55 / 230
1-5 黒幕の配下を、殴りに行きます
クエレブレ
しおりを挟む
「次に死にたいやつはどいつだ? チェストチェストチェストォーッ!」
トウコはバトルスタッフで敵の攻撃を受けつつ、拳を叩き込むスタイルに切り替える。
囲まれたら、ザコなら棍で打撃を、ボスクラスなら拳か蹴りを叩き込んだ。
デーモンをキックで撃退できるのは、トウコくらいだろう。
「まだボスが生きています」
ジャージャー・デビルが、二体に増えている。
「どうしてだ? 魔石は回収したはずだ!」
「レッサーデーモンです。彼らが大量にあのヘビの中に取り憑いて、更に強いモンスターへと変質させたのです!」
サピィが言っているうちに、もう一体増える。
しかも、三体のヘビ型ボスは形が変わっていた。
前と後ろに二対ずつ、足が生える。
羽がより巨大化した様は、小さなドラゴンを思わせた。
「あれはドラゴンの【クエレブレ】です! 小型とはいえ、油断できません。進化してしまったようです!」
恐るべきはデーモン族か。ヤツらが跋扈してしまったせいで、ダンジョンが手のつけられないものに。
「進化したってことは、ドロップは期待していいってことだよな?」
こんな逆境でくじけるような、トウコではない。
「二体は任せたのだ。もう一体はあたしがやっつけるのだ!」
言いながら、トウコはその場で両手を胸の前に。虚空を腕でかき混ぜるような仕草を始めた。
「トウコさんは、なにをなさっておいでで?」
「気を練り込んでいるんだ。大技が来るぞ」
させるかとばかりに、一匹のクエレブレがトウコへと爪を伸ばす。
「そうはいかん。おらあ!」
俺たちはトウコをかばうように、小型ドラゴンの腕を切断した。
クエレブレは強靭な皮膚を持つが、特に耐性や弱点はなさそうだ。
どの攻撃も通用するだろう。だったら。
「ディメンション・セイバー乱れ打ち、おらおらぁ!」
遠くから、衝撃波を放ってクエレブレのウロコを切り刻む。
一点集中が功を奏し、ドラゴンの首が宙を舞った。
どうにか、クエレブレを一体仕留める。
「やったぞ。後はお前の獲物だ!」
「うむ!」
クワッと、トウコが目を見開く。同時に、両手を前に突き出した。
「くらえ、【プラズマ・ボンバー】だ!」
ピンク色の球体が、トウコの両手から発射される。
トウコの気で作られた桜色の塊が、大蛇に着弾した。
敵の体内に浸透し、小型ドラゴンが内側から破裂する。
「やっぱりランバートがいると、大技を出せていいな!」
素材を回収しながら、トウコはゴキゲンな笑顔を見せた。
「他のメンバーだとずっと前衛で殴ってないといけないから、色々試せなかった!」
これからもよろしく頼むぞ、とトウコは親指を立てた。
しかし、もう一体がサピィへ尾を振り下ろしす。
「サピィ!」
「ご安心を。【ミラージュ・スラッシュ】!」
魔力でできた無数のナイフが、サピィの眼前できらめく。
鋼鉄の尾を、バターのように切り裂いた。
自動発動する、魔術師系の斬撃スキルだ。いつのまに、あんな技を?
予想外の攻撃に、クエレブレが怯む。
その首に、シーデーが組み付いた。
「今です、お嬢!」
「はい」
サピィは、手からスライム状の液体を放つ。
シーデーに組み付かれているドラゴンの頭を、スライムが飲み込む。
「何をする気だ?」
「このモンスターの出どころを探ります」
記憶を吸い上げているらしい。
グフッと大きな泡を吐き、クエレブレが絶命した。ぐったりと身体を横たえる。
「この先です」
サピィが、暗闇の向こうを指差す。アラクネクイーンを倒した場所の、さらに奥だ。
「たしかあそこは、ペールディネ側のルートだな」
「無数のデーモンが、ペールディネ側に置かれた魔法石に導かれているようですね」
あの向こうにも、同様の岩か、それ以上の存在があると。
「ここからは危険です。私一人で参ります」
サピィが、物騒なことをいう。
その瞳には、覚悟の炎が見えた。
トウコはバトルスタッフで敵の攻撃を受けつつ、拳を叩き込むスタイルに切り替える。
囲まれたら、ザコなら棍で打撃を、ボスクラスなら拳か蹴りを叩き込んだ。
デーモンをキックで撃退できるのは、トウコくらいだろう。
「まだボスが生きています」
ジャージャー・デビルが、二体に増えている。
「どうしてだ? 魔石は回収したはずだ!」
「レッサーデーモンです。彼らが大量にあのヘビの中に取り憑いて、更に強いモンスターへと変質させたのです!」
サピィが言っているうちに、もう一体増える。
しかも、三体のヘビ型ボスは形が変わっていた。
前と後ろに二対ずつ、足が生える。
羽がより巨大化した様は、小さなドラゴンを思わせた。
「あれはドラゴンの【クエレブレ】です! 小型とはいえ、油断できません。進化してしまったようです!」
恐るべきはデーモン族か。ヤツらが跋扈してしまったせいで、ダンジョンが手のつけられないものに。
「進化したってことは、ドロップは期待していいってことだよな?」
こんな逆境でくじけるような、トウコではない。
「二体は任せたのだ。もう一体はあたしがやっつけるのだ!」
言いながら、トウコはその場で両手を胸の前に。虚空を腕でかき混ぜるような仕草を始めた。
「トウコさんは、なにをなさっておいでで?」
「気を練り込んでいるんだ。大技が来るぞ」
させるかとばかりに、一匹のクエレブレがトウコへと爪を伸ばす。
「そうはいかん。おらあ!」
俺たちはトウコをかばうように、小型ドラゴンの腕を切断した。
クエレブレは強靭な皮膚を持つが、特に耐性や弱点はなさそうだ。
どの攻撃も通用するだろう。だったら。
「ディメンション・セイバー乱れ打ち、おらおらぁ!」
遠くから、衝撃波を放ってクエレブレのウロコを切り刻む。
一点集中が功を奏し、ドラゴンの首が宙を舞った。
どうにか、クエレブレを一体仕留める。
「やったぞ。後はお前の獲物だ!」
「うむ!」
クワッと、トウコが目を見開く。同時に、両手を前に突き出した。
「くらえ、【プラズマ・ボンバー】だ!」
ピンク色の球体が、トウコの両手から発射される。
トウコの気で作られた桜色の塊が、大蛇に着弾した。
敵の体内に浸透し、小型ドラゴンが内側から破裂する。
「やっぱりランバートがいると、大技を出せていいな!」
素材を回収しながら、トウコはゴキゲンな笑顔を見せた。
「他のメンバーだとずっと前衛で殴ってないといけないから、色々試せなかった!」
これからもよろしく頼むぞ、とトウコは親指を立てた。
しかし、もう一体がサピィへ尾を振り下ろしす。
「サピィ!」
「ご安心を。【ミラージュ・スラッシュ】!」
魔力でできた無数のナイフが、サピィの眼前できらめく。
鋼鉄の尾を、バターのように切り裂いた。
自動発動する、魔術師系の斬撃スキルだ。いつのまに、あんな技を?
予想外の攻撃に、クエレブレが怯む。
その首に、シーデーが組み付いた。
「今です、お嬢!」
「はい」
サピィは、手からスライム状の液体を放つ。
シーデーに組み付かれているドラゴンの頭を、スライムが飲み込む。
「何をする気だ?」
「このモンスターの出どころを探ります」
記憶を吸い上げているらしい。
グフッと大きな泡を吐き、クエレブレが絶命した。ぐったりと身体を横たえる。
「この先です」
サピィが、暗闇の向こうを指差す。アラクネクイーンを倒した場所の、さらに奥だ。
「たしかあそこは、ペールディネ側のルートだな」
「無数のデーモンが、ペールディネ側に置かれた魔法石に導かれているようですね」
あの向こうにも、同様の岩か、それ以上の存在があると。
「ここからは危険です。私一人で参ります」
サピィが、物騒なことをいう。
その瞳には、覚悟の炎が見えた。
0
あなたにおすすめの小説
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる