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1-3 レアを作って、殴りに行きます
お手製レアアイテムの使いみち
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「どうした?」
「母さんだわ」
グレースは「ちょっと行ってくる」と言い残し、二階へと駆け足で向かう。
「グレンダおばさんか。俺たちも行こう」
「そうですね。ただならぬ様子でした」
勝手ながら、俺たちも後を追った。
「邪魔するぞグレース」
ベッドで寝ている老婆が、グレースに支えられながら口を押さえている。口元からは、赤いものが。
「この人がグレンダだよ」
俺とクリムを育ててくれた、恩人だ。
「あたしがここの人と一緒になろうって思ったのは、母さんの面倒を見ると行ってくれたからでもあるの」
グレースが苦笑する。
「元々、ここのスイーツは母さんが作ってたの。母さんは、あたしのスイーツを褒めてくれた。だから、恩返しがしたい」
しかし、最近になってグレンダが病気になった。どんな薬を使っても、よくならないそうな。
「グレンダおばさん。俺だ。ランバートだ。返事をしてくれ」
呼びかけても、応答がない。苦しそうにうめくばかり。
「なんとかしてあげたいですね」
「それでも、薬が効かないなら……そうだ」
俺は、アイテムボックスから片手杖を取り出した。【デルタ】パールが三つほど、はめ込まれている。
「それは?」
「コナツが作った試作品の、余剰で持っていたものだ」
この試作品は、「もしペールディネで買い取ってくれそうなヒーラー系ハンターがいたら、売ってやってくれ」と、コナツから渡された。これなら、十分な働きをしてくれるはず。
「今こそ、これを使うときだ」
売りに出したほうが、金にはなるだろう。
しかし、命には替えられない。
この杖は、この状況で使われるべくして開発されたんだ。
「いいか。これより体内を解毒する。サピィは、俺に力を分けてくれ」
「はい」と、サピィは俺の手を握った。
「あたしは何をすれば?」
「仕事に戻ってくれ」
事情を知らない人からすると、業務が滞ったら何事かと気にかけてしまう。トラブルになってはいけない。
「信じて、いいのね?」
「俺に任せてくれ。早く行け。旦那さんも気にしているはずだから」
「わかったわ。母さんをお願い!」
下へと、グレースが降りていく。
「大丈夫だ、グレンダおばさん。すぐによくなるからな」
解毒でうまくいくかは、わからない。それでも、何もしないよりはマシだろう。
「グレンダおばさん、もってくれよ……【エンチャント】!」
ヒール用の杖に、さらにエンチャントをかける。癒やしのためにエンチャントをしたのは、初めてだ。とはいえ、こういうアイテムの使い方もあっていいはずだ。
「よし。【キュア】をかける。おばさんはこの杖を持っていてくれ」
グレンダおばさんに、エンチャントした杖を持たせる。
毒を消す【キュア】を、俺はおばさんに唱えた。
「頼む。もってくれよ。おばさん!」
必死で、俺はキュアを全力で注ぐ。
「見てくださいランバート、おばさまの顔が!」
だんだんと、おばさんの血色が良くなっていく。経過は順調なようだ。
「おお、身体が軽くなったよ! ありがとうランバート!」
グレンダおばさんが、急に起き上がろうとした。
俺は慌てて、おばさんをベッドに寝かせる。
「まだ安静にしているんだ、おばさん。毒が完全に抜けたと決まったわけじゃない」
「そうだね。早合点したよ」
ベッドに横たわったおばさんが、一息つく。
「私なら、この方の症状がわかるかもしれません」
「サピィ、この人を診れるのか?」
「おそらくは」
サピィは、使い魔であるスライムを、おばさんに少量だけ飲み込ませた。
「何をするんだ?」
「体内にスライムを這わせて、毒素の有無を確認してもらいます。毒があれば、またキュアを発動させますが」
現在、サピィのスライムがグレンダおばさんの体内をくまなくチェックしているという。
「肺や心臓までは見られないので、それはご容赦を」
「いいってことよ」と、おばさんは返す。
「催すと思いますが、そのまま排出してください」
「わかったよ」
グレンダおばさんが、ブルッと震えだした。
手洗いまで、サピィが肩を貸す。
スッキリした顔で、おばさんが手洗いから戻ってきた。
「毒はきれいに抜けていました。無事で何よりです」
「ありがとう。本当に治っているそうだよ」
落ち着いた様子で、おばさんはベッドに眠る。
ドタドタと、階段を駆け上がる音が。仕事が一段落したグレースが、戻ってきたらしい。
「よかった。母さん!」
グレースは、体調がよくなったグレンダおばさんと抱き合った。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
涙でグシャグシャになりながら、グレースは何度も礼を言う。
「いやいや。具合が良くなってよかった」
「もう、あんたたちからお金は取らない。こんな素敵なものまでくれて」
「いいんだ、これくらい」
おばさんが、杖を俺に返してくる。
「こいつはお返しするよ。大事なもんなんだろ?」
俺は、杖を受け取らなかった。
「いいえ。おばさんにあげるよ。持っていてくれ」
「だったら、ちょっと待っておくれ」と、グレンダおばさんが立ち上がる。
「サピィさんといったね。あんたのおかげで新メニューが浮かんだよ。食べていきな」
「母さんだわ」
グレースは「ちょっと行ってくる」と言い残し、二階へと駆け足で向かう。
「グレンダおばさんか。俺たちも行こう」
「そうですね。ただならぬ様子でした」
勝手ながら、俺たちも後を追った。
「邪魔するぞグレース」
ベッドで寝ている老婆が、グレースに支えられながら口を押さえている。口元からは、赤いものが。
「この人がグレンダだよ」
俺とクリムを育ててくれた、恩人だ。
「あたしがここの人と一緒になろうって思ったのは、母さんの面倒を見ると行ってくれたからでもあるの」
グレースが苦笑する。
「元々、ここのスイーツは母さんが作ってたの。母さんは、あたしのスイーツを褒めてくれた。だから、恩返しがしたい」
しかし、最近になってグレンダが病気になった。どんな薬を使っても、よくならないそうな。
「グレンダおばさん。俺だ。ランバートだ。返事をしてくれ」
呼びかけても、応答がない。苦しそうにうめくばかり。
「なんとかしてあげたいですね」
「それでも、薬が効かないなら……そうだ」
俺は、アイテムボックスから片手杖を取り出した。【デルタ】パールが三つほど、はめ込まれている。
「それは?」
「コナツが作った試作品の、余剰で持っていたものだ」
この試作品は、「もしペールディネで買い取ってくれそうなヒーラー系ハンターがいたら、売ってやってくれ」と、コナツから渡された。これなら、十分な働きをしてくれるはず。
「今こそ、これを使うときだ」
売りに出したほうが、金にはなるだろう。
しかし、命には替えられない。
この杖は、この状況で使われるべくして開発されたんだ。
「いいか。これより体内を解毒する。サピィは、俺に力を分けてくれ」
「はい」と、サピィは俺の手を握った。
「あたしは何をすれば?」
「仕事に戻ってくれ」
事情を知らない人からすると、業務が滞ったら何事かと気にかけてしまう。トラブルになってはいけない。
「信じて、いいのね?」
「俺に任せてくれ。早く行け。旦那さんも気にしているはずだから」
「わかったわ。母さんをお願い!」
下へと、グレースが降りていく。
「大丈夫だ、グレンダおばさん。すぐによくなるからな」
解毒でうまくいくかは、わからない。それでも、何もしないよりはマシだろう。
「グレンダおばさん、もってくれよ……【エンチャント】!」
ヒール用の杖に、さらにエンチャントをかける。癒やしのためにエンチャントをしたのは、初めてだ。とはいえ、こういうアイテムの使い方もあっていいはずだ。
「よし。【キュア】をかける。おばさんはこの杖を持っていてくれ」
グレンダおばさんに、エンチャントした杖を持たせる。
毒を消す【キュア】を、俺はおばさんに唱えた。
「頼む。もってくれよ。おばさん!」
必死で、俺はキュアを全力で注ぐ。
「見てくださいランバート、おばさまの顔が!」
だんだんと、おばさんの血色が良くなっていく。経過は順調なようだ。
「おお、身体が軽くなったよ! ありがとうランバート!」
グレンダおばさんが、急に起き上がろうとした。
俺は慌てて、おばさんをベッドに寝かせる。
「まだ安静にしているんだ、おばさん。毒が完全に抜けたと決まったわけじゃない」
「そうだね。早合点したよ」
ベッドに横たわったおばさんが、一息つく。
「私なら、この方の症状がわかるかもしれません」
「サピィ、この人を診れるのか?」
「おそらくは」
サピィは、使い魔であるスライムを、おばさんに少量だけ飲み込ませた。
「何をするんだ?」
「体内にスライムを這わせて、毒素の有無を確認してもらいます。毒があれば、またキュアを発動させますが」
現在、サピィのスライムがグレンダおばさんの体内をくまなくチェックしているという。
「肺や心臓までは見られないので、それはご容赦を」
「いいってことよ」と、おばさんは返す。
「催すと思いますが、そのまま排出してください」
「わかったよ」
グレンダおばさんが、ブルッと震えだした。
手洗いまで、サピィが肩を貸す。
スッキリした顔で、おばさんが手洗いから戻ってきた。
「毒はきれいに抜けていました。無事で何よりです」
「ありがとう。本当に治っているそうだよ」
落ち着いた様子で、おばさんはベッドに眠る。
ドタドタと、階段を駆け上がる音が。仕事が一段落したグレースが、戻ってきたらしい。
「よかった。母さん!」
グレースは、体調がよくなったグレンダおばさんと抱き合った。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
涙でグシャグシャになりながら、グレースは何度も礼を言う。
「いやいや。具合が良くなってよかった」
「もう、あんたたちからお金は取らない。こんな素敵なものまでくれて」
「いいんだ、これくらい」
おばさんが、杖を俺に返してくる。
「こいつはお返しするよ。大事なもんなんだろ?」
俺は、杖を受け取らなかった。
「いいえ。おばさんにあげるよ。持っていてくれ」
「だったら、ちょっと待っておくれ」と、グレンダおばさんが立ち上がる。
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