一攫千金を夢見て旅立った兄が、病んで帰ってきた。結局ボチボチ冒険するのが幸せなんだよね

椎名 富比路

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第五章 転職して、最終決戦へ

第45話 邪神復活

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 ボクとソーニャさんは、塔の頂上までやってきた。

「いたわ、ヒューゴ! ギソよ!」

 塔の頂上では、大勢のフルドレンが。ギソのミイラに、祈りを捧げている。邪神に自分の命を捧げているのだ。
 一人また一人と、ミイラに生気を吸われて灰になっていく。

「止めるわよ!」

 杖を構えて、ソーニャさんが呪文を詠唱する。

 フルドレンたちは、反撃してこない。ミイラを守るように、陣形を組んでこちらを取り囲む。
 
「ギソのミイラもろとも、燃え尽きなさい! メテオバースト!」
 
 ソーニャさんが、特大魔法を展開した。フルドレンたちを、全滅させる。

「なんですって!?」

 しかし、フルドレンたちの魂が、ミイラに吸い込まれていった。
 
「自分からやられにいって、命を捧げるなんて!?」

 ミイラが、立ち上がった。どうやら、邪神は復活してしまったようだ。

「コイツが、ギソ一世ね?」

 現れたミイラは、ローブをまとったガイコツである。ボクがつけた刀傷を、胸に受けたままだ。

『不甲斐ない。我が一族ながら、どうしてここまでもろいのか? やはりこのギソ一世が、ギソ一族を導かねばならぬ』 

「わかりやすい老害ね。おとなしく、後世に道を譲りなさい」

 ソーニャさんが、魔法で攻撃をする。
 
『やかましい』


 さすがにけん制のファイアボールでは、ギソに傷一つつけられない。

『我が憎しみは消えぬ。魔族と関係を持っただけで、王家でありながら邪教に落とされたこの怒り、必ず果たしてくれる! 世界全てを闇にしてな!』

「自分の国だけでは飽き足らず、周りまで巻き込もうなんて。迷惑千万なのよ!」

『黙れ! すべての人類は、セニュト・バシュの血脈をわずかに引いているのだ。その地を絶やさぬ限り、ギソの呪いは永遠にこの地を呪う!』

「やっぱり、完全消滅させるしかないのね」

 ソーニャさんが、本気の構えを取った。
 
『完全とはいかぬが、お主にやられた傷も癒えた。ここからは、本気でいかせてもらうぞ!』
 
「どれだけ復活しても、また倒すだけだ!」

 ボクも剣を取る。いきなり、全力で押し切ることにした。
 
『矮小な人間が、神を退けようとするか。哀れな!』

「くらえ! 【ディサイド・ブリンガー】!」

 剣の刀身を撫でて、魔力を注ぎ込む。
 刀身を駆け巡るイカヅチが、より激しさを増した。
 ボクの魔力を吸って、聖剣デュランダルがより光を増幅させる。
 
『なんと、その技は!?』

 渾身の力を込めて、ボクは剣をふるった。

 稲妻を抱いた衝撃波が、邪神ギソに迫る。

「こしゃくな!」

 だが、神殺しの一手も、邪神の身体を切り裂ききれない。
 わずかながら、威力が止まってしまった。
 まだ、未熟だったか。

『なんと。かつて我を滅ぼした剣術の使い手が、まだいたとは。こうなれば……』
 
 塔を破壊しながら、邪神が巨大化した。

『我が全力を持って、相手をしてやろう! 今まで世界に散りばめていた我が呪いの数々を、すべてこの地に集め、我が糧とする!』

 ガラガラと音を立てながら、塔が崩れ始める。

「ヤバいわよ、ヒューゴ! このままだと、なにもできずにガレキの下敷きだわ!」

 ボクたちは、足場を失った。
 
「大丈夫!」

 塔の下側から、声がする。キルシュのようだけど、やたら声がでかい。

 ボクとソーニャさんは、灰色の大地に落ちた。固くもないし、なんだか温かい。

「なに、これ!? ふにゃふにゃだわ!」

 ソーニャさんが、地面を軽くつまむ。

「ひっどいなぁ。ウチ、こう見えてドラゴンなんですけど?」

 どうやら、ドラゴン化したキルシュの背中に乗っているらしい。


「ご無事のようですな。二人とも」

「ヴィク!」

 ヴィクが、ボクタチの前に。ただし、ヴィクは完全な鳥になっていて、キルシュの隣を舞っている。

「無事だったんだね。ヴィク?」

「ええ。おかげさまで。あんな不埒者に負けるほど、力は衰えておりませんよ」

「でも、あんな邪神どうやって倒したらいいのか? いつまでもキルシュの上に乗っているわけにもいかないし」

 ボクがいうと、「そうでもないけどねー?」と、キルシュはあっけらかんと答えた。

「心配無用。そのためのこの経典ですぞ」
 
 ヴィクの手には、鳥人族が崇拝する神・【サヴィニャック】の聖典が握りしめられていた。聖典の力を開放し、今の姿になったらしい。

「鳥人族の神・サヴィニャック、真の力をお見せしましょうぞ」
 
 ヴィクが、聖典を天に掲げた。

 なんだか、背中がかゆくなってきたんだけど?

「わわわ!」

 ボクの背中に、鳥の羽が展開する。
 
 ソーニャさんの背中には、黒くて大きい羽が生えてきた。カラスかと思ったけど、あれは黒い白鳥の羽だ。
 
「これが、鳥人族の力?」

 サヴィニャックの聖典を使えば、一時的に鳥の羽を展開できるらしい。

「あなた方には、我が神サヴィニャックがついておりますぞ。サヴィニャックも邪神ギソの横暴には耐えられぬようだ。共に打倒致しましょう」

「ドラゴン族も、邪神復活にはガマンできないよ」

 ドラゴン状態のまま、キルシュが吠える。
 
「みんな、いくよ!」

 ボクは、宙に浮いている邪神に突撃した。
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