腹ペコ召喚獣VSドラゴン肉「あれ~召喚士くん、キミのペットさあ、オレの焼いた肉をガツガツ食ってますよ~」「ざこ胃袋❤」

椎名 富比路

文字の大きさ
9 / 31
試験二日目 「卑怯な手を使って負けるってどんな気持ち?」「へなちょこ胃袋❤」

地獄の番犬 ケルベロス

しおりを挟む
 試験の二日目を迎える。

 昨日と同じように、シチサブロー・イチボーは焚き火台で炭火を熾す。相棒であるテルルのシッポに包丁を入れて、サイコロステーキにした。

 シチサブローは、一口含む。

「うん、今日も最高だぜ、テルル」
「世界一?」
「宇宙一だ」

 サムズアップで、シチサブローは答える。

『さあ、始まってしまいました、S級召喚士認定試験! 若いうちから一流の恩恵を受けられるのは、果たしてどのチームか! 選手は入場してください!』

 現れたのは、と、人間より大きな黒いドーベルマンである。人を何人も殺していそうな目をしていて、口からは火炎が漏れ出ていた。

『あっとぉ、登場したのは侯爵の令嬢! 引き連れているのは地獄の番犬、ケルベロスです!』
『放送席、放送席、ただいま、挑戦者にインタビューをしてみたいと思います。さて、召喚獣は扱いが難しいとされるケルベロスということですが、勝てそうですか?』

 ケルベロスの飼い主に、マイクが向けられる。

「この子はアンデッドに近いので、大丈夫かなと」
『頭が三つあるため、意思疎通は難しいと思いますが?』
「わたしは優秀なの。そこらの召喚士とは違うわ。頭が三つあるということは、我慢強さも三倍ということ!」
『もし負けることがあれば、勝負は時の運ということでは済まないと思いますが……』

 リポーターのセリフを侮辱と捉えたのか、令嬢の目つきが変わった。

「戦う前に負けることを考えるバカはいないわっ!」

 令嬢のビンタが、リポーターに飛ぶ。 

「下がりなさい!」

 怒号を令嬢から受けて、レポーターは引き下がった。続いて、ケルベロスにマイクを差し出す。

「いよいよメインイベントの直前と言うことですが、どう戦いますか?」
「時は来た。それだけだ……」

 中央の頭が、発言する。
 他の二つの頭は、笑いを堪えていた。マイクを向けられても、答えられないでいる。

「では、シチサブローイチボー審査員にお伺いします。相手は負ける気がまったくありませんが、いかがですか?」

 マイクが視界に入ったが、シチサブローはリポーターに顔を向けない。黙々とドラゴンのシッポを焼く。

「だろうな。まあ、さっき吐いたセリフを飲み込むなよ、とだけ言っておくぜ」

 侯爵令嬢が、シチサブローの挑発に反応する。リングサイドにあった木製のイスを掴んで、投げ飛ばそうとアピールまでしてきた。ケルベロスが火球を吐いて、イスを破壊したが。

「以上です。実況席にお返しします!」

『はい。ありがとうございました! 場外乱闘はおやめください。場外乱闘はお控えください。あくまでもリングの上で戦いましょう。フェアプレーの精神です。では、興奮冷めやらぬままですが、試合を開始します!』

 協会長が呆れる中、ゴングが鳴った。

 皿の上にあったドラゴン肉が、一瞬で消えてしまう。三匹仲良く、肉を頬張っていた。

『あーっと、「待て」を言う間もなく秒殺! 侯爵令嬢失格です! これはあっけない幕切れだ!』

 会場からは、「やっぱりな」という空気が流れている。集中力もない、信頼関係も乏しいとはっては、負けは目に見えていた。

「おやおや飼い主くん、さっきの意気込みはどうしたんだ?」

 ここぞとばかりに、シチサブローが相手を侮辱する。

「食べる早さも、食らいつく早さも三倍だったな! 我慢強さは三等分されていたか? そんんなショボい信頼関係で、よくS級を受けられたな?」 
「へなちょこ胃袋」

 テルルも便乗した。

『さて、試合は終了しました。負けた選手は退場願います』

 侯爵令嬢が、肩を怒らせながらリングから降りる。

 試合内容に不満があろうが、これは試験である。結果だけがすべてだ。

 だが、どうしても納得できないのだろう。令嬢は、側にあった木製イスを掴む。 

「真面目にやりなさいよコラ!」

 またしても、木製イスが宙を舞う。

 ケルベロスが火球を吐き、またもイスが灰になった。

「何が『時は来た』よコラ!? こっちはS級の昇格がかかってんのよ! あんたらの食欲を満たすためになんかで、試験に来ていないの! わかってんの!?」

 侯爵令嬢が、汚い言葉で飼い犬を責め立てる。

「やかましいわコラ! 頭三つ分の指示を出さねえということ聞かねえって、わかってんだろうが。人のせいにすんなやコラ!」

 飼い犬も黙っていない。

「あんたは頭が三つあっても、わたしの身体は一つしかねえのよコラ! ちょっとくらい忖度して指令が聞けないのかコラ!」
「なにがコラじゃコラ!」
「なにコラッ! タココラアッ!」

 召喚士協会の役員が割って入り、両者ともつまみ出される。

「さ、さて、シチサブロー審査員、見事な瞬殺でした。もしかして、見下されたことを怒ってらっしゃいましたか?」
「キレてはいないさ。オレをキレさせたら大したもんだ。ただ、テルルを侮辱するなら許さなかったが」

 自身のふがいなさを、召喚獣にぶつけても仕方ない。
 場外で暴れるヤツなど、論外だ。召喚獣に手をあげるなど、お門違いもいいところである。
 悪いのはすべて、意志の弱い自分自身なのだから。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

処理中です...