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3-4 ダイキ VS LO【ハメルカバー】 リアル魔リカー対決!

嵐の前に

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「ダイキ、雨が降ってきた」

 黒い雲が、ボクたちの上空を覆い尽くす。

「少し休んだ方がいい。ダイキも」
「オッケー。雨が降るんじゃ、いつ休めるかわからないもんね」

 ひどくなる前に、ボクたちは給水スポットへ。

 仕切り直しとばかりに、後続車も次々とピットに入っていった。車両タイプの魔王は、雨に備えてタイヤ交換をしている。ドラゴンは、熱くなった身体を冷やしていた。

 もちろん、ボクらもオンコの手を借りてタイヤを付け替えている。

 その間に、軽めの昼食を。エィハスが用意してくれた唐揚げを食べることに。

「ダイキ、平気か?」
 チサちゃんとボクのために、ゴハンをよそってくれた。

「うん。唐揚げありがと、エィハス」
 エィハスの唐揚げをつまみながら、ボクは緊張をほぐす。

 チサちゃんも、ここぞとばかりにバクバクと唐揚げを詰め込む。

「今のうちに回復してくださいねーっ!」

 ヘバリ気味のチサちゃんを元気づけようと、オルガが水と風の魔法でエアコンの代わりを務めた。

 太陽が近い天空ステージに、涼風が漂う。

「ありがとう、オルガ。生き返るぅ」
「ダイキさんも、しっかり回復してくださいませ」

 ボクは、いつのまにか手が震えていた。

 自覚はなかったけど、結構大変なバトルだったみたい。

 残り一周とは言え、長丁場になる。
 ましてや雨が迫っているのだ。
 僅かなミスが、命取りとなる。
 トップ集団だからって、うかうかしていられない。

「おお、あんたは。できたてのシェイクをどうぞ」

 ボクたちの前に、トロピカルなシェイクが二つ用意された。

「おじさん! 店員さん!」

 ピット近くのパラソルにいたのは、いつぞやの巨大フルーツを運ぶおじさんである。
 隣には、ドライブスルーにいた店員のオバサンが。たしか、オジサンの娘だって言っていたっけ。

「どうにか、最終レースに間に合ったよ。ありがとうよ、若いの」
「いえ。よかったです。シェイクもおいしいですね」

 またこうやって、最高のシェイクに出会えるなんて。

「気に入っていただけて何よりだ。しっかりやるんだぞ」
「応援ありがとうございます」

 満足したチサちゃんを連れて、ボクはレースに復帰した。

『ラスト一周だ! オサナイダイキが天使LOコンビに追いついたぜ! だが油断するな、ガラス窓に空いて気が付き始めているぜ。嵐の予感がするなあ!』
 ゼーゼマンも、異変に気づいてアナウンスをする。

 天候は次第に悪化し始め、視界を奪うほどの暴風雨となった。ワイパーですら、追いつけない。

 ビチャビチャという不吉な音に耐えながら、チサちゃんがボクの手を握ってきた。

 それだけで、ボクにパワーが漲ってくる。

「雨か。じゃが……負けん!」
「うん。ボクだって!」

 台風が来たって止まるものか。ボクはコースを突っ切る。
 幸い、スキル極フリのおかげで運転技術に問題はない。

「それにしても、この嵐はなんだ⁉」

 異常事態をモロに食らっているのは、セーラさんだ。
 彼女だけ、嵐をまともに浴びている。
 立っているのが不思議なくらいだった。

「えげつないのう!」
 後続が、もう見えない。

「ダイキ、この嵐、様子が変」

 言われてみれば、そうだった。

 ボクたちにだけ、雨風が降り注いでいる。

 他のレーサーたちは、近づきたくても近づけないという有様だ。

「これ、結界かも」
「結界だって?」

 妙なことを、チサちゃんが言い出す。

「わたしたちチームを二組だけにするための」


 どうして、そんなことをする必要が?


「わああ!」

 ボクの乗るハチシャクが、大きくコースアウトした。
 ドライブテクを駆使して、壁への激突は避けた。

「もしかすると、これは」
「そうじゃのう……うお⁉」

 水たまりに足を取られて、ハメルカバーまでもがスリップする。防音壁に、身体を乗り上げた。

「しまった!」
 なんと、セーラさんが風に吹き飛ばされてしまう。防音壁に飛び出した。

「セーラ⁉」
 ハメルカバーモードを解除して、ソーが防音壁へと急ぐ。

「無事だ!」
 セーラさんはどうにか、壁のヘリにつかまっている状態だ。

「今、助けに行く!」
 ボクは車を止めて、嵐の中へ。

 ククちゃんとヨアンさんには悪いけど、こうなったらレースどころではない。
 ライバルと言えど、谷底に落ちそうな相手を見捨てるわけには。

「うごっ⁉」

 ソーが、セーラさんの手を掴んだ。しかし、自分も落ちそうになっている。

「ふたりともつかまって!」
 防音壁をよじ登り、ボクは二人の手を取った。

「ぐおおおお!」
 力を込めて、二人を引っ張り上げる。

 そこに、暖かな光が。ボクに強化魔法を送ってくれた人がいる。

「チサちゃん⁉」
 あろうことか、チサちゃんまでが、セーラさんを助けるために車から出てきた。

「危ないよ! ボクに任せて!」
「違う。わたしは、ダイキを止めに来た」

 ボクの服を、チサちゃんが引っ張ってくる。

「どうして⁉」 
「この嵐の正体が、わかったから」

 どういう、ことだろう。

「そのとおりだ。この場は退け、オサナイ・ダイキ。これは我々の問題なのだ」
 一番危ない状態のセーラさんまでが、ボクを止めようとする。

「この嵐の正体はなんです⁉」



「ハメルカバーだ!」



 この嵐は、神様が引き起こしているだって⁉
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