上 下
63 / 302
1-5 自由研究は生産職スキルで乗り切れ!

第63話 ゴマトマ王

しおりを挟む
 長い廊下を歩き、王の間へ向かう。
 窓の向こうに、鉱山が一望できた。

「管理者だと、窮屈じゃないのか? 不自由な気がするが」
「兄が二人いるから、城の管理はそっちに任せているよー」

 オンコが、エィハスの質問に答える。

「上から長男ゴシャ、次男イッサって兄弟がいるよ。アタシは一番下で、特に権限はないよ」

 兄妹『オイシャサンゴッコ』のアナグラムだな。


「ダイキの話をしたらさ、是非とも会いたがっていたよ」


 長男は城の騎士団長でパトロールへ、次男は街の領主であり、二人とも留守らしい。

「父ちゃん、連れてきたよ」
 まるで友達でも誘うかのように、オンコはゴマトマ王の前に。

 ドワーフの王様は、立派な玉座に座っていた。
 白い袴姿で。

 腕が盛り上がっていて、風格がある。
 やっぱり、玉座って無機質だよね。

 ボクたちは、王の前にひざまずく。

 チサちゃんもマネしようとしたが、慌てて王様が止めた。 

「ああ、あなたは頭を下げずとも。気が利かず申し訳ない」

 いつものように、チサちゃんはボクにあぐらをかかせて、チサちゃんはちょこんと座る。

 頭を下げなくていいのかな。ボクは自然と俯きがちになる。

「私がこの一帯を納める、ドワーフの王・ゴマトマである。此度の働き、見事であった」
 王様が、ボクたちに頭を下げた。

「特に魔王チサ・ス・ギル殿。あなた様がトドメを刺したとか」

「倒したのは、わたしじゃない。相手は異常性癖の持ち主だった。わたしが手を出せば、かえって強化されてしまう可能性があった。よって、ここにいる玉座ダイキに全権を委ねた」

「ほう、玉座殿が!」

 玉座というジョブがさも普通にあるように、会話が進んだ。

「ではダイキ殿とやら、お主がヱッチを討伐したと?」
「そうなります」
「ヱルダー・リッチが相手だったとは。ドワーフの腕力が通用しないのでおかしいとは思っていた」

 王様によると、ドワーフが狙われたのは、対アンデッド武装を作らせないことが目的だったらしい。
 しかし、生体エネルギーの塊であるボクだから打倒できたのだ、と。

「是非とも礼がしたい。困ったことがあればいつでも言って欲しい。協力しよう」
「では国王、ダイキの装備を見直して欲しい」
「心得ましたぞ」

 ボクは装備すべてを、ドワーフさんたちに見てもらうことに。

「ほう、これだけでも何の手入れをせずとも使えますぞ」
 ジイヤさんは、ボクの装備を見ては感心してばかり。

「そうそう。オヤジ、これ見つけてきたよ」

 懐から小さな鉱石を、オンコが取り出した。
 鉱石はオーロラのように、表面がユラユラとした光を放つ。

「おお。これは対アンデッド用の魔法鉱石! ようやく見つかったのか」
「あのエルダー・リッチとか言うヤツが、魔法石の鉱脈を隠していたんだ」

 オンコが発見したがっていたお宝って、このことだったんだ。

「では、ボクの装備を実験台にしてください。いいよね、チサちゃん」
「あれはダイキのモノだから、ダイキの好きに使って」

「ありがとう。というわけで」
 ボクは、装備を実験台としても提供した。

「この先、どんな相手が来るか分からない。強い装備を」
「承知いたしました、魔王サマ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:568pt お気に入り:713

お兄ちゃんと内緒の時間!

BL / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:59

ひどくされても好きでした

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:26

【R18】囚われの姫巫女ですが、なぜか国王に寵愛されています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:1,217

進芸の巨人は逆境に勝ちます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:1

mの手記

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,093pt お気に入り:0

処理中です...