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2-5 重要人物を、姫騎士が殴りました
χ《カイ》の作戦:サピィサイド
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一方その頃、サピロスは虚無っていた。
「だけどよお、ダミアーニの小娘に比べたらゼンの方が美人だよな!」
「控えめに言っても最高だろ、ウチのゼンは! 人間の血が混じっているが、それが逆によかった!」
また、ゼンの自慢話が始まってしまったからである。
「あの、お話にまだ続きがあるようなのですが」
「おおっ、そうだった。χはダミアーニの娘を、ダミアーニにぶつけるつもりだったのさ」
オミナスを使って洗脳したジェンマを、ダミアーニ卿と戦わせることだった。
そのためには、戦力がいる。
それで、ペールディネなどの「レアを集めている国」を襲撃していいたのだった。
「ゼンは直接対決にこだわった。しかし、ゼンに与えられた仕事は、ブートレグの開発だった」
ブートレグの名まで、出てくる。
「あなたが、ブートレグの製造元だったのですね?」
「χのヤツら、『才能があっても、ゼン自体に戦う力はねえ』ってうるさくてよ。ゼンは渋々承諾した。戦えねえのは事実だったからな」
戦って死んだヴァイパー族の亡骸を使って、ブートレグは続々と作られたらしい。
「不本意だったがな! ゼンの鍛冶能力を認めたんだろうよ」
しかし、ジェンマ……正確には「ジェンマに取り憑いていたオミナス」は、ランバートが倒した。
「まさか、あんな反則技を持ったヤロウがいたとは」
「オミナスが通じないとわかって、我々は作戦変更を余儀なくされた」
だから、直接攻撃に移ったのか。
「こちとら、自分たちでも戦えるってところを証明してやるって言って、今回の襲撃を開始した。しかし結果は、このザマだ」
いくら才能があっても、ゼンは戦闘に慣れていないのかもしれなかった。
「お粗末な作戦でしたね。高い戦力のある者たちを向かわせた割には……」
ポータルをたやすく破壊できる知恵を持っていながら、次は派手に暴れて見せている。
「まさか?」
そこで、サピロスに嫌な予感がよぎった。
「看守さん、ポータルが破壊された当時の様子などを教えていただけますか?」
ギルドの看守は、ハンターギルドのことも詳しいだろう。
「ああ。多方面に大量の依頼が来て、ハンターたちが出払ったスキを狙われたんだ」
「そうですか。ありがとうございます」
ついでだからと、ハンターの向かった依頼の内容とルートを確認する。
どれも、大した依頼ではなかった。
しかも、ムダに時間だけがかかる依頼ばかり。
明らかに、足止め目的だった。
そこへポータルの破壊が行われている。
「今回の犯行とポータル襲撃事件に、共通項があると思えてなりません」
「なぜです、姫様? 王族の方々は皆、機動馬車や車で移動なさっています。ポータルを使う者は、せいぜいハンターくらいです」
貴族・王族たちは、用心深い。得体の知れない技術に頼ることを嫌う。
「へっ。お前らがいくら知恵を絞ったってムダだぜ」
「あなたは黙っていてください」
「ちぇえ、人が身動き取れねえってのをいいことに!」
「……今、なんとおっしゃいました?」
「ああん? 身動きが取れねえって言ったんだよ!」
サピロスはハッとなる。
前回の作戦は、ハンターを各方面へ散らした。今回は、逆なのでは?
「今、世界中のVIPが、この城に集まっています。一網打尽にするいいチャンスだと思いませんか?」
「χの狙いがそれだと、姫はおっしゃるので?」
会議中、腕の立つ自分たちをこちらに足止めすることが目的だったとすれば?
「この呪術師は、オトリだというのですかな?」
「そう考えるのが、必然だと思います」
もし彼女が本当に重要人物なら、とっくにχが救出に来ているはずだ。
どんな手段を使おうと。
しかし、一日経っても誰も助けに来ない。
それでも、誰か強い人物が見張っていなければならぬ。
例えば、サピロスのような強いハンターが。
「二手に分かれたのは、正解だったかも知れませんね」
「だけどよお、ダミアーニの小娘に比べたらゼンの方が美人だよな!」
「控えめに言っても最高だろ、ウチのゼンは! 人間の血が混じっているが、それが逆によかった!」
また、ゼンの自慢話が始まってしまったからである。
「あの、お話にまだ続きがあるようなのですが」
「おおっ、そうだった。χはダミアーニの娘を、ダミアーニにぶつけるつもりだったのさ」
オミナスを使って洗脳したジェンマを、ダミアーニ卿と戦わせることだった。
そのためには、戦力がいる。
それで、ペールディネなどの「レアを集めている国」を襲撃していいたのだった。
「ゼンは直接対決にこだわった。しかし、ゼンに与えられた仕事は、ブートレグの開発だった」
ブートレグの名まで、出てくる。
「あなたが、ブートレグの製造元だったのですね?」
「χのヤツら、『才能があっても、ゼン自体に戦う力はねえ』ってうるさくてよ。ゼンは渋々承諾した。戦えねえのは事実だったからな」
戦って死んだヴァイパー族の亡骸を使って、ブートレグは続々と作られたらしい。
「不本意だったがな! ゼンの鍛冶能力を認めたんだろうよ」
しかし、ジェンマ……正確には「ジェンマに取り憑いていたオミナス」は、ランバートが倒した。
「まさか、あんな反則技を持ったヤロウがいたとは」
「オミナスが通じないとわかって、我々は作戦変更を余儀なくされた」
だから、直接攻撃に移ったのか。
「こちとら、自分たちでも戦えるってところを証明してやるって言って、今回の襲撃を開始した。しかし結果は、このザマだ」
いくら才能があっても、ゼンは戦闘に慣れていないのかもしれなかった。
「お粗末な作戦でしたね。高い戦力のある者たちを向かわせた割には……」
ポータルをたやすく破壊できる知恵を持っていながら、次は派手に暴れて見せている。
「まさか?」
そこで、サピロスに嫌な予感がよぎった。
「看守さん、ポータルが破壊された当時の様子などを教えていただけますか?」
ギルドの看守は、ハンターギルドのことも詳しいだろう。
「ああ。多方面に大量の依頼が来て、ハンターたちが出払ったスキを狙われたんだ」
「そうですか。ありがとうございます」
ついでだからと、ハンターの向かった依頼の内容とルートを確認する。
どれも、大した依頼ではなかった。
しかも、ムダに時間だけがかかる依頼ばかり。
明らかに、足止め目的だった。
そこへポータルの破壊が行われている。
「今回の犯行とポータル襲撃事件に、共通項があると思えてなりません」
「なぜです、姫様? 王族の方々は皆、機動馬車や車で移動なさっています。ポータルを使う者は、せいぜいハンターくらいです」
貴族・王族たちは、用心深い。得体の知れない技術に頼ることを嫌う。
「へっ。お前らがいくら知恵を絞ったってムダだぜ」
「あなたは黙っていてください」
「ちぇえ、人が身動き取れねえってのをいいことに!」
「……今、なんとおっしゃいました?」
「ああん? 身動きが取れねえって言ったんだよ!」
サピロスはハッとなる。
前回の作戦は、ハンターを各方面へ散らした。今回は、逆なのでは?
「今、世界中のVIPが、この城に集まっています。一網打尽にするいいチャンスだと思いませんか?」
「χの狙いがそれだと、姫はおっしゃるので?」
会議中、腕の立つ自分たちをこちらに足止めすることが目的だったとすれば?
「この呪術師は、オトリだというのですかな?」
「そう考えるのが、必然だと思います」
もし彼女が本当に重要人物なら、とっくにχが救出に来ているはずだ。
どんな手段を使おうと。
しかし、一日経っても誰も助けに来ない。
それでも、誰か強い人物が見張っていなければならぬ。
例えば、サピロスのような強いハンターが。
「二手に分かれたのは、正解だったかも知れませんね」
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