レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-3 レアを作って、殴りに行きます

人を救ったレア

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 店の方に降りると、シェフが俺たちに頭を下げた。店には誰もいない。客が落ち着いたタイミングで、店主が『準備中』に変えたという。

「ありがとうございました。あなたは義母の恩人です」
「とんでもない。俺はおばさんが元気になればいいと思っただけだ」

 俺たちは、グレンダおばさんが作ったデザートを食べさせてもらう。

「これは、素敵です」

 プルプルした瑞々しい団子が、皿に乗っている。

 目の前に置かれたのは、わらびモチちという東洋の食べ物だ。
 片栗粉でできた透明なモチに、プリンのカラメルをつけて食べる。水っぽいと思ったが、なかなか味わい深い。
 スライムを題材にしているのも、シャレている。

「このきな粉っていう粉も使えるよ」
「わあ、おいしいです!」

 サピィも、わらびモチを気に入ったみたいである。

「義母を助けてくださって、ありがとうございました」

 店の亭主が、俺に礼を言う。
 母親を早くに亡くしたので、グレンダを実の親のように慕っていたという。
 俺と同じだ。

「こちらこそ、グレースを大切にしてくれているようで。ありがとう」
「次、街へお越しでしたら、お代は今後結構ですので」

 グレースと同じことを言われてしまった。

「いやいや、そういうわけにはいかない」

 こんな時代だ。支え合いは大事である。

「じゃあ、ゴハンはタダでいいわ。デザートまでただにしたら、食べつくされちゃうから」
「それもそうだ。アハハ」

 俺とグレースが、笑い合う。つられて、みんなが笑い出す。

 でもいい提案だ。デザートは、金を払ってでも食いたいから。

 グレンダおばさんには部屋で休んでもらい、俺たちは帰ることに。

「長居してしまって、申し訳ない」
「いえいえ。またお越しください」

 俺は、店主と握手をかわした。

「ごちそうさまでした。グレースさん」
「どうしたしまして。サピィさん、ランバートはいいやつだから仲良くしてあげて」
「はい。もちろんです」
「こんないいやついないよ! パーティのヤツら、みんな見る目がないの! 兄貴も素敵だけど、秘宝バカだし」

 グレースがためいきをつく。 

「じゃあ、街によることがあったらまた会いに来て!」

 旧友の妹は、最後まで騒々しかった。

「すまんな。一言多いヤツで」
「素敵な方でした。あれは、旦那様も放しませんね」
「だな。店を構えるかぁ。勇気がいることだよな」
「そうですね。このご時世、店があっても魔物の襲撃などもありますから」

 アイレーナでは、考えられないだろう。街にまで魔物が入りかねない。常に警戒が必要で、最低限の施設しかなかった。

「コナツも、ここに連れてこられたらいいんだが」

 そうなれば、商売はもっとうまくいくだろう。

「王都は、税金さえクリアすれば住みやすいですからね」

 安全こそ保証してくれるが、王都は住むとなったら各種税金がかかる。インフラが行き届いている理由は、そこにあった。アイレーナで細々と、地味にやっていくしかないのだろうか。

「もう少し、街を見て回りましょう。リサーチです!」
「そうだな!」

 気持ちを紛らわせるかのように、俺たちは街を満喫することにした。

「まずはクレープの屋台だな!」
「また、甘いものを食べるんですか!?」
「クレープは別腹だ!」
「まあ。スライムでさえ暴食は控えているというのに、呆れますね」

 そう言うな。リサーチなんだから。
 


 ポータルを使って、帰還する。

「すまんコナツ。あの杖はあげてしまった」

 俺は、杖のいきさつをコナツに話す。

 コナツは何も言わず、俺を抱きしめた。

「すまん、コナツ」
「何を言ってやがる!? オレの作ったアイテムが、人の命を救ったのか! よかった」

 コナツの眼には、熱いものが。

「ありがとう。コナツ。お前のアイテムがあったから、グレンダおばさんは助かった」

 夕飯の時間となり、食卓を囲む。

「礼を言うのはこっちだ、ランバート。オレ、今日ほどアイテム作りをしていてよかったと思ったことはねえぜ! 今日は、いい酒が飲めそうだ」

 豪快に、コナツはエールを煽った。グレンダおばさんが元気になったことを、自分のことのように喜ぶ。

 俺は食が進まない。まだバケツプリンが腹に溜まっているわけじゃないのに。

「何があった? グレースちゃんにおちょくられたか?」

 コナツが、俺の顔を覗き込んだ。

「いや違う。実は……」

 ペールディネのブティックに、クリムの写真があったことを話す。

「それだけで、お前がそんなにヘコむかよ。他にもあるんだろ?」
「ああ。ペールディネのアイテムショップに、父の名前を見つけた」

 ショーケースにあった、街で一番高価なドレスは、元ハンターである父が獲得したものだった。 

「あれ、お父様だったのですね?」
「そうだ。マスクをしていたから素顔は見られないが」

 父の話題を極力避けるように、俺は黙々とデザートのプリンを口にする。 

「お前、まだ引きずってんのかよ?」

 エールをがぶ飲みして、コナツが俺の肩を叩いた。

 黙って俺は、プリンの山を崩す。

「どういったことでしょう?」
「こいつのオヤジは昔、剣士だったんだ」

 聞いてきたサピィに、コナツが俺の代弁をする。
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