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第五章 転職して、最終決戦へ
第46話 最後の一撃
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ボクは、邪神に斬りかかる。
敵が大きかろうと、関係ない。迷わず、剣を突き刺しにかかる。
邪神ギソ一世。コイツだけは、絶対に許さない。
だが、邪神の周りを赤黒い障壁が包む。
障壁は粘り気があり、攻撃がほとんど通らない。
『ムダだ! この障壁は、あらゆる物理・魔法攻撃も通じぬ!』
「だったら、コイツはどう?」
ドラゴン化したキルシュが、大きく息を吸い込んだ。
「みんな、どいて! 最初っから、飛ばしていくよ!」
黄金色のブレスを、キルシュが吐き出す。
『ぐおおお!』
邪神を取り囲む障壁が、破壊された。
「どんなもんよ!」
キルシュがフーッと、煙を吐く。
「すごいね、キルシュ!」
「じいさまに頼み込んで、ドラゴン化する方法を教わったもんね」
ボクたちが修行・転職している間に、キルシュたちも故郷でレベルアップに励んでいたという。
「訓練していたのは、あなたたちだけではありませんぞ」
邪神の反撃によるパンチを、ヴィクが魔法障壁で完璧に弾く。
『こざかしいまねを。おとなしく塔と運命を共にできなかったこと、後悔するがよい』
巨大化した邪神が、腕を振り上げた。
赤い空から、黒い雷撃が落ちてくる。
「やっば!」
キルシュが、ボクたちをかばった。雷撃を、まともに浴びてしまう。
「おお、こいつはヤバいね」
パワー切れを起こしたのか、キルシュが縮んでいく。変身が解けて、素っ裸になってしまった。
「キルシュ!」
ヴィクが、キルシュを抱きかかえ、着地する。
「すいません、あとは頼みます!」
「わかった!」
あれだけ、ダメージを与えてくれていたら、十分だ。
『人間の分際で、二人だけで神に挑むとは。たった二人で、なにができるというのか?』
「二人だけじゃない!」
ボクには、たくさんの仲間たちがいる。
ボーゲンさんも、エレオノル姫様も、みんな味方してくれているんだ。
『おろかな。たとえ世界中の人類を集めたとしても、この邪神の侵攻は止められぬ』
「止めるさ」
ボクたちなら、それができるはずだ。
『ならば、ドラゴンすら退ける、我がイカヅチを喰らうがいい!』
「それなら、もう見たわ!」
赤い雷撃を、ソーニャさんが引き受けてくれた。
「ソーニャさん!?」
「こっちは、構わないで! 思い切り行きなさい!」
ソーニャさんの服が、ボロボロになっている。杖も、ズタズタだ。
「あたしは、賢者よ! 一度見た魔法は、対策できるわ! あんたは、やつにトドメをさすことだけ考えなさい!」
「……はい!」
「相手だって、必死なのよ! さっきの雷撃も、二発目は威力が大幅に落ちていたわ!」
邪神の顔が、歪む。どうやら、本当のことらしい。強力な攻撃であるがゆえに、消耗も激しいんだ。
最後の力を振り絞って、ボクは剣を構えた。
神殺しを、もたらせ。
もっと。もっとだ。まだまだ力を引き出す。
【リーンフォース】で、全身の筋力を上げた。
【エンチャント】で、聖属性を剣に付与する。
「【ディサイド・ブリンガー】!」
最後は渾身の力を込めて、剣をふるった。トドメの【ウェーブスラッシュ】、衝撃波を撃ち込む。
相手の魔法障壁は、キルシュが潰してくれた。
ヴィクの障壁が、ボクを包んでくれている。
ソーニャさんが避雷針となって、相手の魔法を引き受けてくれた。
三人とも、限界だ。
ボクが決めないと。
『こしゃくな、木っ端が!』
だが衝撃波は、巨大なガイコツ状の手により虚しく止められる。
やはり、敵のサイズが大きすぎるのだ。
とはいえ、こちらにはまだ秘策がある。
衝撃波だって、まだ完全に消えたわけじゃない。
「からのお! 【ツバメ返し】!」
ボクはさらに、衝撃波を押し込んだ。もう一度、【ディサイド・ブリンガー】を撃ち込む。
X状になった衝撃波が、今度こそ邪神を八つ裂きにする。
『ぐおおおおおおおお!?』
邪神が、十文字に切断された。
『人間の攻撃が、神に届くとは。貴様は、伝説の勇者か? それとも、古の神の血を引き継いでいるのか?』
「……ボクは、ただの百姓だ」
特別な力なんて、なに一つ引き継いでいない。
勇者だとか、英雄だとか、そんな存在からは、ボクはもっとも程遠いだろう。
「お前の敗因は、ボクの兄を廃人にしたことだ」
それでボクに目をつけられ、トドメを刺された。それだけのこと。
『ぐああああ……』
邪神がだんだんと、しぼんでいく。人間サイズのガイコツとなった後、灰になって消えた。
「終わったね」
陸に降りた途端、ボクの背中から羽が消えた。ソーニャさんの背中からも。
ヴィクの言っていた、鳥人族の神の加護が消えたのだろう。
「ええ。これは、なにかしら?」
一本の杖が、残されている。
「賢者になるための杖と、同じ形ね」
ソーニャさんの杖に形状は似ていたが、なんだか魔物の骨を連想させた。いかにも呪物、といった見た目である。
「どうやらこれが、ギソを邪神に焚き付けていたんだろう」
杖は力を失ったのか、粉々になって消えた。
ただの人間が、神に近い力を得る。よく考えれば、恐ろしいことだ。
しかし、ボクだってただの人間だ。闇に取り込まれることなく、生き延びることができる。
特別な力なんて、なくたって。
敵が大きかろうと、関係ない。迷わず、剣を突き刺しにかかる。
邪神ギソ一世。コイツだけは、絶対に許さない。
だが、邪神の周りを赤黒い障壁が包む。
障壁は粘り気があり、攻撃がほとんど通らない。
『ムダだ! この障壁は、あらゆる物理・魔法攻撃も通じぬ!』
「だったら、コイツはどう?」
ドラゴン化したキルシュが、大きく息を吸い込んだ。
「みんな、どいて! 最初っから、飛ばしていくよ!」
黄金色のブレスを、キルシュが吐き出す。
『ぐおおお!』
邪神を取り囲む障壁が、破壊された。
「どんなもんよ!」
キルシュがフーッと、煙を吐く。
「すごいね、キルシュ!」
「じいさまに頼み込んで、ドラゴン化する方法を教わったもんね」
ボクたちが修行・転職している間に、キルシュたちも故郷でレベルアップに励んでいたという。
「訓練していたのは、あなたたちだけではありませんぞ」
邪神の反撃によるパンチを、ヴィクが魔法障壁で完璧に弾く。
『こざかしいまねを。おとなしく塔と運命を共にできなかったこと、後悔するがよい』
巨大化した邪神が、腕を振り上げた。
赤い空から、黒い雷撃が落ちてくる。
「やっば!」
キルシュが、ボクたちをかばった。雷撃を、まともに浴びてしまう。
「おお、こいつはヤバいね」
パワー切れを起こしたのか、キルシュが縮んでいく。変身が解けて、素っ裸になってしまった。
「キルシュ!」
ヴィクが、キルシュを抱きかかえ、着地する。
「すいません、あとは頼みます!」
「わかった!」
あれだけ、ダメージを与えてくれていたら、十分だ。
『人間の分際で、二人だけで神に挑むとは。たった二人で、なにができるというのか?』
「二人だけじゃない!」
ボクには、たくさんの仲間たちがいる。
ボーゲンさんも、エレオノル姫様も、みんな味方してくれているんだ。
『おろかな。たとえ世界中の人類を集めたとしても、この邪神の侵攻は止められぬ』
「止めるさ」
ボクたちなら、それができるはずだ。
『ならば、ドラゴンすら退ける、我がイカヅチを喰らうがいい!』
「それなら、もう見たわ!」
赤い雷撃を、ソーニャさんが引き受けてくれた。
「ソーニャさん!?」
「こっちは、構わないで! 思い切り行きなさい!」
ソーニャさんの服が、ボロボロになっている。杖も、ズタズタだ。
「あたしは、賢者よ! 一度見た魔法は、対策できるわ! あんたは、やつにトドメをさすことだけ考えなさい!」
「……はい!」
「相手だって、必死なのよ! さっきの雷撃も、二発目は威力が大幅に落ちていたわ!」
邪神の顔が、歪む。どうやら、本当のことらしい。強力な攻撃であるがゆえに、消耗も激しいんだ。
最後の力を振り絞って、ボクは剣を構えた。
神殺しを、もたらせ。
もっと。もっとだ。まだまだ力を引き出す。
【リーンフォース】で、全身の筋力を上げた。
【エンチャント】で、聖属性を剣に付与する。
「【ディサイド・ブリンガー】!」
最後は渾身の力を込めて、剣をふるった。トドメの【ウェーブスラッシュ】、衝撃波を撃ち込む。
相手の魔法障壁は、キルシュが潰してくれた。
ヴィクの障壁が、ボクを包んでくれている。
ソーニャさんが避雷針となって、相手の魔法を引き受けてくれた。
三人とも、限界だ。
ボクが決めないと。
『こしゃくな、木っ端が!』
だが衝撃波は、巨大なガイコツ状の手により虚しく止められる。
やはり、敵のサイズが大きすぎるのだ。
とはいえ、こちらにはまだ秘策がある。
衝撃波だって、まだ完全に消えたわけじゃない。
「からのお! 【ツバメ返し】!」
ボクはさらに、衝撃波を押し込んだ。もう一度、【ディサイド・ブリンガー】を撃ち込む。
X状になった衝撃波が、今度こそ邪神を八つ裂きにする。
『ぐおおおおおおおお!?』
邪神が、十文字に切断された。
『人間の攻撃が、神に届くとは。貴様は、伝説の勇者か? それとも、古の神の血を引き継いでいるのか?』
「……ボクは、ただの百姓だ」
特別な力なんて、なに一つ引き継いでいない。
勇者だとか、英雄だとか、そんな存在からは、ボクはもっとも程遠いだろう。
「お前の敗因は、ボクの兄を廃人にしたことだ」
それでボクに目をつけられ、トドメを刺された。それだけのこと。
『ぐああああ……』
邪神がだんだんと、しぼんでいく。人間サイズのガイコツとなった後、灰になって消えた。
「終わったね」
陸に降りた途端、ボクの背中から羽が消えた。ソーニャさんの背中からも。
ヴィクの言っていた、鳥人族の神の加護が消えたのだろう。
「ええ。これは、なにかしら?」
一本の杖が、残されている。
「賢者になるための杖と、同じ形ね」
ソーニャさんの杖に形状は似ていたが、なんだか魔物の骨を連想させた。いかにも呪物、といった見た目である。
「どうやらこれが、ギソを邪神に焚き付けていたんだろう」
杖は力を失ったのか、粉々になって消えた。
ただの人間が、神に近い力を得る。よく考えれば、恐ろしいことだ。
しかし、ボクだってただの人間だ。闇に取り込まれることなく、生き延びることができる。
特別な力なんて、なくたって。
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