レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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4-4 抜け駆けした魔王を、殴ります

秘密の通路へのカギ

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 俺の父「ギルバート・ペイジ」は、レアアイテムの調査中、オミナスに侵食された。

 その武器こそ、【報復刀 ウェイジス・エッジ】である。

 味方のハンターを手に掛け、父はハンターギルドの手によってハチの巣にされたのだ。

 父を撃ち殺したうちの一人が、クリムの父親である。彼は、父の親友だった。俺の父親に、とどめを刺した人物でもある。

 オヤジが調査隊に処理されてから、ずっと見つかっていなかった。

 その刀とファウストゥスには、なんらかの関係があるらしい。

「ランバート。このカギの正体がなんなのか、わかりました」

 サピィが、カギを持って現れる。

「ランバート・ペイジ、そのカギを、本当にクリム・エアハートが?」

 顔をしかめながら、ゾーイが俺に聞いてきた。

「ああ。間違いなく、クリムが持っていたものだ」

「海水に沈んでいたみたいに、ボロボロじゃないの」

 ゾーイが、疑いの目を俺に向ける。

 錆びついているように見えるが、これでもちゃんとした形なのだという。

「ディンプルキーのような仕組みか?」

「いえ。この形で完成しているみたいですね」

 凹凸ではなく、このカギ自体が大事なのだそうだ。

「どこのカギだったんだ?」

「セグメント・ゼロ最深部にある、高次元空間です」

 俺は、息を呑む。

「そんな空間に、入っていく必要があるのか」

「はい。かなり魔力的な負荷がかかりますが」

 高次元な術式空間は、普通の人間には入れない。また魔物や天使なども、入るのをためらう。魔力の掃き溜めのような場所であり、彼らはそこに異臭を感じるからだそうだ。

 ましてセグメント・ゼロに沈殿する魔力となると、ドラゴンの残骸クラスだろう。とてつもない負担を強いる。

「わたしはマギ・マンサーの力があるから、平気です。しかし、五分も入っていられないでしょうね。それ以上入ると、魔力が骨折レベルで負傷します。魔力と肉体を繋ぐ回路がボロボロになるといいますか」

 サピィでさえ、そこまで深刻なダメージを受けてしまうという。

「かなり危険な空間に、なにか重大なものを隠している可能性があります。それこそ」

「ウェイジス・エッジがあると?」

「可能性は高いですね」

 そんな思いまでして、取りに行く必要があるのか?

「やめろ。サピィに危険が及ぶ」

「ファウストゥスに繋がるのであれば、クリム氏を手助けできるかもです」

「しかし、俺はサピィも大事だ」

「とはいえ、このままでは」

 俺とサピィの押し問答が続く。

「ふたりとも、やめないか」

「そうよ。痴話喧嘩ならヨソでしてちょうだい」

 トウコとフェリシアが、呆れ果てた。

「やれやれ。お嬢はこう言えば聞きませんからな」

 シーデーも、頭を抱える。

 オレたちの口論を止めたのは、ゾーイだ。

「ワタシが行くわ」

「ゾーイが?」

「これでもワタシは、セイクリッドよ。神が遣わしたアンドロイド。しかも神の子であるワタシなら、魔力の干渉なんて微量で済むわよ」

 俺はサピィに「そうなのか?」と聞いた。

「大丈夫です。神の子というのは、つまり【聖女】ですからね。リュボフさんと同じ力はあると思っていいでしょう」

 ならば、術式空間に入る素質は充分あるか。

「セイクリッドでも、オミナスの影響は受けてしまうぞ。キミの母上がそうだったろう?」

 彼女の母親は、オミナスに侵食されてしまっている。それを殺害したのは、サピィの親友であるジェンマだ。

「我がガードに回りましょう。幸い我なら、オミナスの干渉は受けませんので」

 シーデーが、ゾーイと一緒に術式空間へ入るという。

「神の子ではないあなたが入っても、足手まといよ」

「なにをおっしゃる。今や我の骨には、ドラゴンの素材が使われているのですぞ。侵食できるなら、なさってみなさいというわけですよ」

 今度は、シーデーとゾーイが言い争いに。

「もーっ! 面倒ね! 全員で行きましょ!」

 フェリシアが、結論付けた。

「大丈夫なのか?」

「あのねえ。アタシたちは一応ハイクラスよ。魔術式空間への入り方なんて、心得ているわ。それに、術式空間って、言えば結界でしょ? トウコのアデプトの力でどうにかなるんじゃないの?」

「まさか、空間を破壊しながら進む、ってのか?」

 ミスティックアデプトの能力には、相手のガードを崩すスキルがある。
 それは、魔法障壁でも同じことが可能だ。
 だからこそ、虚弱公とも戦えたと言える。

「ええ? できないの? 問題あるの?」

 肩をすくめながら、フェリシアが聞いてきた。

「盲点でした。効力を弱らせて入るって発想が、初めからありませんでしたから」

 術式空間は、デリケートな場所だ。
 壊せばなくなってしまうと思っていたから、サピィも破壊に考えが及ばなかったという。

「やってみる価値はあるかと」

「決まりね!」
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