オカルト刑事《デカ》 ~スラッシャーと化したヘラギャル VS 百人の退魔師~

椎名 富比路

文字の大きさ
28 / 33
第四章 悪魔のような真犯人と解決編 ~これであたし、ピのところにいけるかな?~

事情聴取

しおりを挟む
 オレたちはO府警七和ナナワ署に戻った。堂本ドウモトの事情聴取を、行うためである。

 緋奈子ヒナコは警察官ではないので、千石センゴク署長と同様、別室で様子をうかがう。

 堂本の行方は、依然として知れない。

「あなたは堂本ドウモト 千晴チハルではないそうですが?」

 オレが聴取をして、福本が記帳をする。

「ええ。村田ムラタと言います」
「では村田さん。あなたと、斗弥生ケヤキ 天鐘テンショウとの関係は?」
「ぼくは、斗弥生天鐘の召使いです」

 能力のない人間、力のない者は、みんな斗弥生の小間使いにされるそうだ。

「あなたと堂本との間に、何があったんですか?」
「堂本さんにそそのかされて、ぼくは顔をすり替えられたんです」
「顔を貸したとは?」
「堂本さんの能力は、変装なのです」

 自称村田は、ネコのように顔を手でクシャクシャと洗った。村田の顔が、小太りの男へと変わる。

「うわ、なんだ?」
「これが堂本さんの能力です。顔をコピーできるんです」

 相手の姿かたちを、コピーできるそうだ。

「『お前の鬱憤を晴らしてやる』って、堂本さんに言われて、顔を貸しました!」

 村田は鉄製の机を、ドンと叩く。

「ぼくの存在は、身を隠すにはちょうどよかったそうです。ぼくは目立たず、目をつけられても意地悪されるだけなので。天鐘は、エリートには手を出さないから」

 村田がいうには、天鐘はドがつくほどのエリートアレルギーだという。

「あいつは弱虫なんだ。エリートを自分のレベルにまで引きずり下ろす行為は、彼だってやっていました。でも、その行為をやっているうちに、自分のレベルまでは上がらないって気づいたんです。しかし、彼は努力しませんでした。彼が選んだ選択は、クズを束ねてつるむことだった」

 ベラベラと、村田が語りだす。

『さっさと堂本の居場所を吐かせろ』と、イヤホンから捜査一課が焚きつける。

 ミラーの向こうに、オレは首を振った。今は村田を、好きにしゃべらせておいたほうがいい。

「別荘のときだってそうだ。ぼくのことは銃で脅したくせに、式神程度の奴らには説教されていた。そのときに言われたんです。『お前の顔をよこせ』って」

 堂本は、手に入れた顔や姿を一日だけストックできるという。

 尚純ナオズミの指示で廃工場の様子を見に行ったタイミングに、堂本は村田に変装して入れ替わったらしい。

和泉イズミ あおばさんって、生きてるんでしょ? 聖奈セイナを殺したっていう。彼女はウチのエース退魔師だった」

 まったく関係のない話題を、村田が振ってくる。

「意識不明だが、一命はとりとめた」

 輸血をしたのは、弓月ユヅキちゃんだ。弓月ちゃんは、真っ先に輸血を名乗り出てくれた。

「だよねえ。あいつは、ホンモノの実力者やエリートには近づかない。反撃されるのが怖いんだ」

 天鐘は、『こいつは絶対に反撃してこない』、『歯向かっても、自分の手で抑え込める』、そんな相手しかいじめないそうだ。
 自分が落ちこぼれだって、自覚しているから。

「それが、あんただったというわけか?」

 村田はうなずく。

 自分が見下されていることを、天鐘は肌でわかるという。

「和泉あおばに、弥生の月データベースに忍び込ませたのは、堂本さんです。堂本さんはデータベースの管理者になりすました。彼女はパパ活をマネて、堂本さんから管理者のコードを手に入れた」
「和泉あおばはまんまと騙されて、オレたちオカルト課に加担したってわけか」
「堂本さんは目的のためなら、平然と道化を演じられます。天鐘には、それができない。プライドが高すぎるから」

 口を釣り上げながら、村田はひとり語りを続ける。

「ヤツは、天鐘は堂本さんも警戒しているようでした。何をしでかすかわからないから。どんなに蹴落としても、這い上がってくるってわかっていたんです。堂本さんはホンモノだから」

 なおも、捜査一課がオレを焚き付けてきた。
 マジックミラーに睨みを効かせ、オレは一課の連中を黙らせる。

「天鐘は、姉の聖奈にだって逆らえなかった。どんな優秀な人もアゴで使えるのに。姉はそれを平然とやっていた。彼女は、自分がエリートを操っていい人間だってわかっていたから。でも天鐘は、反撃が怖いから同じようにできない。あいつは、弱虫だ!」

 村田が、オレの方へ身を乗り出す。

「堂本さんが、教えてくれました。一一年前、聖奈は自分が魔王を呼び出せるからって、魔王を意のままに操ろうとした! 素体となった少年は、堂本さんの種違いの弟らしいですね?」
「それは、堂本が話したのか?」
「ええ。彼を差し出したのは、堂本さんでしたから」

 マジかよ。

「しかし、自分の母親と、警官を一人犠牲にした! たしかその刑事って、ここの署の人間でしたよね?」
「……ああ。多分オレの父親だ。オカルト課の刑事だった」
「それは、お気の毒に」

 ハイテンションだった村田の様子が、冷静に戻る。

 やはり魔王は、オレの仇だったか。

「警察官と相打ちになって、魔王は斗弥生尚純会長の奥様が身を挺して、封じ込めには成功しました。少年は、治療のためロシアへ一時的に預けられました」

 それでも、弥生の月は大半の退魔師を失った。それで、斗弥生は失脚した。

 なのに、聖奈はのうのうと弥生の月へ戻ってきたのである。弟を守る名目で。

「自衛隊員が、戦闘ヘリでキリちゃすを殺そうとしたでしょ? あれも姉の指示です。彼女がやった。天鐘にはできない。結局やつは、自分より弱いやつしか部下にできないんだ」

 かつての雇い主を、村田は嘲笑する。 

「あいつは死んだ。ざまぁみろだ。ふはははは!」

 数分の間、村田はゲラゲラ笑う。しかし、一瞬で真顔に戻った。

「でも、状況は一変しました。堂本さ……堂本の狙いは、斗弥生の乗っ取りだと、ぼくは思っていたんです。でも違った」

 村田は、口の中に指を突っ込む。

「彼は、瀕死のキリちゃすを抱えて、弥生の月本部に乗り込んできた。尚純会長の護衛をしていた退魔師を皆殺しにして、尚純会長も連れて行ったんです」

 村田に対して、堂本は『押し入れに隠れていろ』と、事前に連絡をしていたらしい。

「堂本の居場所について、知らないか?」

 ようやく、堂本が向かいそうな場所を聞き出す。

「退魔師って言っても、生身の人間だ、鉛玉を食らったら、ひとたまりもない。キリちゃすも、同じ手口を行っていた。丸腰だと油断させて、何人も退魔師を殺していた。魔王に食わせるために。堂本さんが、現場を検証してわかりました」 

 ガタガタと体を震わせながら、村田はボソボソと語り始める。堂本については語らない。

「堂本はどこだ?」
「すべてが始まった場所って言っていました。具体的な位置は、ぼくにもわからない」

 ブンブンと、村田が首を振り続けた。汗が飛び散って気持ち悪い。

「ぼくは、ぼくも死ぬんでしょうか!? たとえ生き残ったとしても、罪状は?」
「あんたは、事件とは無関係だ。利用されていただけだしな。何の罪にも問われねえだろう」

 オレは村田をなだめた。

 が、村田はさらに怯えだす。

「むむむムリダ。ぼくは死ぬんだ。ぼくは、魔王に殺される! みんな死ぬ! 魔王に滅ぼされて! 死ぬんだ! みんな死んじゃえばいい! はははは……」

 虚空を見上げながら、村田は白目をむいて倒れた。息はしているから、かろうじて生きて入るだろう。しかし、もう彼の精神は。

「これ以上の聴取はムリです」

 オレは、イヤホンを外す。

『お返ししようか。福本くん、救急車を』

 千石さんの指示で、福本が署の固定電話に向かった。

「緋奈子、どう思う?」
「すべてが始まった場所……だったら、あそこしかありません」
「魔王が封印されていた、キリちゃすの隠れ家か!」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...