レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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3-6 堕天使を殴りに行きます 後編

災厄の塔 浄化完了

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 ビョルンの身体が、壊れた人形のように倒れ込む。

 リュボフが、ビョルンを抱きかかえた。

「あれ、オイラどうしちまったんだ?」
「あああ、ビョルン!」

 正気に戻ったビョルンを確認して、リュボフは彼を抱き寄せる。

「ちょっと、みんな見ているぜ。遠慮しておくれよ」

 困り顔でビョルンはリュボフに言う。

 だが、リュボフはまったく離れようとしない。

「まったく、どうなっちまったんだ? オイラてっきり死んじまったと思ったんだが?」

 ビョルンが、肩をすくめる。

 リュボフはとても、話ができる状態ではない。

 代わりに、俺が説明をした。

「そっか。俺のオヤジって、神様だったのか」

 今日の夕飯に好きなものが出なかったかのようなリアクションを、ビョルンが見せる。

「身寄りがないから、てっきり捨て子かと思ったぜ」

 天涯孤独の彼にとって、肉親の存在とはさして問題ではないらしい。

「でもさ、リュボフを無事に助けてくれたなら、酒の一杯でもおごってやらんでもねえな」

 ビョルンにとっては、新しい家族のほうが大事なようで。

「ありがとうよ、ランバート」
「俺はなにも。当たり前のことをしたまでだ」

 ジュエルで人が救えるなら、それに越したことはない。

 本来フィーンドジュエルとは、そういうために作られたはずだ。

 サピィが作ったものなら、なおさら。

「礼を言うなら、サピィだな。ありがとうサピィ。おかげで仲間を救えた」
「いいえ。ビョルンを救えたのは、あなたの力です」
「俺が? まさか

 そんな力が、俺にあるとは思えない。【リザレクション】だって、【サムライ】の俺より【聖女】のリュボフの方が高レベルだ。

「あなたは、新しいジュエルを自力で作り出す力があるようですね」
「新しいジュエルを、生み出す?」
「はい。あなたが作り出したジュエルを、わたしたちは作った覚えがありません。父である先代落涙公・ギヤマンでさえ教わっていませんよ」
「ならば、俺にはジュエルを作り出す能力が備わっていると?」
「具体的な製法などは、わかりません」

 が、少なくともジュエルがあなたの魔力かスキル【秘宝殺しレア・ブレイク】に関連している可能性は高いらしい。

 ルエ・ゾンに調べてもらうか。

「さあ、帰ろう」
「ああ。それなんだがな。オイラたちは残る」

 ビョルンは、リュボフの肩を抱き寄せた。

「そうか」

 今ビョルンたちが離れたら、塔の管理者がいなくなってしまう。

「リュボフは、それでいいのか。オレサマが管理者を引き継いでも構わないが」
「あんたの力じゃ、マイナスに作用してしまうわ。モンスターだらけになっちゃう」

 やはり、ダークエルフと聖女では、塔の内部に漂う魔力の構造が変わるらしい。

「というわけでエトムント、あんたの妹と結婚させてくれ」

 リュボフの兄であるエトムントの前に、ビョルンがひざまずいた。

「あたしからも、お願い」

 恋人であるリュボフも、兄の前に。

「二人共、頭を上げてくれ。まずは塔の浄化から先だ。それからは、好きにしていい」

 兄から正式に許可が降りて、ビョルンとリュボフが手を取り合う。

「浄化の秘術だが、ビョルンにも手伝ってもらおう」
「オイラが? オイラには、聖女サマみたいな力はないぜ」
「お前さんにはな。だが」

 ルエ・ゾンは、ビョルンの心臓に指を当てる。

「新たに心臓を動かしているそのジュエルがあれば、可能だ」

 そうか、あのジュエルの性能は、【修復】だ。

 ならば、塔の修復だって可能だろう。

「わかった。行くぜリュボフ」
「ええ」

 ビョルンたちは塔の中心部、ペトロネラが陣取っていた台座に向かった。

 そこには、塔の各階層にあった大きな宝珠が。

 二人が宝珠に触れる。

「……災厄の塔よ。今一度、役割を果たせ」

 リュボフが、塔に呼びかけた。

 宝珠に、光が戻っていく。

 堕天使の瘴気に汚染されていた魔物たちが、自然界の力を得て活性化していった。

「これで、塔は正常に戻ったわ」

 だが、これでビョルンとはお別れである。
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