214 / 230
4-4 抜け駆けした魔王を、殴ります
秘密の通路へのカギ
しおりを挟む
俺の父「ギルバート・ペイジ」は、レアアイテムの調査中、オミナスに侵食された。
その武器こそ、【報復刀 ウェイジス・エッジ】である。
味方のハンターを手に掛け、父はハンターギルドの手によってハチの巣にされたのだ。
父を撃ち殺したうちの一人が、クリムの父親である。彼は、父の親友だった。俺の父親に、とどめを刺した人物でもある。
オヤジが調査隊に処理されてから、ずっと見つかっていなかった。
その刀とファウストゥスには、なんらかの関係があるらしい。
「ランバート。このカギの正体がなんなのか、わかりました」
サピィが、カギを持って現れる。
「ランバート・ペイジ、そのカギを、本当にクリム・エアハートが?」
顔をしかめながら、ゾーイが俺に聞いてきた。
「ああ。間違いなく、クリムが持っていたものだ」
「海水に沈んでいたみたいに、ボロボロじゃないの」
ゾーイが、疑いの目を俺に向ける。
錆びついているように見えるが、これでもちゃんとした形なのだという。
「ディンプルキーのような仕組みか?」
「いえ。この形で完成しているみたいですね」
凹凸ではなく、このカギ自体が大事なのだそうだ。
「どこのカギだったんだ?」
「セグメント・ゼロ最深部にある、高次元空間です」
俺は、息を呑む。
「そんな空間に、入っていく必要があるのか」
「はい。かなり魔力的な負荷がかかりますが」
高次元な術式空間は、普通の人間には入れない。また魔物や天使なども、入るのをためらう。魔力の掃き溜めのような場所であり、彼らはそこに異臭を感じるからだそうだ。
ましてセグメント・ゼロに沈殿する魔力となると、ドラゴンの残骸クラスだろう。とてつもない負担を強いる。
「わたしはマギ・マンサーの力があるから、平気です。しかし、五分も入っていられないでしょうね。それ以上入ると、魔力が骨折レベルで負傷します。魔力と肉体を繋ぐ回路がボロボロになるといいますか」
サピィでさえ、そこまで深刻なダメージを受けてしまうという。
「かなり危険な空間に、なにか重大なものを隠している可能性があります。それこそ」
「ウェイジス・エッジがあると?」
「可能性は高いですね」
そんな思いまでして、取りに行く必要があるのか?
「やめろ。サピィに危険が及ぶ」
「ファウストゥスに繋がるのであれば、クリム氏を手助けできるかもです」
「しかし、俺はサピィも大事だ」
「とはいえ、このままでは」
俺とサピィの押し問答が続く。
「ふたりとも、やめないか」
「そうよ。痴話喧嘩ならヨソでしてちょうだい」
トウコとフェリシアが、呆れ果てた。
「やれやれ。お嬢はこう言えば聞きませんからな」
シーデーも、頭を抱える。
オレたちの口論を止めたのは、ゾーイだ。
「ワタシが行くわ」
「ゾーイが?」
「これでもワタシは、セイクリッドよ。神が遣わしたアンドロイド。しかも神の子であるワタシなら、魔力の干渉なんて微量で済むわよ」
俺はサピィに「そうなのか?」と聞いた。
「大丈夫です。神の子というのは、つまり【聖女】ですからね。リュボフさんと同じ力はあると思っていいでしょう」
ならば、術式空間に入る素質は充分あるか。
「セイクリッドでも、オミナスの影響は受けてしまうぞ。キミの母上がそうだったろう?」
彼女の母親は、オミナスに侵食されてしまっている。それを殺害したのは、サピィの親友であるジェンマだ。
「我がガードに回りましょう。幸い我なら、オミナスの干渉は受けませんので」
シーデーが、ゾーイと一緒に術式空間へ入るという。
「神の子ではないあなたが入っても、足手まといよ」
「なにをおっしゃる。今や我の骨には、ドラゴンの素材が使われているのですぞ。侵食できるなら、なさってみなさいというわけですよ」
今度は、シーデーとゾーイが言い争いに。
「もーっ! 面倒ね! 全員で行きましょ!」
フェリシアが、結論付けた。
「大丈夫なのか?」
「あのねえ。アタシたちは一応ハイクラスよ。魔術式空間への入り方なんて、心得ているわ。それに、術式空間って、言えば結界でしょ? トウコのアデプトの力でどうにかなるんじゃないの?」
「まさか、空間を破壊しながら進む、ってのか?」
ミスティックアデプトの能力には、相手のガードを崩すスキルがある。
それは、魔法障壁でも同じことが可能だ。
だからこそ、虚弱公とも戦えたと言える。
「ええ? できないの? 問題あるの?」
肩をすくめながら、フェリシアが聞いてきた。
「盲点でした。効力を弱らせて入るって発想が、初めからありませんでしたから」
術式空間は、デリケートな場所だ。
壊せばなくなってしまうと思っていたから、サピィも破壊に考えが及ばなかったという。
「やってみる価値はあるかと」
「決まりね!」
その武器こそ、【報復刀 ウェイジス・エッジ】である。
味方のハンターを手に掛け、父はハンターギルドの手によってハチの巣にされたのだ。
父を撃ち殺したうちの一人が、クリムの父親である。彼は、父の親友だった。俺の父親に、とどめを刺した人物でもある。
オヤジが調査隊に処理されてから、ずっと見つかっていなかった。
その刀とファウストゥスには、なんらかの関係があるらしい。
「ランバート。このカギの正体がなんなのか、わかりました」
サピィが、カギを持って現れる。
「ランバート・ペイジ、そのカギを、本当にクリム・エアハートが?」
顔をしかめながら、ゾーイが俺に聞いてきた。
「ああ。間違いなく、クリムが持っていたものだ」
「海水に沈んでいたみたいに、ボロボロじゃないの」
ゾーイが、疑いの目を俺に向ける。
錆びついているように見えるが、これでもちゃんとした形なのだという。
「ディンプルキーのような仕組みか?」
「いえ。この形で完成しているみたいですね」
凹凸ではなく、このカギ自体が大事なのだそうだ。
「どこのカギだったんだ?」
「セグメント・ゼロ最深部にある、高次元空間です」
俺は、息を呑む。
「そんな空間に、入っていく必要があるのか」
「はい。かなり魔力的な負荷がかかりますが」
高次元な術式空間は、普通の人間には入れない。また魔物や天使なども、入るのをためらう。魔力の掃き溜めのような場所であり、彼らはそこに異臭を感じるからだそうだ。
ましてセグメント・ゼロに沈殿する魔力となると、ドラゴンの残骸クラスだろう。とてつもない負担を強いる。
「わたしはマギ・マンサーの力があるから、平気です。しかし、五分も入っていられないでしょうね。それ以上入ると、魔力が骨折レベルで負傷します。魔力と肉体を繋ぐ回路がボロボロになるといいますか」
サピィでさえ、そこまで深刻なダメージを受けてしまうという。
「かなり危険な空間に、なにか重大なものを隠している可能性があります。それこそ」
「ウェイジス・エッジがあると?」
「可能性は高いですね」
そんな思いまでして、取りに行く必要があるのか?
「やめろ。サピィに危険が及ぶ」
「ファウストゥスに繋がるのであれば、クリム氏を手助けできるかもです」
「しかし、俺はサピィも大事だ」
「とはいえ、このままでは」
俺とサピィの押し問答が続く。
「ふたりとも、やめないか」
「そうよ。痴話喧嘩ならヨソでしてちょうだい」
トウコとフェリシアが、呆れ果てた。
「やれやれ。お嬢はこう言えば聞きませんからな」
シーデーも、頭を抱える。
オレたちの口論を止めたのは、ゾーイだ。
「ワタシが行くわ」
「ゾーイが?」
「これでもワタシは、セイクリッドよ。神が遣わしたアンドロイド。しかも神の子であるワタシなら、魔力の干渉なんて微量で済むわよ」
俺はサピィに「そうなのか?」と聞いた。
「大丈夫です。神の子というのは、つまり【聖女】ですからね。リュボフさんと同じ力はあると思っていいでしょう」
ならば、術式空間に入る素質は充分あるか。
「セイクリッドでも、オミナスの影響は受けてしまうぞ。キミの母上がそうだったろう?」
彼女の母親は、オミナスに侵食されてしまっている。それを殺害したのは、サピィの親友であるジェンマだ。
「我がガードに回りましょう。幸い我なら、オミナスの干渉は受けませんので」
シーデーが、ゾーイと一緒に術式空間へ入るという。
「神の子ではないあなたが入っても、足手まといよ」
「なにをおっしゃる。今や我の骨には、ドラゴンの素材が使われているのですぞ。侵食できるなら、なさってみなさいというわけですよ」
今度は、シーデーとゾーイが言い争いに。
「もーっ! 面倒ね! 全員で行きましょ!」
フェリシアが、結論付けた。
「大丈夫なのか?」
「あのねえ。アタシたちは一応ハイクラスよ。魔術式空間への入り方なんて、心得ているわ。それに、術式空間って、言えば結界でしょ? トウコのアデプトの力でどうにかなるんじゃないの?」
「まさか、空間を破壊しながら進む、ってのか?」
ミスティックアデプトの能力には、相手のガードを崩すスキルがある。
それは、魔法障壁でも同じことが可能だ。
だからこそ、虚弱公とも戦えたと言える。
「ええ? できないの? 問題あるの?」
肩をすくめながら、フェリシアが聞いてきた。
「盲点でした。効力を弱らせて入るって発想が、初めからありませんでしたから」
術式空間は、デリケートな場所だ。
壊せばなくなってしまうと思っていたから、サピィも破壊に考えが及ばなかったという。
「やってみる価値はあるかと」
「決まりね!」
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる