オカルト刑事《デカ》 ~スラッシャーと化したヘラギャル VS 百人の退魔師~

椎名 富比路

文字の大きさ
15 / 33
第二章 ヘラるスラッシャー対百人の退魔師 ~ピが大事にしていたペットと一つになった。これであたしも、ピの一部ってことだよね~

空からの刺客

しおりを挟む
 キリちゃすは、刺客を殺して周る。

 鼻歌を歌いながら、犯行に及ぶ。同じようなシーンが、彼氏が好きだった映画のシーンにあるのだ。女性に乱暴する場面だったので、見るに絶えなかったが。

「お許しを、魔王」

 警備兵が、銃を構える。彼らの何割かは、魔王の元・味方だった。『弥生の月』の手により、無理やり従わされているのだ。

『謝罪はいい。解放してやろう。キリちゃす、手を彼らにかざすのだ』

 キリちゃすが、警備兵たちに触れる。

 光の粒となって、警備たちが消えていった。

 女や子どもまで拘束されていたのを見て、キリちゃすに怒りが湧く。

「片付いた?」
『全員帰らせた。後は敵だけだ』

 ならば容赦しない。

 ローラーブレード状のチェーンソーは、楽だ。蹴っていれば、いくらでも死屍累々の山を築き上げた。

 それでもなお、刺客たちは襲ってくる。正直、面倒くさい。

「退屈じゃない?」
『スラッシャーにとって、殺人は食事に近い。日常の一部だ』

 魔王が言うには、飽きるとかいう次元ではないという。必要だから殺していると。

「チェーンソー以外に武器はない? 蹴るのは楽ちんだけど、飽きてきちゃった」
『女型のスラッシャーと言えば、釘バットだな』
「おっけ。探す」
『見つけておいた』

 倉庫を漁った際に、勝手に入手していたらしい。釘バットがある別荘とか、所有者のお里が知れるというもの。

 肩に釘バットを担ぎ、キリちゃすは退魔師たちを殺しに向かう。

 大抵の相手が、黒いスーツに拳銃を所持している。

 敵の手首を釘バットで打ち武器を奪い、キリちゃすは頭部を殴って粉砕した。

「ほとんどが、銃使いだね?」

 銃弾をバットで弾きながら、キリちゃすは魔王に聞く。

『もっともポピュラーだからな。殺傷力も高い』

 銃刀法で没収されるリスクもあるが、ダメージ量には代えられないと。

 壁をチェーンソーのシューズで駆け抜け、キリちゃすはバットを退魔師へ見舞う。

 銃を奪って、撃ってみる。一発撃つだけで、相手はあっけなく絶命した。

 しかし、すぐに球切れとなる。ゾンビゲームのように、連発はムリらしい。

「魔王の能力に、無限弾薬機能などがあればいいのに」
『そんな都合のよい機能はないぞ。ただ、敵を見つけることはできる』

 屋上にある展望台に、狙撃手を見つけた。キリちゃすに、照準を合わせている。

 キリちゃすは、銃を相手に投げつけてみた。

 それだけで、狙撃手の首が折れて転落していく。こちらのほうが、効率いいかもしれない。

「あっけなかったね」

 展望台の天井に乗って、キリちゃすは辺りを見回した。酒は飲めないので、メロンソーダを片手に持っている。

 深夜を回った頃、ようやく別荘はおとなしくなった。

 窓や壁には、人間の肉片が飛び散っている。

 しかし、これだけやっても標的である天鐘テンショウは見当たらなかった。今ごろ逃げおおせて、遠くへ行ってしまっているだろう。

『うむ。他愛もなかったな』
「何人くらい死んだ?」
『八七人ほどだ。うち、雇われた退魔師は六一人ほど』

 結構な数を殺したと思う。

「じゃあさ……アレも敵?」

 キリちゃすは、窓の向こうを指差す。

 迷彩色のヘリコプターが、別荘に迫っているのが見えた。

「ヘリコプターにしては、形が違うね」

 知っているものより、ゴツゴツしている。角ばっていてシャープで、男子が好きそうなデザインだ。また、ミサイルポッドのようなものまであった。

『あれは、ガンシップだ』

 地上を攻撃するためのヘリらしい。武装は見たところ、ミニガンと……。

『ミサイルが来たぞ!』
「やっば!」

 白煙を上げて、小型ミサイルが飛来してくる。

 キリちゃすは、屋上から飛び降りた。

 屋上にミサイルが直撃する。キリちゃすのいた場所が大爆発を起こし、一瞬だけ真昼の光を放った。

 さらに、ガンシップはもう一発ミサイルを発射する。

 今度は、別荘を木っ端微塵にした。

「映画かっての!」

 さすがのキリちゃすも、あんなものを食らったらひとたまりもない。チェーンソー型ローラーブレードを展開して逃げた。

 ミサイルを撃ち切った後、ガンシップは方向転換をする。さらにキリちゃすへ、狙いを定めた。

 側面のドアが開き、現れたのはガトリングガンである。

「自衛隊って書いてるね」

 ガトリングの攻撃を、キリちゃすはローラブレードで避け続けた。

『おそらく弥生の月には、自衛隊員もいるのだろう』

 その隊員が、勝手に持ち出したようだ。

 国民の税金を何に使っているのか。

「マジ見境ないね」
『弥生の月が、許可を出しているらしいな』
「わかるの?」
『ヘリは一台だけだ。違反者がいるのに、咎める相手が誰も来ていない』

 たしかに、こんなだいそれたことをしておいて、止めに入る隊員やマスコミのたぐいが見当たらなかった。

『それだけ、弥生の月の影響力は大きいのかもしれん』
「お金だけはあるっぽいもんね」

 キリちゃすは、そばにあった死体から拳銃を掴む。ガンシップへ向けて撃ってみた。

 だが、拳銃の弾は虚空をかすめるだけ。

「当たらない!」
『届くわけがなかろう』
「乗ってるやつに当たるかも知れないじゃん」

 そう考えて、キリちゃすはスナイパーライフルを手に取った。ガトリングの砲手を狙う。

「誰もいない!」

 スコープの向こう側には、誰も乗っていなかった。

『ガンシップのパイロットが、装備を全部動かしているのか』

 ガトリングの弾が、キリちゃすのローラーブレードに直撃する。

 移動手段を壊されて、キリちゃすは地面を転げ回った。

「なにか打つ手はない?」

 口に入った砂を吐きながら、キリちゃすは服についた泥を払う。引きちぎれるほどの穴が足に空いたが、そっちは人間を食うことで回復した。

『ある。蔦を使ってみよ』

 キリちゃすは魔王のアドバイス通り、蔦のある方まで走っていく。

「こう?」

 蔦を掴みながら、キリちゃすは念じてみた。

 ガンシップは、もう一発のミサイルを装填している。

 坊主がやったときより数倍、蔦が大きく膨れ上がった。キリちゃすのエネルギーを吸っているのであろう。

「なにこれ?」
『殺した相手を食うことで、私は相手の技を使えるのだ』

 極太の蔦が、ガンシップに迫る。

 何が起きるのかわかっているのか、ガンシップは攻撃をやめて回避に専念し始めた。

 だが、そうそう逃げられるはずもない。

 とうとう蔦は、ガンシップを捕らえた。羽根に絡みつく。

 コントロールを失い、ガンシップは墜落しそうになる。

 だが、しぶとい。蔦を切断しようと、ガンシップはガトリングガンを乱射した。

「しつこい!」

 蔦を槍状にして。コクピットを貫く。

 パイロットの死を感じ取った。蔦が、死体を食っている。

 コックピットが無人になった瞬間、ヘリが崖の下に墜落していく。攻撃ヘリは墜落するものだ、とピは生前語っていた。キリちゃすが本物を見るのは、初めてである。

『敵影、なし。すべて殲滅したな。追跡してくるものもいない』

 しかし、別荘もなくなってしまった。ここで夜を明かす予定だったのに。もうすぐ夜が明けてしまう。朝になれば、魔王の力も半減する。朝は移動に使って、戦闘はなるべく避けるか。

 ひとまず移動しないと……。

「手を上げろ!」

 若い刑事が、銀色の銃を構えてこちらに近づいてきた。警察手帳をかざしている。『O府警オカルト課 課長 青嶋アオシマ 薫流カオル警部』と書かれていた。

「誰もいなかったんじゃ、なかったっけ?」
『力を使いすぎて、索敵能力が死んでいるようだ』

 隣には、スタイルのいい銀髪の女性が横に並んでいる。彼女からも、ただならぬ気配を感じた。

『あの女は……っ!』
「知り合い?」
『昔、少々な』
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...