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第二章 後輩ウザかわいさが、とどまるところを知らない(自称
ウザ後輩の姉と、学食おうどん
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「はにゃああ。おうどん、おいしいなぁ」
我らがアンズ生徒会長が、素うどんをすすって顔を綻ばせる。
中間テスト期間中のことだ。
俺、誠太郎は、斎藤姉妹に呼び出された。学食が食いたいからついて来い、という。
テスト期間の間、部活は中止だ。
そのため、学食利用者は激減する。
アンズ会長はその間に、うどん無料チケットを利用することを考えつく。
「麺もおつゆも最高~。さすが六〇年も、我が生徒の胃袋を支えてきただけあるよー」
何の変哲もないうどんに対し、これ以上ないくらいの賛美である。
俺のメニューはカツカレーで、クルミはハンバーグ定食だ。
誠太郎が、自分の天ぷらうどんをお盆に乗せて、アンズ会長の隣に座る。
「ほら、トッピングのお揚げだよ」
天ぷらうどん上に載った油揚げを、誠太郎がアンズ会長のうどんにオンした。
「わぁい。ありがとー誠ちゃん。でもいいの?」
追加料金を払い、おばちゃんからもらってきたのだ。
「本来は、きつねうどんのタダ券だったからさ」
素うどんのタダ券になってしまったのは、生徒会のミスである。情報伝達がうまく行かなかったのだ。他の段取りは、完璧だったのだが。
「素うどんでも、うれしいよぉ。誠ちゃんが私のためにゲットしてくれたんだもーん」
温かいうどんを堪能し、またもアンズ会長が溶け出す。
「ところで二人とも、中間試験はどうにかなりそう?」
アンズ会長が、俺とクルミに問いかけてきた。
「ああ、まあな」
「まあまあなくらい?」
「適度に勉強しているからな」
あれから、俺もクルミと会う機会を減らし、勉強に専念していた。メッセも送り合っていない。
クルミは欲求不満そうだが、これは我慢しなくては。
俺がしっかりしないと、クルミが調子に乗ってしまう。
「あいつに教えてもらえばいいじゃん。なんで頼まなかった?」
「誰だよ、あいつって?」
「お前、仙道と親しいんだろ? 今でも連絡取り合ってるくらいだし」
誠太郎に指摘され、メシが気管に入りかけた。
どうにか食道に導き、飲み込む。
「いやいや。この間も話したが、仙道の勉強は、質・量ともに異次元過ぎるんだよ。俺なんかでは理解が追いつかねえよ」
「それもそうか。あいつの頭は宇宙にある」
誠太郎のセリフは、比喩でもなんでもない。
仙道は、宇宙飛行士になりたいという。
「とにかく、成績の方は任せろ。他の生徒会役員に遅れは取らねえよ」
「期待しています。それはそうとさ、リクトくん?」
据わった目で、アンズ会長が俺に視線を向けた。
「なんだ?」
「どうしてクルミに『あーん』させようとしてるの?」
「はあ⁉」
突然の指摘に、俺はパニックになる。
「あっ、ホントだ。仲いいんだなお前ら」
誠太郎まで!
「そそそんな、まさ……か」
恐る恐る、自分の持つ匙の行方を追う。
上に乗ったカツが、クルミの口へ向かおうとしていた。
クルミが、「バカ」と目で訴えてくる。
俺は無自覚ながら、クルミに『あーん』をさせようとしていた。
ついクセで、つい餌付け感覚で。
いつもやっているから、身体に染み付いてしまったのだ。まさか、一番見せてはいけない相手にツッコまれるなんて。
対するクルミは、困惑の顔を浮かべている。メガネの奥が、戸惑いの色を見せているのが分かった。
「あ、いや、食べたそうだなーって思ってさ」
「だからって『あーん』はどうかなー?」
会長が、難色を示す。
「うん、だよな。悪かった」
俺は食器立てからスプーンを取って、クルミに渡した。「どうぞ、クルミさん」と、皿を差し出す。
「は、はあ。いただきます」
スプーンを受け取ったクルミが、困惑顔のままカレーに手を付ける。
「おいしいですね。学食ならではのパサパサ観ですが、ジャンク風なのもクセになりそうです」
あー、いかにも普段のクルミが「ッス」口調で言いそうなセリフだわー。
俺たちの様子を、会長はジト目で見つめている。
「な、なんだよ?」
「いやさー。なーんか、手慣れてるなーって」
まだ、アンズ会長からの攻撃は収まらない。
「い、いい妹によくあげてるからな」
「リクトは妹いるからな。まだ兄貴離れしてないか?」
事情を知らないとは言え、誠太郎が援護射撃をしてくれた。
「お、おう」
心のなかで、誠太郎に礼を言う。
「クルミは食べてみたいの? 学食のカレー」
確かに、クルミの皿にあったハンバーグは、きれいに胃袋へ全て消えていた。
「え、あの、特には」
「遠慮しなくていいよー。頼んであげようか?」
「いえいえ、お気になさらず」
作り笑いで、クルミはその場を乗り切った。
「欲しかったら素直に言ってねー。隠さなくてもいいのよ? お姉さん、知ってるんだから」
「な、何、を?」
意味深な物言いで、アンズ会長はクルミに伝える。
痛いくらいに、心臓が飛び跳ねていた。冷や汗が頬を伝う。
クルミも、俺とアイコンタクトをして、不安を訴えている。
まさか、俺たちが交際していることがバレた?
「誤解だ、アンズ会長! 誓ってそんな!」
「全部言わなくても分かります。リクトくん。ワタシは、全部お見通しなんだから」
我らがアンズ生徒会長が、素うどんをすすって顔を綻ばせる。
中間テスト期間中のことだ。
俺、誠太郎は、斎藤姉妹に呼び出された。学食が食いたいからついて来い、という。
テスト期間の間、部活は中止だ。
そのため、学食利用者は激減する。
アンズ会長はその間に、うどん無料チケットを利用することを考えつく。
「麺もおつゆも最高~。さすが六〇年も、我が生徒の胃袋を支えてきただけあるよー」
何の変哲もないうどんに対し、これ以上ないくらいの賛美である。
俺のメニューはカツカレーで、クルミはハンバーグ定食だ。
誠太郎が、自分の天ぷらうどんをお盆に乗せて、アンズ会長の隣に座る。
「ほら、トッピングのお揚げだよ」
天ぷらうどん上に載った油揚げを、誠太郎がアンズ会長のうどんにオンした。
「わぁい。ありがとー誠ちゃん。でもいいの?」
追加料金を払い、おばちゃんからもらってきたのだ。
「本来は、きつねうどんのタダ券だったからさ」
素うどんのタダ券になってしまったのは、生徒会のミスである。情報伝達がうまく行かなかったのだ。他の段取りは、完璧だったのだが。
「素うどんでも、うれしいよぉ。誠ちゃんが私のためにゲットしてくれたんだもーん」
温かいうどんを堪能し、またもアンズ会長が溶け出す。
「ところで二人とも、中間試験はどうにかなりそう?」
アンズ会長が、俺とクルミに問いかけてきた。
「ああ、まあな」
「まあまあなくらい?」
「適度に勉強しているからな」
あれから、俺もクルミと会う機会を減らし、勉強に専念していた。メッセも送り合っていない。
クルミは欲求不満そうだが、これは我慢しなくては。
俺がしっかりしないと、クルミが調子に乗ってしまう。
「あいつに教えてもらえばいいじゃん。なんで頼まなかった?」
「誰だよ、あいつって?」
「お前、仙道と親しいんだろ? 今でも連絡取り合ってるくらいだし」
誠太郎に指摘され、メシが気管に入りかけた。
どうにか食道に導き、飲み込む。
「いやいや。この間も話したが、仙道の勉強は、質・量ともに異次元過ぎるんだよ。俺なんかでは理解が追いつかねえよ」
「それもそうか。あいつの頭は宇宙にある」
誠太郎のセリフは、比喩でもなんでもない。
仙道は、宇宙飛行士になりたいという。
「とにかく、成績の方は任せろ。他の生徒会役員に遅れは取らねえよ」
「期待しています。それはそうとさ、リクトくん?」
据わった目で、アンズ会長が俺に視線を向けた。
「なんだ?」
「どうしてクルミに『あーん』させようとしてるの?」
「はあ⁉」
突然の指摘に、俺はパニックになる。
「あっ、ホントだ。仲いいんだなお前ら」
誠太郎まで!
「そそそんな、まさ……か」
恐る恐る、自分の持つ匙の行方を追う。
上に乗ったカツが、クルミの口へ向かおうとしていた。
クルミが、「バカ」と目で訴えてくる。
俺は無自覚ながら、クルミに『あーん』をさせようとしていた。
ついクセで、つい餌付け感覚で。
いつもやっているから、身体に染み付いてしまったのだ。まさか、一番見せてはいけない相手にツッコまれるなんて。
対するクルミは、困惑の顔を浮かべている。メガネの奥が、戸惑いの色を見せているのが分かった。
「あ、いや、食べたそうだなーって思ってさ」
「だからって『あーん』はどうかなー?」
会長が、難色を示す。
「うん、だよな。悪かった」
俺は食器立てからスプーンを取って、クルミに渡した。「どうぞ、クルミさん」と、皿を差し出す。
「は、はあ。いただきます」
スプーンを受け取ったクルミが、困惑顔のままカレーに手を付ける。
「おいしいですね。学食ならではのパサパサ観ですが、ジャンク風なのもクセになりそうです」
あー、いかにも普段のクルミが「ッス」口調で言いそうなセリフだわー。
俺たちの様子を、会長はジト目で見つめている。
「な、なんだよ?」
「いやさー。なーんか、手慣れてるなーって」
まだ、アンズ会長からの攻撃は収まらない。
「い、いい妹によくあげてるからな」
「リクトは妹いるからな。まだ兄貴離れしてないか?」
事情を知らないとは言え、誠太郎が援護射撃をしてくれた。
「お、おう」
心のなかで、誠太郎に礼を言う。
「クルミは食べてみたいの? 学食のカレー」
確かに、クルミの皿にあったハンバーグは、きれいに胃袋へ全て消えていた。
「え、あの、特には」
「遠慮しなくていいよー。頼んであげようか?」
「いえいえ、お気になさらず」
作り笑いで、クルミはその場を乗り切った。
「欲しかったら素直に言ってねー。隠さなくてもいいのよ? お姉さん、知ってるんだから」
「な、何、を?」
意味深な物言いで、アンズ会長はクルミに伝える。
痛いくらいに、心臓が飛び跳ねていた。冷や汗が頬を伝う。
クルミも、俺とアイコンタクトをして、不安を訴えている。
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