レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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2-6 最終兵器を、殴りに行きます

ヴァイパーの女王

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 ヴァスキーの機能が、完全に停止した。

 そこにあるのは、首のない、手足の付いたヘビの巨体のみ。

 俺たちは、成し遂げたんだ。

「やったのですね?」

 ヴァスキーの肩に、人影がある。

 サピィだ。エネルギー体へと変形していたサピィが、元の姿にもどっていく。

「無事だったか」
「ええ。なんとか」

 とはいえ、消耗が激しそうだ。

「お嬢」と、バイク状態のシーデーが駆けつけた。サピィを無理やりシートに乗せて、ヴァスキーの身体を降りていく。

「ありがとう、シーデー」

 サピィが地上に戻った途端、ヴァスキーの肉体がドロドロと溶けていった。沸騰しながら、ヘドロのような形へ崩れる。

「ランバート、無事か?」

 サモエドに乗って、トウコが俺を迎えに来た。回復魔法を俺たちへと施す。

「平気なの、サピィ?」

 フェリシアが、サピィの手を取って、魔力を分け与えた。

「これを使え」

 魔力を回復させる効果のあるダイヤの杖を、サピィへと渡す。
 少しでも回復させなくては。
 フェリシアの魔力補充でも、追いつかない。

「ありがとう、ランバート」

 杖で魔力を補充しながら、サピィがつぶやく。

「何がだ?」
「ヴァスキーとゼンを、完全に切り離してくれたでしょ? ランバートが機転を利かせてくれなかったら、わたしはゼンもろともヴァスキーを」

 サピィは、ゼンも巻き添えにしてしまうことも覚悟していたらしい。

 やはり、フェリシアがためらっていたのは本当だったんだ。

「だろうと思ってな。ヴァスキーの首をはねてみた」

 頭と身体の接続を切り離してしまえば、ゼンを巻き込まなくて済む。

 そう考えて試してみたが、こうも簡単に切り離せるとは。

 ただのDディメンション・セイバーではびくともしなかったのに。

 この刀のおかげか。

「死ぬのは、能面だけでいい。そう考えたからな」
「おかげで能面のいる頭部だけを、狙い撃ちできました。ありがとうございます」

 俺は、首を振った。

「礼には及ばない。できることをしたまでだ」

 役に立てただろうか、俺は。

「しかし、敵の全容は……」

 能面は、死んだ。

 奴らχカイの目的が何だったのかは、結局わからずじまいだ。

「本当に、無機質による世界支配を企んでいたのか。あるいは、大きな力に動かされていたのか。わたしは、犯人に当たりをつけていたのですが……」
「誰だ?」
「ファウストゥスです」

 そいつは、魔界の錬金術師だという。

「ランバート・ペイジに、魔王サピロス」

 俺の視線の先に、ゼンがいた。
 黒いマスクをしているが、ノドは治っているようだ。

 二対のヘビが、二匹の魔物に分離している。
 赤い方はマッチョのヘビ人間剣士に。
 青い方は優男の魔術師となった。
 二匹とも、ゼンの足元でかしずいている。

 フェリシアとトウコが、臨戦態勢になった。

 俺は二人の前に立ち、「大丈夫だ」と告げる。

 実際、ゼンに敵意は見られない。

 フェリシアたちも、落ち着く。

「我が名は新たなるヴァイパーの魔王、ゼン・ハック。ヴァスキーの力を奪い、ヴァイパーを統べる女王となった。全てのヴァイパーに代わり、お前たちの働きに感謝する」
「礼なんて、不要だ。俺たちは、お前に協力したつもりはないからな」
「それでも、事態が収束したことに変わりはない。我らヴァイパーは、力を蓄えるために魔界へと戻る」

 力を温存しつつ、χカイなどの世界の混沌を企てる組織を洗い出すという。

 ゼンが、何かを投げてよこす。見ると、能面の頭部だ。ヘルメットだけだが。

「そこに、情報があるかも知れぬ。我々は、コイツをいただこう」

 ヴァイパーたちが持っているのは、能面のバックパックである。

「次にあったときは敵かもしれんし、味方かもしれん。しかし、また会える気がする。ではさらばだ」

 ゼンが背を向けて、去っていく。

『今度は腕試しだ』

 赤いマッチョヘビが後に続いた。

『じゃあな。また会おうぜ』

 青いヘビ魔術師も二人の後を追う。
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