レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

文字の大きさ
103 / 230
2-4 ブートレグを持ったハンターを、殴りに行きます

χ《カイ》の脅威

しおりを挟む
 エルトリは、フェリシアの一件で王妃と離婚依頼、王が失脚した。
 正室が幸運を運んでいたらしい。

 ヒューコは、王族に野心はなかった。
 その分、大臣以下が威張り散らしている。

「ヒルデが狙われたのは、必然のように思えてならない」
「私も、そう思っているのだよ」

 サドラー国王が、膝を付く。組んだ両手で額を支えた。

「これは、我が国に対する両国からの宣戦布告なのではないかと」
「だが、そう思わせることが敵の狙いかもしれない」
「その可能性が拭えない。この事件には、もっと大きい力が働いている」

 敵は、オフェーリアことフェリシアの存在を知っているくらいだ。

「ヴァイパー族も、関与しているのか?」
「わかりません。ですが、組んでいてもおかしくはない」

 エルトリとヒューコがおとなしいのは、ヴァイパー族という共通の敵がいるからだろう。
 彼らが壊滅すれば、いずれこの二国はサドラーに牙をむく。

「だから、ヒルデはどちらにも嫁ぎたくないと」
「どうせ戦争の道具にされるだけ。だったら、好きに生きたいですわ。だから商売を覚えて、国を発展させましたの」

 実際、ヒルデには商才があったようで、その辺の商人よりレベルが高いのでは?

 ヒルデをさらったのは、「国力を衰退させる目的があった」といえないか?

「そういえば、χカイという闇ギルド結社に、聞き覚えはないか?」
「χですと!?」

 突然、サドラー国王が立ち上がった。

「まさか。どうしてこんな小さな国にχが」
「どうしたんだ? 知っているのか?」
「χとは、闇ギルドの総括組織ですね」

 盗賊団なんてレベルではない。
 国家転覆などの重大犯罪の影には、必ずχの名があったという。

「我が娘が、χに睨まれていたとは。それだけ、サドラーが脅威ということか?」

 額に青筋を立てて、サドラー国王は鬼の形相になっていた。

「調査は進行中だ。近々、関わりのある人物が、今夜動くと睨んでいる」

 それまで、こちらでゆっくりしていてくれとのこと。

「ランバート殿、皆さんには引き続き、盗賊団及びχの調査を願いたい。報酬は弾みます! 娘を守ってくれ!」

 サドラー国王が、必死に訴えかけた。

「頭を上げてくれ。喜んで協力するから」

 もはや、国だけの問題じゃなくなっているからな。

 ハンターギルドへ向かう。

「ヒルデ姫、工事完了しました」

 どうやら、ポータルの修理は完了したようだ。

「行ってみましょう」

 作業員が一人ポータルの魔法陣へ入る。
 数分後、ペールディネの職員を伴って帰ってきた。

「シーデーッ!」

 そこには、シーデーの姿も。

「お変わりありませんか、シーデー?」
「フルーツ運搬係の方ともども、無事です。大事ございません」

 シーデーが、サピィに報告をした。

「よかった。王女、こちらが私の部下でシーデーです」
「フォート族の方ですね。よろしく」

 シーデーと握手を交わし、続いて王女は職員もねぎらう。

「ありがとうございます。後は、警備を怠らぬよう」

「はい」と、職員が警備隊と交代した。

「夜まで、かなり時間がありますね。国を見て回りますか?」
「そうさせてもらおうか」

 腹ごなしに、街の中を見ておきたかった。
 危険な場所なども把握しておきたい。

「しかし、小国とはいえ結構な距離を歩くぞ。足が大変なのでは?」

 王女が履いているのは、ヒールだ。散歩には不釣り合いである。

「ご心配なく、ランバートさん。わたくしも、力を手に入れましたので。お願いします、ほっ」

 ヒルデ王女が、両手を胸の前で組んだ。

 なんと、王女の前に魔法陣が現れた。

 バイク大のリスが、陣から召喚される。

「デカイな!」

 トウコが、ビックリしていた。

「この子に乗せてもらいますから」

 王女が、背中にちょこんと座る。

「かわいいなー」

 うっとりした顔で、トウコは破顔した。
 あまり物欲しそうにしないトウコが、こんな顔をするとは。 

「召喚か。【シャーマン】のスキルだな?」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった! 覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。 一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。 最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!

処理中です...