オカルト刑事《デカ》 ~スラッシャーと化したヘラギャル VS 百人の退魔師~

椎名 富比路

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第四章 悪魔のような真犯人と解決編 ~これであたし、ピのところにいけるかな?~

儀式

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「てめえの目的は、なんだ? 俺の部下を皆殺しにしやがって!」

 車の助手席から、尚純ナオズミがわめく。手錠で、シートにくくりつけられていた。

「うるさいな。そもそもお前たちは『総本山』の犬だろうが」

 魔法陣を書く作業を中断し、堂本は尚純を殴る。

 深夜、キリちゃすの隠れ家だった場所に。地面に大きな魔法陣が描かれ、キリちゃすはそこの中心に寝かされていた。

 魔法陣を描いているのは、堂本ドウモトだ。斗弥生ケヤキの秘書である。儀式に利用しているのは、さっき殺した退魔師たちの血だ。

 彼は顔を色々と変形させて、警察の検問をことごとく突破した。交通課からは、ただの家族連れだと思われたに違いない。

「犬はおとなしく、首輪に繋がれていればよかった。私が見ている間は」
「すると貴様は」
「やっとわかったのか。そうだ。たしかに私は、あんたの秘書だ。しかし私は同時に、退魔師の総本山が遣わした『忍び』でもある」

 秘書としてずっと、彼は『弥生の月』を監視していたらしい。

「俺を、騙していたのか?」
「気づかなかった、あんたが悪いんだよ」

 フンと、堂本は鼻を鳴らす。

「お前たちの功績は、それはもうひどいものだった。せっかく総本山の至宝と結婚させてやったのに、子どもたちはポンコツばかり。おまけに、せっかく呼び出した魔王の封印に利用して台無しにしやがって。その段階で、『弥生の月』の評価はガタ落ちだったよ」

 弥生の月がここまで大きくなったのは、尚純の手腕ではなかった。
 すべて、妻のカリスマ性である。

 しかし、カリスマを失った後はひどい。
 多くの離脱者を生み出した。

天鐘テンショウはそのことを」
「知っていたさ。『話したら殺す』、『我々に危害を加えても殺す』と、釘を差しておいた」

 一度、天鐘は堂本に嫌がらせを行ったという。しかし、倍にして返り討ちにしたらしい。

「ホンモノのエリートが本気を出したらどうなるのか、彼にはしっかりと教育しておいた。だから秘書の私がでかい顔をしても、ヤツはなんにもできなかった。立ち直れないレベルのトラウマを、植え付けてやったからな」
「敵対していても天鐘がヤケにならなかったのは、そのためだったのか」

 攻撃の意志がなかったわけではない。攻撃ができなかったのだろう。

「そう。聖奈セイナも知っていたみたいだが、ケンカを売ってはいけない相手を肌で理解していたらしい。私には接触しようとしなかった。知らないのは、あんただけ。ここまで生かせてもらっただけでも、ありがたいと思え」

 堂本は、また魔法陣を描く作業へ戻る。

「そもそもここを、『カジノ運営地として再開発する』と言い出した国が悪いのだ」
「俺たちは、必死で止めた! 聞き入れてもらえなかったんだ!」

 しかし、国家には相手にされなかった。もう、弥生の月の影響力は地に落ちていたからだ。

「アレだけの惨劇を生み出したのに、喉元すぎれば、というわけだ。首相が変わったのに、引き継ぎしてなかったようだな」

 だが、また悲劇を起こそうとしていた。

 自分なら、完璧に儀式をこなせると思っているのだろう。

 しかし、と、堂本は続ける。

「長年に渡って弥生の月を偵察していたが、破棄すべきだと総本山は判断した。国を説得できない組織に、存在価値はない。おまえたちが追い詰められているので、ついでで皆殺しにさせてもらった」

 あれだけの殺戮を、ついでで済ませるとは。

 だが、彼は妙なことを語る。

「私の野望も、総本山に知られたからね」


 ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 


 オレは、キリちゃすの隠れ家がある場所まで車を飛ばしている。
 スマホは、スピーカーモードにしていた。

「再開発、ですか?」

 千石センゴク署長から、興味深い話が聞けた。

『そうなんだ。実はキリちゃすが隠れ家にしていた場所は、カジノが建つ予定なんだってさ』
「あそこは、魔王が復活した爆心地ですよね? 国家だって把握しているはずだ」
『実利には、変えられないんだってさ。日本へのカジノ誘致が、公約だったからね』

 なんという。それで、魔王が復活したらどうする気なんだ。

「しかもね。チャン・シドンと堂本の父親を殺した犯人が妙だったんだ。自殺した場所が、日本だったんだよ」

 しかも、誰かを招き入れた形跡があったという。

『堂本って、変装ができるんだろ? 犯人と親しい人物に化けて犯行に及べば、誰にも怪しまれない』

 自分は犯行後、別人になりすませばいい。

「殺害された、って線で探っていたらしい。が、なぜか捜査は打ち切られた」

 捜査一課の、鶴の一声だったらしい。

「堂本が?」
『ヤツというより、ヤツの上の存在が圧力をかけたんだろうね』

 それで怪しんで、千石さんは被疑者の再捜査をしてみたという。

『面白いことがわかったよ。合同練習前と訓練後で、人数が一致しなかった』

 ウキウキ声で、千石さんは語る。

「チャン・シドンと堂本の二名分でしょ?」
『違うんだ。彼らを差し引いても、一人多かったんだ』

 さらに、幼少期の堂本が見学をしていたこともわかった。

「真っ黒ですね。動機にしても濃厚だ」

 堂本が被疑者になりすまして犯行を行い、何食わぬ顔で変装を解く。

「それだけ、堂本はシドンを憎んでいた?」
『どうなんだろうね? 堂本の出生を聞いたら、そうでもないみたいなんだよね』
「なんですって?」
『ボクはてっきり、堂本は弥生の月に預けられたと思っていた。しかし、もっと大きな組織に引き取られていたことがわかった』

 その場所は、総本山というらしい。

 彼はそこで、特殊な訓練を受けていたという。

 しかし、彼は増長しすぎた。総本山でも手を焼くほどの野心を、堂本は抱えていたのである。

「堂本の目的は、復讐じゃないですね」

 緋奈子ヒナコが、会話に入ってきた。

『どうしたの、ヒナコちゃん?』
「これを見てください」

 自分の持っていたスマホを、緋奈子はオレたちに見せてくる。

「これは!?」

 
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 


 縛られながら、キリちゃすは尚純と堂本の会話を聞いていた。

 とはいえ、キリちゃすは当事者ではない。話を半分しか理解していなかった。

 堂本の行動には、裏があるようだ。

「おそらくあの退魔師どもは、お前の指示で動いていたのではない」

 堂本がいうには、尚純が連れてきた退魔師は、総本山が「堂本を殺害するために」雇ったのだろう、と。

「私は総本山から、魔王を安全な形で連れてこいと言われていた。しかし、私物化したからな」

 どうやら、堂本は魔王を自分のものにしたかったらしい。 

「なぜ、弟を差し出した?」
「だって、実験は必要だろ?」

 その言葉を聞いて、キリちゃすはこの男こそ「彼氏」の仇なのだと悟った。こいつはピに、名塚ナヅカ ヨウに対して、少しも愛情はない。コイツにとって、人間はすべて実験動物に過ぎないのだ。

「私だって、本当は自分で取り込みたかったさ。これだけの力があれば、総本山も支配できるからな。しかし、適合したのは弟だった! 私の家庭をメチャクチャにしたあの男の子どもが、唯一の適合者だった。無能だと思っていた。私にとっては、ただの保険。それなのに」

 プライドをズタズタにされつつも、堂本は弟を指名したという。いつか自分でもコントロールできるだろうと考えて。

 空になった、魔法陣用のバケツを捨てた。

「だが、これで私の苦難の日々も終わる。あんたの血で、この魔方陣は完成するのだ!」


 堂本が、懐から銃を出す。狙うは、堂本の眉間だ。


 しかし、銃は何者かの射撃によって吹き飛ばされる。


「随分な動機だな」


 リボルバー銃を構えた警察官が、茂みの奥から現れた。
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