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第三章 ダンジョン社長と、魔王の力を得たクラスメイト

第28話 ナオトとダンヌ

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 ボクが、ダンヌさんの生まれ変わりだって?

「ダンヌも、同じように女神から呪いを受けたのさ。弱い人間に転生して、弱体化させられた。だがオレサマは先手を打って、力の一部を切り離し、お前さんと接触させるように仕掛けた」

「つまり、ボクとダンヌさんが出会うことは、最初から想定されていた?」

「そういうこった。まったく、女神もツメが甘えよな。こっちの仕掛けに気づかないなんてよぉ」

 ダンタリオンは、複数の人格を持つ。それら人格が分散して、各世界を支配しているという。
 その一つが、ダンヌさんらしい。

 ようするに、ボクもダンタリオンの一部ってわけか。

 力が強すぎるダンタリオンの本体は、ずっと魔力の流れがない地球に封印されていたという。
 カトウケイゴの身体に封印されていたが、アウゴが転生したことで覚醒してしまったわけか。
 まだダンタリオンの力が残っていて、影響を及ぼしたに違いない。

「チョーコ博士は、気づいていない?」

「でしょうね。もし菜音ナオトくんが魔王ダンタリオンと同一個体だって知っていたら、あなたを抹殺対象にしていたわ」

 緋依ヒヨリさんが言うなら、確かかも。

「さて、おしゃべりはそこまでだ。ダルデンヌ、オレサマの支配下に戻れ」

 ダンタリオンが、手をかざす。

 そうか、ダンタリオンは、ダンヌさんの親分みたいな存在だ。

 となれば、ボクも洗脳されてしまうのか。

 だが、一向にボクの意識が乗っ取られる気配はなかった。

「あれ? おかしいな。人格が戻るはずなんだが」

 さすがに、おかしいと思ったのだろう。ダンタリオンが、首をかしげる。
 
「おいテメエ、何をぼさっとしてるんだよ? さっさとアシタバ・ヒヨリをつれて、オレサマのところに戻ってこいってんだよ」
 
「……断るお」

「はあ?」

「お前の指示には、従わないお。オイラはダンヌではあっても、ヒライ・ナオトだお。お前の……ダンタリオンの一部ではないお」

 ダンヌさんが、そう言い放つ。

「……んだと?」

 ダンタリオンが、鬼の形相になった。

「ダンヌさん。ダンタリオンの拘束から、本当に逃れられたの?」

「そうだお。オイラはこれからもずっと、ナオトの味方だお」

 ボクは安心する。
 ダンヌさんまで取り込まれたら、また形勢を逆転されるところだった。

「なにが起きてやがる!? なんでオレサマの分身であるテメエが、オレの支配を受けない?」


「カトウ・アウゴのおかげだお」


 アウゴは最後の力を振り絞って、ボクとダンヌさんを、ダンタリオンの支配から守ってくれているのか。

 ありがたい。
 これでもう、怖いものはなくなった。
 
 
「まあいいか。全部想定済みだし。オレサマが本気を出せばいいだけだろ」

 空が突然、真っ暗になる。


「なにが起きたんだ?」

「あれを見て、菜音くん!」

 緋依さんが、空を指差す。

「空を、何かが覆っている」

 円盤のようだが、お城が逆さまに建てられている。

「そうだ。これこそオレサマの根城。その名も、【天空城】だ」
 
 ビルの上で、円盤が空を覆っていた。

「地球が、魔物から魔力を奪っている最大の理由。それは太陽光線だ。色々調べて、どうして夜のほうが魔物の動きが活発なのかわかった。太陽のせいだってな!」

 太陽は、ダンヌさんや緋依さんを転生させた女神のパワーに満ちている。
 その太陽が、邪悪な魔物たちから瘴気を消し去っているらしい。

「だが、その太陽を塞いでしまえば、いくらでもダンジョン作り放題ってわけだ!」

 突然、スマホの電源が立ち上がった。

菜音ナオト! 聞こえるでちか?』

「はい。チョーコ博士。なにがあったんです?」
 
『円盤が現れた途端、フォトン製ではない各電子機器が、破壊され始めてるでち!』

「本当ですか? 今ここには、カトウ・ケイゴがいます。ダンタリオンって名乗っていますけど」

「ケイゴがダンタリオン!? やはり、生きていたでちか! あのクズ野郎が、もっとクズのダンタリオンだったとは!」
 
 珍しく荒々しい口ぶりから、チョーコ博士はケイゴを心底嫌っているようだ。
 
 ダンダリオンの目的は、円盤で太陽を隠して都市丸ごとダンジョン化するだけじゃない。
 地球の産業すべてを、破壊するつもりだ。

「地球産のテクノロジーを奪い去って、この天空城を拠点として、地球をダンジョン化させてやる! 女神のヤツめ。思い知らせてやるぜ!」
 
 天空城から、膨大な瘴気が溢れ出す。
 瘴気は地上へ降り注ぎ、魔物たちに姿を変えた。

 魔物たちが、人々を襲っている。
 街の人達は逃げ惑い、警官や自衛隊の対処も追いつかない。
 外国の軍隊は、戦闘機のミサイルで魔物を一網打尽にしようとしていた。だが、住民たちがいて撃てないでいる。

「アハハハ! これでもう、都市機能はマヒしやがった! いよいよ、この世界も混沌の中へ……へあ!?」

 一機のヘリが、天空城を支える円盤に突っ込んだ。魔力による、大爆発を起こす。大量のフォトンを詰んでいたようだ。

 わずかながら、円盤に穴が開く。

 太陽光が降り注ぎ、魔物たちが消滅していった。

 ヘリの残骸が、ボクの眼の前で落下していく。

 乗っていたのは、羽鳥社長だった。
 身体半分が、焼け落ちている。死んでいるのだ。
 羽鳥社長の亡骸が、地上へ落ちていく。
 死してなお、ダンタリオンに向けて中指を立てながら。
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