ここにいっぱいあるだろ。それをいただくさ」
 宝物庫には大量に、エリクサーの在庫があった。


 
 一仕事を終えて、冒険者ギルドまで戻る。

 二人はまた、別の狩り場へ行くらしい。

「助かった。また温泉を見つけたら呼んでくれ。浸かりに行く」

「たっぷり、レポートを書かせていただきます」
 ボクは、オケアノスさんと握手をかわす。

「今回の仕事で、価値観なんて人それぞれなんだってわかったわ。ありがとう」
「死んだら、元も子もないですからね」

 シャンパさんも、今回の旅で少し若返ったようになっていた。


 握手の後、二人と手を降って別れる。


「さて、明日はどんなお風呂に入ろっか?」

 ボクが宿へ戻ろうとすると、シズクちゃんは後に続こうとしなかった。ずっと、その場に突っ立っている。

「どうしたの?」

「あの、カズユキさん」
 ボクから視線を外し、ソワソワした様子で身体をさすった。

「もう、あんなムチャしないで」

 ボクが不用意に、墓標型ボスに接近したことだろう。

「そうだね。これからは気をつけるよ」
「でも、生きててよかった」
「シズクちゃんのおかげだ」

 この娘がいなければ、あんな遠くから正確にエリクサーをシュートできただろうか。

「私に言ったこと、覚えてますか?」
「え、あ、う」

 確かに、記憶している。
『キミだけが頼りだ』なんて、キザったらしいことを。

「ごめんなさい。気持ち悪かったね」

 シズクちゃんが、あまりボクにいい印象を持っていないのは知っている。

「ありがとうございます。信頼してくれて」
 感謝を告げるシズクちゃんは、耳まで赤くなっていた。

「か、顔が熱いよシズクちゃん。のぼせちゃったのかな。コーヒー牛乳でも飲む? 冷えてておいしいよ」

 ボクがごまかすと、シズクちゃんがプクーッと頬を膨らませる。

「もぉ! そういうところなんですからぁ!」
 シズクちゃんはボクから瓶を取り上げて、コーヒー牛乳を一気にあおった。

「カズユキさん、もう一本!」
「えー、もう6本目だけど? お腹壊すよ?」
「もう一本!」
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