一攫千金を夢見て旅立った兄が、病んで帰ってきた。結局ボチボチ冒険するのが幸せなんだよね

椎名 富比路

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第二章 人妻ダークエルフ忍者と、旅立つ

第18話 ツバメ返し

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 ボクは剣を構えて、ゴーレムを迎え撃つ。

「みんなは、冒険者さんの治療に専念して! コイツは、ボクがやっつける」

 ソーニャさんとセーコさんに、負傷した冒険者の相手をしてもらう。
 ヘッテピさんには、二人の護衛を頼んだ。

「一人でなんてムチャよ、ヒューゴ!」

 ソーニャさんが、ボクを心配して呼びかけてきた。

「ゴーレムに乗らないと何もできないやつなんかに、ボクは負けない!」

 こんなヤツ、ボク一人で倒してやる。

「なにを!? テメエなんかにコレダーを使うのはもったいねえ! 叩きつぶしてやる!」

 怒り狂うフルドレンが、ゴーレムを操った。腕をブンブンと振り回して、ボクを追い回す。蹴りも繰り出して、大きな体を活用してボクをペシャンコにしようとした。

「大丈夫なの、ヒューゴ!?」

「ボクに任せて! 問題ない!」

「わかった。もう何も言わないわ! ファミリアだけ、側につけてあげるから!」

「ありがとう、ソーニャ!」

 ソーニャさんのファミリアが、ボクの顔の側に。

『治癒はまかせろー』

 精霊は、大量の小さいポーションをリュックに背負っている。
 
「頼みます!」

「こしゃくなボケが! 喰らえ!」
 
 またゴーレムの押しつぶし攻撃が、襲いかかってきた。

 ボクはゴーレムの懐に滑り込んで、またぐらをくぐる。足を開きすぎていて、スキだらけだ。

「くらえ!」

 すれ違いざまに、太ももと腰の付け根へ剣を叩きつける。

 だが、そんな攻撃ではゴーレムに傷をつけられなかった。
 
「テメエ!」

 ゴーレムが、岩を投げ飛ばす。

「わっと!」

 起き上がったボクは、岩をかわした。
 だが、岩の破片が顔に直撃する。

「痛った!」

 顔を覆った死角に、ゴーレムのパンチが飛んできた。

「死ね、クソガキ!」

「そんな鈍重な攻撃が、当たるか!」

 ボクは背面跳びで、敵のパンチをよける。

 敵の動きは、鈍い。重みはあるが、当たることはないだろう。

 とはいえ、こちらも決定打がない。

 そこで、ボクはふとある技を思い出す。取ったけれど、使い道がないなと思っていた、【ツバメ返し】を。

 相手の弱点さえ別れば、多段攻撃で打ち込むことができよう。
 しかし、相手の急所なんてどうやって探せば……ファミリアか。たしかファミリアって、相手の弱いところを教えてくれるはずだ。

「ファミリア、危険だけど、相手の弱点ってわかる?」

『見つけ出しすのなんて、よゆー』

 精霊がサムズアップをする。 

「よし。ボクが相手の注意を引き付けるから、弱点を探すんだ」

『おけまるー』

 指で輪っかを作って、精霊がボクの話を聞きもせずに飛び出していった。こちらに注意を向けさせるって、言ったばかりなのに。

『ぺかー』

 ファミリアが、ゴーレムの真正面に。両手両足をデーンと広げて、発光した。

「なんだ、この精霊は!? アッチへ行け!」

 ゴーレムが、視界を奪う精霊を払いのける。

 その瞬間、脇のスキマからフルドレンの操縦席が見えた。あそこは、トロルトゥース鉱石が行き渡っていないようである。

「あそこだ! くらえ! 【ツバメ返し】!」

 ボクは、ゴーレムの懐に飛び込んで、一太刀を浴びせた。返す刀で、逆袈裟を見舞う。

「なにを、こしゃくな!」

 だが、相手にすぐ、こちらの狙いがバレてしまった。すぐに脇をしめられ、攻撃は防がれる。

 やはりボクのスピードでは、ツバメ返しは難しいか。

「このヤロウ、もう容赦しねえ! ガキだろうが、死ね! コレダー!」

 自分さえ被害が及ぶかもしれないのに、ゴーレムは至近距離で雷撃魔法を発動した。

「うわああああああ!」
 
 ボクはとっさに、フードの中へ身を隠す。

「どうだ、くたばったか、ガキ……イィ!?」

 魔法を退けるフードによって、ボクはどうにか雷撃の嵐から逃れることができたようだ。
 その代わり、フードはチリになってしまったが。

 とはいえ、ゴーレムの動きがさらに鈍っている。攻撃するなら、今しかない。

「いちかばちか。やってやる! 【爆炎撃】!」

 ボクはゴーレムの脇に、爆炎撃を叩きつけた。

 ゴーレムの腕が、爆発によって持ち上がる。

「からの、ツバメ返し!」

 がら空きになった操縦席へ、ツバメ返しで切りかかった。

 閉所で逃げ場のないフルドレンは、そのままボクの剣で斬られる。

「おのれ。そんな技を……」
 
 フルドレンが死んで、ゴーレムも動かなくなった。

「見事だぜ。たいしたやろうだ、ヒューゴ」

 報酬として、見たこともない大金をもらう。魔法石も、おまけしてくれた。

「旅をするんだろ? 少ないが、もらってくれ」

「でも、いいんですか? トロルトゥースが、採れませんでしたが」

「あるじゃねえか。ここによ。どっこいしょっと」 

 確実にフルドレンが死んだことを確認して、ヘッテピさんがゴーレムに乗り込む。

「これをトロルトゥースとして、提供することにするぜ」
 
 ヘッテピさんは、このまま王都にゴーレムごと、トロルトゥースを差し出すそうだ。

「すばらしい働きだったぜ。こいつは俺が、責任を持って王都へ届けてこよう。騎士の詰め所に報告にも行かんと。んじゃ、王都に向かうんなら、そっちで会おうぜ」

 生き残った冒険者たちと、ヘッテピさんは王都へ向かう。

「じゃあ、私は街へ帰るよ。事が済んだら、アンタたちはこのまま王都へ進みな」

「え?」

 王都に迎えと?
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