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1-5 黒幕の配下を、殴りに行きます
禍宝 テン・リュー
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「そっちの方が危ないぞ。俺も一緒に行く」
俺が言うと、サピィは首を振った。
「あなたには、落涙公の本気を見せたくないので」
どうやら、サピィは相当に怒っているように見える。
「ジェンマの配下たるデーモンが、群がっているのです。見過ごせません」
「わかった。だが、何があっても俺たちは一緒だ」
サピィの顔に、困惑した表情が浮かぶ。「どうしてわかってくれないのか」といいたげな様子だ。
「どうして……」
「お前が仲間だからだ」
驚いた顔を見せた。
「たったそれだけの理由でついてくるのか、って思っているだろ? だがな。お前についていくなら十分すぎる。なあ、トウコ?」
「そうだぞ。あたしたちは友だちだからな」
トウコも、譲らない。
「お嬢、ここは、あなたの負けですな」
渋い顔をした後、サピィはすぐに微笑む。
「はい。では、ついてきてください。ただし、何が出てきても知りませんよ?」
サピィが、先を促す。
ファミリアを浮かべて、電灯のついていない道を進む。
思えば、こんなに長くセグメント系ダンジョンに潜ったのは、初めてかも知れない。
非常通路のような螺旋階段を、俺たちはひたすら降りていった。
「敵がいないな」
「さっきのクエレブレで、打ち止めのようですね」
もっと大量にデーモンがいると思っていたが。
「どうして、この奥が怪しいと?」
「デーモンの動きが、実に妙でした」
階段をゆっくりと降りながら、サピィは告げる。
なにも、デーモンは夜行性ではない。
その気になれば、いつでも街を襲うことだってできたはず。
しかし、襲撃はモンスターに任せきりだった。
「考えられることは一つです。彼らは、何かを守っている」
「例の呪われた岩か?」
「あれは、召喚装置に過ぎません。それよりもはるかに、触れてもらいたくないものが、この先にいます」
サピィは、ペールディネへの道へは向かわない。途中の道へ。
「ここが、終点のようですね」
表面がパイプに覆われた、扉の前に立つ。扉は、とてつもなく大きい。巨人でも眠っているかのようだ。
「これは、我が開けます」
シーデーが、コンソールを操作した。
人間の腕では決して開かなそうな扉が、自動的に横へスライドしていく。
だだっ広い無機質な空間が、目の前に広がっているだけ。
「来るぞ!」
俺は身構えた。
しかし、何も出てこない。
あるのは、血まみれのフルプレートメイルだけ。
首のカブトがないのが、より奇っ怪さを際立たせる。
その周辺には、レッサーデーモンの死体が大量に横たわっていた。
「俺が、レアアイテムを見つけるだと?」
サピィがすぐに、「違います」と訂正する。
「あれは、【禍宝】の【テン・リュー】!? こんなものが、どうしてこの世界に!」
テン・リューというヨロイは、アーマーの近代化が進んでいる時代には不釣り合いなほど、前時代的造りだった。
腕や脚の部分に、悪趣味で不気味な装飾が施されている。
生き物の皮を、金属板の上に直接貼り付けたかのような異様さである。
「なんだそのヨロイは? 初めて聞いたぞ」
「正式名称は、【Temperance Rew】と言います」
節度を守らせるために何度も世界をやり直させる、という意味合いだという。
「レアリティは、アーティファクトと対をなす、【オミナス】です」
不吉、その言葉を聞いて、俺は緊張が走る。
俺の父が暴走した剣も、オミナスだったのだ。
このヨロイを調べれば、父が暴走した謎が解けるかも知れない。
この世界のヨロイではない。魔界で製造された。しかし、あまりにも強力過ぎる上に、装着したものを殺すと言われている。
「極めてアーティファクトに近い力を持つレジェンダリで、幻のヨロイです。その力は、【チョーシュー】や【ムトー】に匹敵します」
「どうする?」
「もちろん、破壊します」
サピィが、ヨロイに一歩近づく。
「そうは参りませんな」
シーデーのものではない、フォート族独特の機械的な声がした。
俺が言うと、サピィは首を振った。
「あなたには、落涙公の本気を見せたくないので」
どうやら、サピィは相当に怒っているように見える。
「ジェンマの配下たるデーモンが、群がっているのです。見過ごせません」
「わかった。だが、何があっても俺たちは一緒だ」
サピィの顔に、困惑した表情が浮かぶ。「どうしてわかってくれないのか」といいたげな様子だ。
「どうして……」
「お前が仲間だからだ」
驚いた顔を見せた。
「たったそれだけの理由でついてくるのか、って思っているだろ? だがな。お前についていくなら十分すぎる。なあ、トウコ?」
「そうだぞ。あたしたちは友だちだからな」
トウコも、譲らない。
「お嬢、ここは、あなたの負けですな」
渋い顔をした後、サピィはすぐに微笑む。
「はい。では、ついてきてください。ただし、何が出てきても知りませんよ?」
サピィが、先を促す。
ファミリアを浮かべて、電灯のついていない道を進む。
思えば、こんなに長くセグメント系ダンジョンに潜ったのは、初めてかも知れない。
非常通路のような螺旋階段を、俺たちはひたすら降りていった。
「敵がいないな」
「さっきのクエレブレで、打ち止めのようですね」
もっと大量にデーモンがいると思っていたが。
「どうして、この奥が怪しいと?」
「デーモンの動きが、実に妙でした」
階段をゆっくりと降りながら、サピィは告げる。
なにも、デーモンは夜行性ではない。
その気になれば、いつでも街を襲うことだってできたはず。
しかし、襲撃はモンスターに任せきりだった。
「考えられることは一つです。彼らは、何かを守っている」
「例の呪われた岩か?」
「あれは、召喚装置に過ぎません。それよりもはるかに、触れてもらいたくないものが、この先にいます」
サピィは、ペールディネへの道へは向かわない。途中の道へ。
「ここが、終点のようですね」
表面がパイプに覆われた、扉の前に立つ。扉は、とてつもなく大きい。巨人でも眠っているかのようだ。
「これは、我が開けます」
シーデーが、コンソールを操作した。
人間の腕では決して開かなそうな扉が、自動的に横へスライドしていく。
だだっ広い無機質な空間が、目の前に広がっているだけ。
「来るぞ!」
俺は身構えた。
しかし、何も出てこない。
あるのは、血まみれのフルプレートメイルだけ。
首のカブトがないのが、より奇っ怪さを際立たせる。
その周辺には、レッサーデーモンの死体が大量に横たわっていた。
「俺が、レアアイテムを見つけるだと?」
サピィがすぐに、「違います」と訂正する。
「あれは、【禍宝】の【テン・リュー】!? こんなものが、どうしてこの世界に!」
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腕や脚の部分に、悪趣味で不気味な装飾が施されている。
生き物の皮を、金属板の上に直接貼り付けたかのような異様さである。
「なんだそのヨロイは? 初めて聞いたぞ」
「正式名称は、【Temperance Rew】と言います」
節度を守らせるために何度も世界をやり直させる、という意味合いだという。
「レアリティは、アーティファクトと対をなす、【オミナス】です」
不吉、その言葉を聞いて、俺は緊張が走る。
俺の父が暴走した剣も、オミナスだったのだ。
このヨロイを調べれば、父が暴走した謎が解けるかも知れない。
この世界のヨロイではない。魔界で製造された。しかし、あまりにも強力過ぎる上に、装着したものを殺すと言われている。
「極めてアーティファクトに近い力を持つレジェンダリで、幻のヨロイです。その力は、【チョーシュー】や【ムトー】に匹敵します」
「どうする?」
「もちろん、破壊します」
サピィが、ヨロイに一歩近づく。
「そうは参りませんな」
シーデーのものではない、フォート族独特の機械的な声がした。
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