腹ペコ召喚獣VSドラゴン肉「あれ~召喚士くん、キミのペットさあ、オレの焼いた肉をガツガツ食ってますよ~」「ざこ胃袋❤」

椎名 富比路

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試験二日目 「卑怯な手を使って負けるってどんな気持ち?」「へなちょこ胃袋❤」

シチサブロー容疑者による、食中毒事件

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『では、次の挑戦者です! おっと、早くも暴れているぞ! 大丈夫か?』

 次なる挑戦者も少女だ。相棒は、大型のアラクネである。
 ドラゴンテールではなく、直接テルルへと牙を剥く。

「待て!」

 少女の手から、魔法が放たれる。召喚獣を拘束する魔法だ。

『これは危険です。うまく制御できるのでしょうか? クモと少女のにらみ合いが続く。目をそらすと、また暴れ出すでしょう!』

 指示を受け、蜘蛛は一時的におとなしくなった。 ところが……。

『あーっと、アラクネ選手、拘束を解いて舞台に向かっていきました!』

 ゴングが鳴る前に蜘蛛はテルルへと飛び出していく。

「ダメよ! 戻ってきなさい!」

 少女が蜘蛛の首根っこを掴んで、止めようとした。しかし、蜘蛛は飼い主の手さえ振りほどく。

『あーっと、試合前にテルル選手を食べようとしてしまったーっ。これはいけません。失格です! 試合放棄と見なされアウトです!』

 蜘蛛の口が、テルルのノドへと迫る。
 協会長が、解説席から立ち上がった。
 だが、シチサブローは協会長を止める。この事態は想定内とばかりに。包丁の背で、蜘蛛に峰打ちを叩き込んだ。
 ゴロンと、大型の蜘蛛が仰向けになる。

「お前みたいなヤツに、ウチの肉は渡せない」

 テルルが耳元でささやくと、大蜘蛛は消滅していった。

『試合終了。試合前に攻撃を行ったため、選手は召喚士としての資格も剥奪となります』

 召喚士の少女は、ショックで立ち上がれない。

 それを、シチサブローは強引に立たせる。

「空腹に耐えきれなかったんだ。ありゃあ断食のさせすぎだな」
「なによ、料理人の分際で!」

 説教なんて聞きたくないとばかりに、召喚士はシチサブローの手を振りほどく。

「その料理人に負けたのはあなた。その召喚獣は、食材の分際に負けた」

 食材テルルが、召喚士の少女に辛らつな言葉を投げかける。

「く……!」
「エラそうなのは、どっち?」
「……ふん!」

 肩を怒らせて、少女は立ち去った。

「ちょっと言い過ぎじゃねえか?」
「召喚獣を大事にしない子に、召喚士を名乗る資格はない」
「それは言えてるな」

 シチサブローたちの会話が聞こえたのだろう。少女は肩を引きつらせて、足を止めた。

「なによ、不手際を起こして、勤め先を追い出されたくせに!」

 召喚士が、負け惜しみを吐く。

「そんな昔のことを、誰かから吹き込まれたのか」
「ええ。アンタたちは昔、ドラゴンステーキハウスで食中毒を起こした。それで、今の職に就いたって。みんなウワサしているわ!」
「へえ……」

 シチサブローは、不敵な笑みを浮かべた。

「へへへ」
「何がおかしいのよ?」
「そんな大昔の事件を掘り下げて、オレを追い詰めたつもりかよ?」

 シチサブローは、貴族席に目をやる。

 そこには、昨日の夜に交渉しに来た貴族がいた。どうやら、この蜘蛛召喚士の親らしい。

「確かに情報は古い。ですが、あなたを追い詰めるには十分すぎる材料だ。観客にどこまで信じれもらえますやら」
「さあ、どう言い訳をするのかしら?」

 勝ち誇ったように、召喚士は詰め寄る。

「そんなのデタラメです!」
「こいつの言っていることは、ウソにゃ!」

 挑戦者席の隅にいた少年とケットシーが、立ち上がった。あれは昨日、冒険者に絡まれていた召喚士コンビじゃないか。

『えーと、失礼ですが』
「ボクはフリオ・ニールセン。探偵です!」

 フリオと名乗る探偵は、召喚士協会に少年は資料を提出する。

「シチサブロー・イチボ審査員は昔、レストランスタッフの不手際を自分のせいにされて、追放されました。その事件に関する不利な記事は、すべてでっち上げであると調査していました!」
『なるほど。シチサブロー審査員、この内容は事実なのでしょうか?』

 調査資料をくまなく調べ、アナウンサーがシチサブローに尋ねた。 

「アレは、スパイスが古かったんだ。それを店長がわざと使用した」

 それも、シチサブローの成功を妬んでの行いだったと、彼を雇っていた店長も自供している。彼ばかりチヤホヤされるのが、面白くなかったと。

「もう不正は発覚して、とっくに解決した事件だろ?」
「情弱」

 捜査に協力してくれたのは、協会長だ。既に、賠償金も受け取っている。

 だから、彼は召喚士試験の試験官を引き受けたのだ。恩に報いるために。

「フン!」

 頭に血が上っている少女は、謝罪するでもなく立ち去った。

「待って」

 テトテトと追いかけて、テルルは少女に小瓶を渡す。

「何よ?」
「これは私の生き血。エリクサーに近い。これをさっきのアラクネに飲ませて」
「どうしてそんなこと? あたしは、あなたの施しを受ける資格はないんでしょ?」
「お腹がすきすぎて、食べさせられないだけ」

 テルルに交代して、シチサブローが説明役を引き継ぐ。

「胃に何もない状態からいきなり固形物を食わせると、腹を下す。それは召喚獣も同じだ。だから、最初はこういった液状のもので胃をならしていけばいい。固形物へと移行してくれ」

 少女は何か言いたそうだったが、シチサブローたちには次の相手が待っている。
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