レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-5 黒幕の配下を、殴りに行きます

クエレブレ

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「次に死にたいやつはどいつだ? チェストチェストチェストォーッ!」

 トウコはバトルスタッフで敵の攻撃を受けつつ、拳を叩き込むスタイルに切り替える。
 囲まれたら、ザコなら棍で打撃を、ボスクラスなら拳か蹴りを叩き込んだ。

 デーモンをキックで撃退できるのは、トウコくらいだろう。

「まだボスが生きています」

 ジャージャー・デビルが、二体に増えている。

「どうしてだ? 魔石は回収したはずだ!」
「レッサーデーモンです。彼らが大量にあのヘビの中に取り憑いて、更に強いモンスターへと変質させたのです!」

 サピィが言っているうちに、もう一体増える。
 しかも、三体のヘビ型ボスは形が変わっていた。
 前と後ろに二対ずつ、足が生える。
 羽がより巨大化した様は、小さなドラゴンを思わせた。

「あれはドラゴンの【クエレブレ】です! 小型とはいえ、油断できません。進化してしまったようです!」

 恐るべきはデーモン族か。ヤツらが跋扈してしまったせいで、ダンジョンが手のつけられないものに。

「進化したってことは、ドロップは期待していいってことだよな?」

 こんな逆境でくじけるような、トウコではない。

「二体は任せたのだ。もう一体はあたしがやっつけるのだ!」

 言いながら、トウコはその場で両手を胸の前に。虚空を腕でかき混ぜるような仕草を始めた。

「トウコさんは、なにをなさっておいでで?」
「気を練り込んでいるんだ。大技が来るぞ」

 させるかとばかりに、一匹のクエレブレがトウコへと爪を伸ばす。

「そうはいかん。おらあ!」

 俺たちはトウコをかばうように、小型ドラゴンの腕を切断した。

 クエレブレは強靭な皮膚を持つが、特に耐性や弱点はなさそうだ。
 どの攻撃も通用するだろう。だったら。


「ディメンション・セイバー乱れ打ち、おらおらぁ!」

 遠くから、衝撃波を放ってクエレブレのウロコを切り刻む。

 一点集中が功を奏し、ドラゴンの首が宙を舞った。

 どうにか、クエレブレを一体仕留める。

「やったぞ。後はお前の獲物だ!」
「うむ!」

 クワッと、トウコが目を見開く。同時に、両手を前に突き出した。

「くらえ、【プラズマ・ボンバー】だ!」

 ピンク色の球体が、トウコの両手から発射される。

 トウコの気で作られた桜色の塊が、大蛇に着弾した。

 敵の体内に浸透し、小型ドラゴンが内側から破裂する。

「やっぱりランバートがいると、大技を出せていいな!」

 素材を回収しながら、トウコはゴキゲンな笑顔を見せた。

「他のメンバーだとずっと前衛で殴ってないといけないから、色々試せなかった!」

 これからもよろしく頼むぞ、とトウコは親指を立てた。

 しかし、もう一体がサピィへ尾を振り下ろしす。

「サピィ!」
「ご安心を。【ミラージュ・スラッシュ】!」

 魔力でできた無数のナイフが、サピィの眼前できらめく。
 鋼鉄の尾を、バターのように切り裂いた。
 自動発動する、魔術師系の斬撃スキルだ。いつのまに、あんな技を?

 予想外の攻撃に、クエレブレが怯む。
 その首に、シーデーが組み付いた。


「今です、お嬢!」
「はい」

 サピィは、手からスライム状の液体を放つ。

 シーデーに組み付かれているドラゴンの頭を、スライムが飲み込む。

「何をする気だ?」
「このモンスターの出どころを探ります」

 記憶を吸い上げているらしい。

 グフッと大きな泡を吐き、クエレブレが絶命した。ぐったりと身体を横たえる。

「この先です」

 サピィが、暗闇の向こうを指差す。アラクネクイーンを倒した場所の、さらに奥だ。

「たしかあそこは、ペールディネ側のルートだな」
「無数のデーモンが、ペールディネ側に置かれた魔法石に導かれているようですね」

 あの向こうにも、同様の岩か、それ以上の存在があると。

「ここからは危険です。私一人で参ります」

 サピィが、物騒なことをいう。

 その瞳には、覚悟の炎が見えた。
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