異世界ダンジョン秘湯巡り。バニーガールと共に ~宝箱には目もくれず、回復の泉だけ求める男(ヘンタイ)~

椎名 富比路

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第五章 天空露天風呂を目指して 前編 精霊塔の打たせ湯

タワーの大瀑布

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「まあ、妥当だな。オルタがリーダーでは、命がいくつあっても足らん」
「ひと言余計じゃないッスか、パイセン?」

「うるせえ! お前は説教が足りないくらいやらかしてるんだよ!」
 オケアノスさんが、オルタを軽く小突く。

 一層ゴール付近を拠点にして、ボクたちはレベルを上げる作業を続ける。

 他の依頼をこなしたい冒険者や、早く帰りたい騎士たちからは反論も出た。が、「ならば低レベルクリアができる保証はあるのか?」とオケアノスさんが問うと、皆が黙り込む。

 渋々レベリングに励み、足を引っ張らない程度に強くなっていった。

「ねえシズクちゃん、ボクも鍛えた方がいい?」

 一応、戦えはするのだが、自分の身を守れる程度である。

「敵陣に突っ込んでいかないでください。助けられないので」

 あくまでも、ボクは戦闘要員としてカウントされていないらしい。 

 第一層のボスは、「ケルベロス」という犬型の猛獣である。しかし、シズクちゃんのレッグラリアットの一発で撃沈した。

 やはり、レベリング作戦は成功だったのである。

 そこからは、誰もレベル上げに文句を言う者はいない。

 
 続く第二層の砂漠エリアで、ボクらは音を上げそうになった。
 ボクの「コーヒー牛乳無限湧き」スキルがなければ、限界に達していただろう。

「やばかったな。オアシスがなければ干からびるところだったぜ」
 全員で湖に浸かりながら、オケアノスさんがつぶやく。

 オアシスならば、水風呂でさえ心地よい。回復ポイントとしてマークし、この付近でレベルを上げ続ける。
 奥へ進んで、ボスの大サソリを倒した。上の層へ。

 
 三層は、氷山エリアだった。
 砂漠エリアとは打って変わって、水より湯が恋しい。

「いやあ、生き返りますね」
「一時はどうなるかと、思ったけどね」

 温泉の快適さは、シャンパさんによってもたらされたモノだ。 

 回復の泉がパイプから凍っているというアクシデントがあった。が、シャンパさんの魔法で水の導線ごと温めて泉を復活させる。 

 ボスは「ビッグフット」という、ゴツい皮のブーツを履いた雪男だった。マタギ風ジャケットを着て、雪女ギャルを何人も引き連れたパリピである。雪山舞台なのに、やたら暑苦しい。

「こんなヤツ、最強になったあたしの敵じゃないッス!」

 言葉通り、オルタがザコ雪女を蹴散らし、オケアノスさんとシャンパさんでパリピボスにトドメを刺す。 

 実際は、ボクが回復スポットのお湯をボス部屋まで流し込む作戦で、ボスを弱らせたんだけど黙っておく。

 少し鍛えては、一段ずつ階層を登っていった。

 特にシズクちゃんは、ドンドンと強くなっていく。気がつけば、レベルがオルタの数値さえ超えていた。

 二人やシズクちゃん、オルタはもちろん、他の人たちにも死んで欲しくない。

 その願いは、届いたみたいだ。

「ひええっ。これじゃもう、シズクさんにケンカ売れないッスねぇ」
 ボクが見つけた回復の泉で、オルタが一息つく。

「売るつもりだったんですか?」
 シズクちゃんが、オルタに軽口を叩いた。

 こうしてボクたちは、一階を登るのに三日を使いつつ、計二ヶ月ほど費やす。

 極めて順調だと思っていたんだけど、そうもいかない。

 四階層まで上ったとき、大変な事態に見舞われた。

「階段が、ない……」

 この層にはモンスターも沸いてこない。極めて安全な場所と思われた。しかし、先に進むための階段やハシゴの類いがどこにも見当たらない。
 どうりで、あまたの冒険者たちが断念したわけだ。

「そうなんスよ。オヤジが昔この辺りを攻略しに来たときに、このような事態に見舞われて」

 対処法を探していたが、何も見つからなかったという。

 しかし、問題はそれだけではなかった。

「天空城を、通り過ぎてんじゃん」
 騎士の一人が、ぼやく。

 なんと、天空城は頭の下側にあるのだ。しかも、頭と城は離れていて、道が続いていない。こんなの、どうやって道を作れというのか。

「おい秘湯ハンター、お前さんなら何かわかるんじゃ?」
「ちょっとオケアノスさんっ。いくらダンジョンのお湯に詳しい、つっても、ダンジョンには詳しくないッスよ」

 オルタの言うとおりだ。魔法使いがどうして塔をこんな構造にしたのか、ボクにだってわからない。なにか、目的があるはずだ。

「なんの音です、これ!?」
 突然、シズクちゃんが耳に手を当てた。

 塔のてっぺんから壁伝いに、滝が流れ出ていく。まるで、塔内部の汚れを洗い流すかのように。

「うわあ、すごい水の量ですよ!」

 まるで、滝の壁だ。フロア全体を、水の流れが覆い尽くしている。

「塔の壁に近づかないで。流されてしまいます!」

 グループ全員、フロアの中央に集まってもらう。

「そうかっ、おかしいなと思っていたんだ」

 塔なのにどうして、生態系が維持されているのか。

 日光などは、ガラス張りのフロアなどもあったから。

 生態系が循環しているのは、この豊富な水のおかげだろう。

 それにしては、量が多いな。圧倒的に、キャパシティをオーバーしているように思えた。いくら雨水を取り込んでいるとはいえ。

 しかし、この瀑布はボクに一つの知恵を授けた。

「タワーと塔、それにこの水とは、関係しているのでは?」
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