レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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4-2 復興中の街を襲ってきた敵は、殴ります

クリムの罪

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 写真は、ゾーイが自分の目で映し出したものだという。

「ウソだぞ! クリムが街を襲うなんて!」

「しかし映像は事実よ、ランバート・ペイジ。彼は……クリム・エアハートはわが母を撃った」

 母親の敵討ちのために、ゾーイはクリムを追っているのか。

「クリムは、なにか弁解の言葉を残しているか?」

「何も。母を殺害してそのまま逃走したわ。この街も壊滅させて」

 初めてゾーイから、人間らしい感情が見て取れる。

「我々も彼を追っているけど、もしあなたたちがクリム・エアハートを見つけたら、ワタシに差し出して」

「断ったら?」

「すべてのセイクリッドが、あなたの敵になるわ。特に、そちらの魔法さんは。我々は天使だから、魔族には容赦しない」

「わかった。交渉は決裂だな!」

 俺が宣言すると、セイクリッドたちが一斉に俺に銃を向けた。

「あなたは、自分が何を言っているか、わかっているの?」

 ゾーイが、天使の羽を自律兵器として展開する。

「俺は、友人をお前たちなんかに売ったりはしない。またそのためにサピィを天秤にかけたりもしない。それだけだ。だが、あんたと敵対するつもりもない」

「というと?」

「情報が必要ならくれてやる。あとは勝手にしろ」

 俺たちは全力で、クリムを守るまで。

「エアハートを発見するまで、共闘しろと?」

「そうはいわない。お互い、手出し無用と行こうじゃないか」

 提案を聞きながら、ゾーイは冷笑する。

「ずいぶんと強気ね。どうして?」

「あんたを信じているからだ」

 ゾーイが、怪訝そうな顔をした。

「悪びれているが、もし本当にあんたが卑劣な極悪人なら、グレースを交渉材料に使うはずだ」

 一般人のグレースなら、拘束しようにも手がかかるサピィよりは御しやすかろう。クリムの身内という点も、人質としては有効である。

「グレースは元気に店をやっていた。つまりあんたらにとって、グレースは用済みであると、俺は判断した。違うか?」

「ええ。彼女は妹ではあっても、クリム・エアハートと血が繋がっているわけじゃない。クリム・エアハートという名も、彼があの家に引き取られてからつけられたものだった」

 それで、ゾーイはエアハート一家からは情報を引き出せないと睨んだわけか。

 育ての親であるからこそ、クリムはこれ以上迷惑をかけられないと思ったのだろう。何も痕跡を残していなかった。クリムはもう二度と、エアハートの家に帰るつもりはない。

「そんな人間を拘束したところで、どうせ彼は見殺しにすると我々は考えたわ。あなたには有効かもしれないけれど」

「そうなったらどうなるか、お前たちならわかるはずだ」

 おそらく、ここにいる全セイクリッドを相手にしても、俺たちの方が間違いなく強い。

「だから、交渉は決裂だと?」

「ああ。俺たちのやることに関わるな。クリムは、俺たちで守る。ただし、ちゃんとルダにむについての事情を聞く」

「信用すると思っているの?」

「してくれ、としか言えない」

 ゾーイは、呆れたようにため息をつく。

「クリムが発見され次第、あなたたちとは敵になる。それは覚えておきなさい」

「わかった」

 銃を引っ込めてもらい、俺たちはドームを後にした。

「はあ。ペールディネに戻って、グレースの様子を見てこよう」

 これからはおそらく、セイクリッドとも敵になる。

「サピィ、すまない。お前を守るためなら、ああするしかなかった」

「謝るのは、わたしの方です。あなたに危険な選択をさせました」

「いいんだ。どの道対立していたんだ。時期が早まっただけさ」

 トウコが、俺に飛びついてきた。

「ランバート、お前かっこよかったぞ!」

「そうでもないさ。立場が不利になったんだから」

「いいんだって! あんな奴の言いなりなんて、ゴメンだったからな!」

 フェリシアも、うなずいている。

「そうね。彼女たりのルールに、がんじがらめにされていたかもしれない。あなたは正しい判断をしたわ」

「ありがとう、フェリシア」

 転送ポータルでペールディネに向かうと、大変なことが起きていた。

 グレースの店が、閉まっていたのである。

 貼り紙には、「移転」と書いてあった。

「そんな。まさか!」

 ゾーイが本気を出したのか?

 俺は、アイレーナに自身を転送した。故郷なら、手がかりがあるかも。

「グレースどこだ!?」

「ここよ? どうしたのランバート?」

「へ?」

 なんとグレースは、コナツ工房の斜め向かいに店を出していた。

「お前、なんだよ急に!」

「いやねえ。前の家に戻ってきただけじゃないの」

 ダンナと相談して前の店を売り、旧家に店を建て直したという。

「ここは、母の故郷でもあるし、終の棲家として住んでもらおうって」

 そう言うが、本心はクリムの帰りを待っているのかもしれない。

 血はつながっていなくても、心がつながっているから。

「ありがとうグレース。クリムも、きっと帰ってくるさ」

「そうかな? ありがとうランバート。営業は明日からだけど、食べていってちょうだい」

 涙ぐみながらも、グレースはエプロンを締め直す。


 今日は、グレースの店で夕飯をもらうことにした。



 翌日から、俺たちはリックと共に、クリム捜査にあたる。

「ここが、ドローンが撃ち落とされたという場所ですね……ランバート!」

 サピィが、地下道に続く道を指す。

 発見したのは、ハンターたちの死体だった。

 俺に、因縁をふっかけてきた奴らだ。

 彼らは、胴体を真っ二つにされて死んでいた。

「こんな殺し方ができるやつを、俺は知っている」

「ジェンマですね」

 サピィも、俺と同じ推理にたどり着いたようだ。

 どんどん、クリムの立場が悪くなっている。

「ちょっといいか?」

「どうした、リック?」

 俺は、リックに呼び出された。

「実はドローンの破壊箇所が、妙なんだ」

「なにがあったっていうんだ?」

「これを見てくれ」

 端末に内蔵されているカメラで、リックがドローンの残骸を見せる。

「カメラの位置は、ここなんだ。機体の中心にある。しかし、ドローンは後ろから撃たれて壊れてる」

 ギルドも気づいていると思うが、どんな判断を下すかはわからない。

「リック、お前はどう睨んでいるんだ?」

「ハンターギルドの中に、クリムの殺害を依頼したやつがいるんじゃないかと」
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