底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

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第三章 姫とコラボで、またバズる

第22話 ミスリル銀の盾

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 ワイバーンに勝てた理由は、召喚したピグまり本人のせいだと、ワラビは話す。

「んだと?」

 ピグまりが、ボクに凄んできた。

「本当です。あなたの作戦負けでした」

 しかし、ボクは冷静に答える。

「あなたは最初、わたしに大量の魔法入りポーションを叩きつけました。わたしはそれを、すべて飲みこんでいます」

 ワラビは、アイテムを吸収して自分の能力に変換する力を持つ。それが【モーフ・スライム】、アイテムに変化するスライムの特徴だ。

 ピグまりのポーションは、一個一個が必殺の威力を持っていた。それをすべて食べれば、ワラビの力も当然上がってくる。

「ワイバーンを制御するには、予防線が必要です。いうことを聞かなかった場合、術士がやられてしまいますから。ですが、わたしは分析できてしまったんです。あなたがポーションを投げたことで」

「なにが」

「ワイバーンを倒す成分です」

 あの巨大魔獣の弱点や、モロい部分、有効な薬品類。すべてワラビは、解読できてしまった。ピグまりがポーションを投げつけたことで、ワイバーン打倒の方法を会得したのである。

「あとは、マスターツヨシに伝えるだけ。直接拳で体験していただきました」

 ワイバーンを倒したパンチは、凄まじかった。インパクトの瞬間、燃焼と冷却を秒ごとに変化させ、ワイバーンのアゴを劣化させる。そこへ沼地に棲んでいたバジリスクの毒を流し込み、倒したのだ。毒はワイバーンの脳まで到達し、身体を硬直させたのである。結果、ブレスを履こうにも口を開くことができず、腹の中で爆発を起こしたのだ。

「それじゃあ、てめえが殴った時点で」

「はい。ワイバーンは絶命していました。バジリスクの毒を使ったのは、ボクのアドリブでしたが」

 その時間は、一秒もなかっただろう。
 ワラビはそれだけ、恐ろしい相手なのだ。
 ピグまりは、喧嘩をする相手を見誤ったのである。

「参ったね。低レベルそうなら、あっという間に侵略できるって思っていたのに」

 うなだれながら、ピグまりは虚空を見上げた。 

「あなたはご自分で、自分の恋人がくださった魔物を撃退させてしまったんです」

「……死にたい」

 ピグまりは、うなだれる。それ以上、何も話さなくなった。


 あれからピグまりは、だんまりを決め込んでしまったらしい。とはいえ、黒幕が誰かを話す意思はあるという。話したところで、ギルドが対処できないと思っているのか。

 帰り道。ボクは痛む身体で、バイクにまたがる。

「今日は疲れたわ。外で食べましょう。あの回転寿司ってのがいいわ」

 メイヴィス姫が、ギルドの近くにある回転寿司を指差す。

「だな。ツヨシも来いよ。バイクを車にくくりつけて、送ってやる」

 センディさんが、そう言ってくれた。

 けど、断る。

「二人で、考え事がしたいんです」

「そうか。じゃあ今日は、お前さんとワラビだけにしてやるよ」

 このままセンディさんたち三人は、外食へ向かうという。

「お寿司を持って帰ってきてあげる。お夜食に食べればいいわ」

 姫が、おごってくれるらしい。

「ありがとうございます。いってらっしゃい」

 ボクは、みんなの乗った車を見送る。
 ワラビを背負って、バイクのエンジンを掛けた。

「何が食べたい?」

「お気遣いなく。いつも桃をいただいていますので」

 ワラビが大量に集めてくれた【アンデッドの骨粉】のおかげで、桃は一月もしないうちに実っている。実がなるまで、三年はかかるというのに。

「いや、実はボクが食べたい物があってさ」

「では、今夜は牛丼ですね」

「あ、やっぱり気になってた?」

 ボクもワラビも、ピグまりが食べていたものに興味を持っていたらしい。香りからして、牛丼だとわかった。ピグまりと話しつつも、頭の中は牛丼のことでいっぱいだったのである。

「マスターツヨシと、考えることは同じですね」

「ずっと一緒だもんね」

 スーパーまでバイクを走らせて、牛丼の素を買う。

 帰宅して、二人で牛丼を囲む。温めるだけなので、楽だ。デザートの桃も用意して、手を合わせた。

「さて、いただきます」

「いただきます。マスター」

 いつもなら一瞬で食べてしまうのだが、ワラビはじっくり味わって食べている。

「ワラビ、なんかピンクがかっていない?」

 透明だったはずのワラビに、色が付き始めていた。

「本当ですね。桃を皮ごと食べているからかもしれません」

「ますます、かわいくなっていくねぇ」

 いとおしくて、ボクはワラビに桃を丸ごと食べさせる。

「ありがとうございます。マスターツヨシも、段々とたくましくなってきました」

 桃を消化しながら、ワラビもお世辞を言う。

「そうかなあ? 他の冒険者と比べたら、まだまだな気がするけど」

「ですが、あの局面でワイバーンにバジリスクの毒を流し込もうと判断なさいました。わたしが体内に忍び込んで、脳を溶かすことも考えましたが」

「それは危ないよ」

 ワラビで拳を包んでパンチするのだって、リスクが高かった。いくらワラビが不死身だと言っても、壊れてしまうかのせいもある。

「君は、敵を倒す道具じゃないんだ。戦略は大事かもしれないけど、ムチャはよそう」

 おそらくボクたちは、四層辺りも潜れそうだ。

 しかしワラビに守ってもらってばかりじゃ、行き詰まる気がする。

「ワラビを守れるくらいに、ボクも強くなるから」

「期待します。マスターツヨシ」

 メイヴィス姫が買ってきてくれたお寿司で夜食をいただいて、就寝した。




 翌日、ボクの家にあるものが届く。

『配信者ツヨシ様 おめでとうございます。あなたにミスリル銀の盾を送ります』

 上位配信者に送られる、銀製のラウンドシールドだった。
 
 

(第三章 完)
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