オカルト刑事《デカ》 ~スラッシャーと化したヘラギャル VS 百人の退魔師~

椎名 富比路

文字の大きさ
11 / 33
第二章 ヘラるスラッシャー対百人の退魔師 ~ピが大事にしていたペットと一つになった。これであたしも、ピの一部ってことだよね~

別荘

しおりを挟む
 夜の二二時、キリちゃすは「彼氏」の仇である奴が身を隠しているという、別荘に着いた。
 仇の名は、「斗弥生ケヤキ 天鐘テンショウ」というらしい。

 厳密には、ピが飼っていたモンスターの仇であるが。

 黒い大型犬をデフォルメしたリュックの形にして、モンスターを携帯している。
 どんな物質にも擬態できるとは、便利な機能だ。
 ガキっぽいビジュアルになったが、キリちゃすのカワイさは倍増しているはずである。

 バーチャル配信者の茶々号《チャチャゴー》こと笹塚ササヅカを問い詰め、敵の名前と居所を聞き出した。「言わなければずっと切断した指で『ごめんなさい』と書かせる」、と脅して。

【魔王】とかいうこのモンスターは、ピが大事にしていたものだ。
 いわゆる形見である。ということは、ピの一部だ。
 となると、この化け物と同化したキリちゃす自身も、ピの一部になったといえよう。
 こんなすばらしいことはない。

 だが、奴らはピのペットを足蹴にした。それは、ピを傷つけたことと同じである。

 絶対、許すわけにはいかない。

「あれかな?」

 背負っている魔王に、キリちゃすは話しかける。

『そうだ』

 魔王は、ピの声を出せるようになった。

 ニセモノなのは気に食わない。
 が、まだピとの繋がりを感じられる。
 会話しているときだけは、「まだ生かして、飼っておいてやるかな」と思えた。

 別荘の外観は、山奥の白い建物である。
 その実態は、各所を魔導障壁で覆った特殊な建築物だ。
 キリちゃすのようなスラッシャーが来たら、警告音と共に電流が流れるだろう。

『さながら、異国の立派な宮殿だ』
「ホラー映画のオバケより、ギャングたちに襲われる方が似合いそう」

 かつてピと一緒に見たフィルムノワールで、主人公のギャングが支配していた屋敷によく似ている。
 裏切り者として粛清されそうになったとき、主人公は屋敷を襲ってきた刺客にショットガンを乱射するのだ。

 正直、映画はつまらなかった。
 しかし、ピと一緒にいる時間が何よりも尊かったのを思い出す。

 彼らはナイトプールで、バーベキューをしている。
 バカな奴らだ。狙撃されたら一発なのに。ホラー映画のシチュエーションとしても、最高である。

 手頃な武器を探そうと、キリちゃすは倉庫を漁る。
 もちろん、警備兵は食った。歩き通しで腹が減っていたので、ちょうどいい。
 これでメロンソーダがあったら、もっとよかったのだが。
 メロンソーダと人肉があそこまで合うなんて、ピと暮らしていなければわからなかった。

「チェーンソーがあった」

 キリちゃすが、木を切り倒すときに使う電動ノコギリを取り出す。

『スプラッタ映画のようにベタだが、効果的だ』

 思っていたより、軽い。もっと重いものだと思っていたが。
 違う、自分の腕力が強くなっただけか。
 これなら、二つ持てる。
 キリちゃすは、チェーンソー二丁を手に取った。

『両手が塞がっている。私に収納しろ』
「おっけ」

 今の魔王は、リュックになっているになっている。
 これは、収納ボックスの役割を持っていた。
 定期的に人間を食わせるという制限があるが、機能的だ。
 これだけ人数がいれば食料には困らない。

 なお、人間を食うとキリちゃすの腹も満たされる。 

 あとは、奴らを殺すだけだ。

 ピの意識が、ビリビリ伝わってくる。
 もっと生きたかったって、もっとキリちゃすを守りたかったって、もっと殺したかったって。

「あたしもだよ、ピ……」

 幽鬼のように、勝手口へ向かう。

 ペットが見せている、幻覚かもしれない。それでもよかった。
 幻覚とはいえ、ピはピだから。
 ペットなのに、魔王ってやつはこんなにもピを慕っていて、ピも頼りにしている。

――悔しい。あたしだってピに大切だって思われたいのに。

 ダメだダメダダメダ。いけない、なにを熱くなっているのか。あやうく、同士討ちをするところだった。

 殺す相手を、間違えるな。
 魔王は手を貸してくれている。
 殺すべきは、あの斗弥生なんとかっていう退魔師だ。

 警備員の中に、見知った顔を見つけた。キリちゃすは、彼を知らない。キリちゃすの中にいる『魔王』が教えてくれたのだ。

 でっぷりした背の高い男が、勝手口の警備をしている。

 背後に周り、キリちゃすはチェーンソーの切っ先を、警備員のノドに当てた。

「久しぶりだな、平阪ヒラサカ
「……魔王様」

 彼は、キリちゃすをそう呼ぶ。

 この人物は姿こそ人間だが、式神である。
 この男の正体は、魔物だ。西洋で言う「クレイゴーレム」である。
 全部、キリちゃすの中にいる魔王が教えてくれた。彼が何者なのかも。

 平阪という男も、キリちゃすの放つオーラで正体がわかったらしい。

「ごぶさたしています、魔王様。今日は、お仕事で来られたので?」

 彼には多分、キリちゃすが何をしに来たかわかっている。
 だが、雑談で話題をそらそうと必死のようだ。

「ああ、仕方なくな」

 平阪は黙り込む。

『おい式神五三番、応答しろ』

 苛立った声が、トランシーバーから聞こえてきた。

「……五三番、異常なし」

 トランシーバーで、平阪は返答する。直後、彼はスイッチを切った。

「番号で呼ばれているのか」
「哀れんでくださらなくても、結構です」

 斗弥生の一族は、捕らえた魔物・妖怪を束縛して、自分のシモベ「式神」にすることもできるのだ。

 おそらく、斗弥生ケヤキ一族によって使役されているのだろう。魂を拘束されて。

「痩せたな。昔は関取みたいだった」
「一五キロ落ちました。激務が続きまして。人間も食うなと言われました」
「ああ。だったら、休暇が必要だな。もう帰っていい」

 平阪は、ゆっくりと振り返った。

「お手伝い、いたしましょうか。私も、戦わせてください。私の尊厳を踏みにじった斗弥生に、ひと泡吹かせたい」

 キリちゃすは首を振る。

「それはあたしの役目だ。あんたは休んだほうがいい。あんたの無念は、必ずあたしが晴らす」
「これだけの数を、ムチャです。本能寺の変から、あなたは復活して間がない。いったいどれだけの間、封印されたと思っているのです? 五〇〇年以上も眠っていたのですよ?」
「約四四〇年間だ」

 それに、平阪は長年使役されすぎて、弱っている。
 魂がすり減っているのがわかった。
 これではかえって、足手まといになる。

「……斗弥生だってバカじゃない。一〇〇人以上の退魔師たちに、あなたの抹殺を依頼しました」

 平阪が、スマホを見せてくれた。
 キリちゃすに、八億の懸賞金がかけられている。

「いくら日本最強のスラッシャーといわれたあなたでも、トップレベルの退魔師一〇〇人を相手に一人で――ぐえっ!」

 キリちゃすは、平阪の首を閉めた。
 だが、力を込めたのは一瞬だけ。

「もし手を貸そうものなら、あたしはあんたを切り捨てなければならない」

 最後にキリちゃすは、平阪の首筋を優しく撫でる。

 観念したのか、平阪は耳にはめていたレシーバーを捨てた。

「ありがたき幸せ」

 平阪の姿が、フッと消える。元の世界に帰ったのだ。

 彼には、戻ってもらわないと。また力を封じられたら、今度こそ彼は死ぬ。

 勝手口から、お邪魔する。

 キリちゃすは、チェーンソーを魔王に収納した。

 息を潜め、洗面所へ向かう。警備員を、一人ずつ消していった。
 こんな奴らに、重い武器は必要ない。
 歯ブラシを頭を刺して殺していく。
 安全カミソリも、キリちゃすがモテば凶器となる。

 洗面所に、男性が入ってきた。
 斗弥生ケヤキ 天鐘テンショウの仲間だ。
 こいつも魔王を殺す現場にいたので、覚えている。

 異変に気づいたようだが、その瞬間に鏡へ男の顔面を打ち付けた。
 洗い場に水をため、顔を沈めてやる。

 もがきながら、キリちゃすへ抵抗を試みていた。

「天鐘はどこだ?」

 顔を挙げさせ、男に問いただす。

「てめえ殺してやる!」

 もう一度、水を飲ませてやった。

「どこだ?」
「上のプールエリアだっ! バーベキューの煙が上がっているからわかるはずだ!」
「そうか。お前もバーベキューにしてやろう」

 ゴキ、と、男の首をへし折る。 
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

処理中です...