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第二章 後輩ウザかわいさが、とどまるところを知らない(自称
ウザい後輩と、ジャンクフード
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「大杉先輩を撥ねてから、姉は自動車での通学をやめたッス。両親からは危ないからと反対されましたが、車に載っている方が危ないと、姉は突っぱねたッス。あたしの通学は車にしようって話になったんスが、あたしもNOをつきつけたッス」
「なんでだ? お前は関係ないじゃん」
「金持ちムーブがキライなんスよ、あたしも」
斎藤家の中では、『お金持ちは車で登下校すべき』という妙な価値観があるらしい。
「伝統的な家柄だからか、テンプレ好きなんスよ。テンプレしか知らないというか。マジで、お金持ちのテンプレをやりたいために金持ちになっている人たちでして。姉が愛想を尽かす気持ちもわかるッス」
アンズ会長は、両親と真っ向から対立している。
姉がああなので、クルミの方は波風を立てないように振る舞っているらしい。
しかし、親への対立感情は自分の方が上なのでは、と思っているそうな。
「我慢している分、あたしが爆発しそうなんスよねー」
言いながら、クルミは肩をすくめる。
「じゃあ、俺との交際も、両親へのあてつけだったりするのか?」
意地悪な質問をしてしまったなと、言ってから後悔した。
しかし、そう思っていないからこそ、確認を取りたい。
「かも知れないッスね。実際、あたしもよく分かってないんス。この感情。先輩に惚れたのか、恋がしたかっただけなのか」
やはり、そうなのか?
「できればそうじゃなくて、先輩のことを本当に、ホントに」
上目づかいに、クルミは俺を見る。
「おまたせー」
アンズ会長が戻ってきた。
時計を見ると、もう昼を過ぎている。時間を忘れて、話し込んでいたんだな。
「ふたりとも、もう大丈夫? 立てる?」
「立てる。ありがとな会長」
「真剣に話し込んでたけど、声をかけないほうがよかった?」
しまった。気にしていたか、会長。
「あのですね。大杉先輩がいかにして姉さんを落としたか、攻略法をお聞きしていたのです!」
やや興奮気味に、クルミはごまかす。
「それを聞いてどうしようと?」
「後学に活かそうと」
「だよね。あんな家、出たいもんね」
クルミの言ったとおりだ。アンズ会長は、あまり自分の家が居心地の良いものではないらしい。
「とにかく、メシに行こう」
「さんせーっ!」
アンズ会長の可愛らしい掛け声とともに、俺たちはフードコーナーへ。
「今日はめちゃ体に悪いものを取るぞーっ!」
「やる気満々だな」
「だって、お家うるさいんだもん。ハンバーガーは体に悪いとか、カップ麺は化学物質がどうとか。『どうせ何を食べても、人間は死ぬんだ』って、ダイエットの本にも書いてるんだから!」
さすがアンズ会長だ。妙な哲学を持っている。
「ジャンクなんて毎日食べるわけじゃないんだから、ほっといてよね!」
この食への関心ぶりは、妹に似ていると思って微笑ましい。
「何食う?」
「ピザ!」
アンズ会長が即答した。
「あと、フライドポテトと、ポップコーン。たこ焼きもあるよ!」
「大皿メニューばっかだね」
「うん。だから、みんなで食べようね。でもって、一緒に不健康になろうよ!」
後はそれぞれ単品を頼み、全員でトレーを運ぶ。
「アンズ会長は優しいな」
「本当は姉さん、みんなで集まってのが好きなんスよ。いつもはキリッてしてなきゃ! って気張ってるから、誤解を受けやすいんスけど」
俺の隣にくっつきながら、クルミはそう教えてくれた。
「みんなでシェアしよー」
ピザを専用カッターで切り分け、アンズ会長自らが振る舞う。
「わぁ、チーズが伸びる伸びる」
会長は、ビローンと伸びるチーズを下から覗き込む。
まるでおもちゃを手にした子供のように。
紙ナプキンがなければ、子供のように衣服を汚していただろう。
「今日は妹と楽しめてよかったぁ。普段はあんまりかまってあげられないもん」
食事をしながら、世間話をする。
「生徒会の準備でしょ。自分の勉強でしょ。誠ちゃんとも学校でしか話さないもんね」
車通学をやめて以降、自由度は増したと言うが。
「姉が変わったのは、たしかに事故からですよね」
「うん。元々、成金みたいな振る舞いに嫌気が差していたんだけど、あの事件で吹っ切れたなぁ。生徒会長としてちゃんとはするけど、それ以外は好きにやらせてほしいなーって」
運転手さんは職を失って困ったが、ご両親が新しい雇用先を見つけてくれらしい。
「ホント、誠ちゃんに会わなかったら、こんな考え方にはならなかったかも」
「別にオレは、そこまで変えられるほど立派な人間じゃないよ」
誠太郎が謙遜する。
しかし、俺が親友と呼べるくらいに、誠太郎は裏表がない。
「オレは好きに生きたいだけで。だから、好きに生きられない人がいると放っておけないっていうか」
看病してもらっていたとき、会長の身の上を聞かされて、少しアドバイスを送った。
それが、今の会長の指標となっているのだ。
誠太郎がどれだけ人に影響を及ぼしているか、そのエピソードだけで分かる。
「その分、クルミには窮屈な思いをさせているから、なんとかこの場を借りて帰してあげたいなと」
「ありがとう姉さん。その気持だけで十分ですから」
「いつかきっと、斎藤は新しく生まれ変わる。わたしが変えるから」
「期待しています」
「なんでだ? お前は関係ないじゃん」
「金持ちムーブがキライなんスよ、あたしも」
斎藤家の中では、『お金持ちは車で登下校すべき』という妙な価値観があるらしい。
「伝統的な家柄だからか、テンプレ好きなんスよ。テンプレしか知らないというか。マジで、お金持ちのテンプレをやりたいために金持ちになっている人たちでして。姉が愛想を尽かす気持ちもわかるッス」
アンズ会長は、両親と真っ向から対立している。
姉がああなので、クルミの方は波風を立てないように振る舞っているらしい。
しかし、親への対立感情は自分の方が上なのでは、と思っているそうな。
「我慢している分、あたしが爆発しそうなんスよねー」
言いながら、クルミは肩をすくめる。
「じゃあ、俺との交際も、両親へのあてつけだったりするのか?」
意地悪な質問をしてしまったなと、言ってから後悔した。
しかし、そう思っていないからこそ、確認を取りたい。
「かも知れないッスね。実際、あたしもよく分かってないんス。この感情。先輩に惚れたのか、恋がしたかっただけなのか」
やはり、そうなのか?
「できればそうじゃなくて、先輩のことを本当に、ホントに」
上目づかいに、クルミは俺を見る。
「おまたせー」
アンズ会長が戻ってきた。
時計を見ると、もう昼を過ぎている。時間を忘れて、話し込んでいたんだな。
「ふたりとも、もう大丈夫? 立てる?」
「立てる。ありがとな会長」
「真剣に話し込んでたけど、声をかけないほうがよかった?」
しまった。気にしていたか、会長。
「あのですね。大杉先輩がいかにして姉さんを落としたか、攻略法をお聞きしていたのです!」
やや興奮気味に、クルミはごまかす。
「それを聞いてどうしようと?」
「後学に活かそうと」
「だよね。あんな家、出たいもんね」
クルミの言ったとおりだ。アンズ会長は、あまり自分の家が居心地の良いものではないらしい。
「とにかく、メシに行こう」
「さんせーっ!」
アンズ会長の可愛らしい掛け声とともに、俺たちはフードコーナーへ。
「今日はめちゃ体に悪いものを取るぞーっ!」
「やる気満々だな」
「だって、お家うるさいんだもん。ハンバーガーは体に悪いとか、カップ麺は化学物質がどうとか。『どうせ何を食べても、人間は死ぬんだ』って、ダイエットの本にも書いてるんだから!」
さすがアンズ会長だ。妙な哲学を持っている。
「ジャンクなんて毎日食べるわけじゃないんだから、ほっといてよね!」
この食への関心ぶりは、妹に似ていると思って微笑ましい。
「何食う?」
「ピザ!」
アンズ会長が即答した。
「あと、フライドポテトと、ポップコーン。たこ焼きもあるよ!」
「大皿メニューばっかだね」
「うん。だから、みんなで食べようね。でもって、一緒に不健康になろうよ!」
後はそれぞれ単品を頼み、全員でトレーを運ぶ。
「アンズ会長は優しいな」
「本当は姉さん、みんなで集まってのが好きなんスよ。いつもはキリッてしてなきゃ! って気張ってるから、誤解を受けやすいんスけど」
俺の隣にくっつきながら、クルミはそう教えてくれた。
「みんなでシェアしよー」
ピザを専用カッターで切り分け、アンズ会長自らが振る舞う。
「わぁ、チーズが伸びる伸びる」
会長は、ビローンと伸びるチーズを下から覗き込む。
まるでおもちゃを手にした子供のように。
紙ナプキンがなければ、子供のように衣服を汚していただろう。
「今日は妹と楽しめてよかったぁ。普段はあんまりかまってあげられないもん」
食事をしながら、世間話をする。
「生徒会の準備でしょ。自分の勉強でしょ。誠ちゃんとも学校でしか話さないもんね」
車通学をやめて以降、自由度は増したと言うが。
「姉が変わったのは、たしかに事故からですよね」
「うん。元々、成金みたいな振る舞いに嫌気が差していたんだけど、あの事件で吹っ切れたなぁ。生徒会長としてちゃんとはするけど、それ以外は好きにやらせてほしいなーって」
運転手さんは職を失って困ったが、ご両親が新しい雇用先を見つけてくれらしい。
「ホント、誠ちゃんに会わなかったら、こんな考え方にはならなかったかも」
「別にオレは、そこまで変えられるほど立派な人間じゃないよ」
誠太郎が謙遜する。
しかし、俺が親友と呼べるくらいに、誠太郎は裏表がない。
「オレは好きに生きたいだけで。だから、好きに生きられない人がいると放っておけないっていうか」
看病してもらっていたとき、会長の身の上を聞かされて、少しアドバイスを送った。
それが、今の会長の指標となっているのだ。
誠太郎がどれだけ人に影響を及ぼしているか、そのエピソードだけで分かる。
「その分、クルミには窮屈な思いをさせているから、なんとかこの場を借りて帰してあげたいなと」
「ありがとう姉さん。その気持だけで十分ですから」
「いつかきっと、斎藤は新しく生まれ変わる。わたしが変えるから」
「期待しています」
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