レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

文字の大きさ
154 / 230
3-3 大人数で、殴りに行きます

フロアボスの引退先

しおりを挟む
 フロアボスって引退できるのか? まずはそれが疑問だった。

「どうして、引退を考えた?」
「我々では、ペトロネラを止められません。逃げるのが、手一杯でした」

 ペトロネラの目を盗んで逃げ出すのが、やっとだったらしい。

「引退して、どうするんだ?」
「普通のモンスターに戻ります。あるいは、あるじルエ・ゾンの元へ戻るか」
「じゃ、いいところがある。まずは、ルエに挨拶だな」

 俺は振り返り、「悪いんだが、席を外す」と騎士団に相談する。

「構わない。一大事だからな」

 騎士団長エトムントも承諾してくれた。

「我々は、先行していいか? 危ないことはしない。リュカオンたちの逃げてきたルートを逆走して、抜け道が他にもないか探してみる」
「ああ。ペトロネラの兵隊に感づかれないように注意してくれ」

 ココに来て、バラバラに動くことになるとは。危険な気もするが、ヘタに調査を長引かせてもいけない。

「道案内役を、一匹置いてきましょうか?」

 リュカオンの長が、打診してくる。

「結構だ。我々だって、騎士団だ。自分の身ぐらい自分たちで守るさ」
「では忠告だけ。もはやこの塔は、ほぼペトロネラのものです。すべての階層ボスが、ペトロネラの部下に取って代わられました。二層に行くことさえ、困難を極めるでしょう」

『回復の泉』のような安全地帯を除けば、ペトロネラの支配下と思っていいらしい。

「肝に銘じておくよ。ではランバート、二層で落ち合おう。我々は、回復の泉までのルートを確保しておく」

 エトムントは、先行して獣道を進む。

「オイラも、付いていくことにすらあ」

 ビョルンが、騎士団のサポートに回ってくれるという。

「心強いな。頼めるか?」
「実はよお、オイラはオイラで、用事があるんだよな。だから、騎士団に死なれたら困るんよ」
「そうか。じゃあお願いする」
「任されてー」

 ビョルンは、騎士たちの後をついていった。

 他に、俺はフェリシアとシーデーに頼みごとをする。

「フェリシア、シーデー、頼みがある。一層でルーオンたちのレベル上げでもして、時間を潰しておいてくれ」

 ルーオンたちには、わざと初心者を装って探索してもらうつもりだ。
 しかし、ルーオンたちには壁役がいない。
 遠距離攻撃する手段もなかった。
 フェリシアとシーデーが適任だろう。
 トウコが残ることも視野に入れたが、それでは回復薬見習いのコネーホが育たない。

「わかったわ」

 俺たちが行こうとすると、案の定ルーオンが抗議してくる。

「オレは十分強いぞっ」
「それは私たちの足を引っ張らなくなったときにいいなさい」
「……ちぇー」

 さすがにフェリシアの実力はわかるのか、ルーオンはおとなしくなる。特にシーデーとフェリシアは、わかりやすく強いからな。

「じゃあ頼んだ」

 俺はフェリシアたちと一旦別れて、塔を出た。
 ハイエルフのルエ・ゾンがいる館へ。

 館に入りやすいように、リュカオンたちは身体を子犬サイズに変えた。

「おお、かわいいなぁ。まあ、ユキオには負けるけどな!」
 ユキオとは、トウコが飼っている召喚獣のことだ。サモエド犬である。 
「ほほう。引退したいと?」
「はい」

 リュカオンは、主のルエに塔の事情を説明した。

 ほとんどのフロアが、堕天使ペトロネラによって侵食・汚染されているとか。これまでの【災厄の塔】とは、別の施設だと考えたほうがいいという。

「もはやペトロネラの支配は、我々の手におえません。このままでは物量で押されて、我がリュカオン族も死に絶えます」

 自身の種の保存さえ危ういほど、ペトロネラは危険らしい。相手を洗脳するのだ。改造など、さらに残虐な実験までされてしまうかもしれない。そう考えると、逃げるのが妥当か。

「まいったな。最強のリュカオンでさえ止められんとは」

 アゴに手を当てて、ルエは考え込む。

「ただ、汚染を止める手立てはあります」

 聞けば、元いたフロアボスを殺した際、奇妙な緑色のオーブを配置していたらしい。
 このオーブによって、ペトロネラの配下たちは力を得ているという。これを各層で破壊すれば、少なくてもその階層はもとに戻るそうだ。

「で、そのオーブの大きさはどれくらいなのです?」
「人の頭くらいでしょうか? それが、塔に生えてきた触手に覆われています」

 オーブを破壊するには、フロアボスを倒す必要があるという。
 フロアボスとオーブは生命が繋がっている。ボスさえ倒せば、オーブも勝手に力を失うらしい。

「現在、元に戻っているのは一層だけです。また、あなた方が破壊した魔石は、オーブの増幅装置です。あれが埋め込まれると、塔はまたペトロネラの魔力が浸透するところでした」

 リュカオンが、「ありがとうございます」と礼を言ってきた。

「俺は、自分のすべきことをしたまで。礼には及ばない」

 彼らの親玉を殺害したのは、俺である。感謝されても、なにか違う気がした。

「いえ。我々では同族である父を殺せなかった。あれは、感謝していると思うております」
「そうか」

 とはいえ、もう彼らではフロアボスとして活動できないだろう。

「わかった。出ていいぞ」
「ありがたき幸せ」
「その代わり、住処は自分たちで探せ。私はもう、関わらぬ」

 冷たい言い方のように聞こえるが、彼なりの親切心だ。ルエの影響力があると思われると、リュカオン一家に危害が及ぶかもしれない。そう考えてのことだろう。

「それなんだが、俺に考えがある」

 俺はリュカオンたちを、アイレーナについてきてもらうことにした。

「待てよ。モンスターってポータルを抜けられないんだよな」

 たしか、魔物はポータル移動はできない仕組みだったはずだ。

「いい。リュカオンの転送は、私がやろう。場所を指定しろ」

 コナツの工房……といいかけて、俺は首を振る。

 いくら言葉を話せて意思疎通も可能といえど、いきなり街のど真ん中にリュカオン一家がドーンと転送されてきたら、何事かと思う。下手をすると、ハンターに討伐されるかもしれない。

「街の外へ頼む。後は、俺たちが誘導するから」

 俺たちが先行して、アイレーナの街へ向かう。五分後に、リュカオンたちを召喚してもらう予定だ。

 きっちり五分後、リュカオンたちが街の外に現れた。俺たちが連れ添っているのを知ると、門番も安心する。

「ワケアリなんだ。彼らを街へ入れてあげてくれないか?」
「ランバートの頼みなら、断れないよ」

 行きな、というので、門番にリュカオンの群れを街へ入れてもらう。

 続いて、コナツの工房へ。

「こりゃまた、ドエライい奴らを連れてきたなぁ」
「彼らを番犬として、飼ってもらいたい」

 事情を説明して、コナツに引き取ってもらうつもりだ。

「俺たちは長いこと塔に上り続ける。その間、どうしてもアイレーナは手薄になってしまう。だから、護衛役にどうかと思ってな」
「ほほう。このオオカミたちに報酬は?」

 コナツが尋ねると、リュカオンたちは首を振る。

「定期的に食料と、寝床さえいただければ」
「……ギルドとの共有財産としてなら、面倒を見ていいぜ。さすがにオレらでも、これだけの数は世話しきれねえ」

 アイレーナのギルドとも相談し、リュカオンを世話してもらうことになった。

「ありがとうございますランバート殿」
「いいって。じゃあ、俺は塔に戻るとするよ」




 また俺たちは、ヒューコへ逆戻りする。



「どうだ、調子……は?」

 災厄の塔では、なにやら物々しい状態になっていた。

 とりあえず、魔物退治をしていたらしいが。

「散々よ。見てよアレ」

 フェリシアが呆れ顔で、『ある意味での』惨劇を親指で指し示す。



 ルーオンが、涙目半裸のコネーホを押し倒していたのである。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...