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第三章 ダンジョン社長と、魔王の力を得たクラスメイト

第27話 黒幕

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 カトウ・アウゴと思しき人物が、ベッドに横たわっていた。

「バカな。いつの間に?」
 
「ついさっき死んだよ」

 ボクたちの背後に、魔物の気配がした。
 カトウアウゴより、遥かに大きな魔力を感じる。

「何者だ!」

 振り返ると、死んだカトウ・アウゴとよく似た人物が。
 アウゴを二〇歳ほど老けさせたような、顔立ちである。

「カトウ・アウゴが、もう一人?」

「そっか、アウゴとオレサマは、やっぱりそんなに似ているか。さっすが親子だな」

 男性はボクたちに敬意を払い、紳士風に腰を折った。
 
「はじめまして。ヒライ・ナオトに、アシタバ・ヒヨリ。オレサマの名は、神籐カトウ 恵吾ケイゴだ」

 カトウ・ケイゴといえば、カトウアウゴの父親ではないか。

「ウソよ! カトウケイゴは殺されたはずよ!」

「そのとおり。確かに、カトウケイゴは死んだ。だからお前らには、【ダンタリオン】って名乗った方がわかりやすいかな?」

 ダンタリオン……羽鳥社長が言っていた、ダンヌさんの本名じゃないか。

「どうして、ダンタリオンが、この世界に?」

「オレサマ自身、カトウケイゴという人物に転生しているって知らなかったさ。だが息子のアウゴに殺されたことで、ようやく自我が目覚めたのさ」
 
 カトウケイゴとして死に、ダンタリオンとして復活してからは、カトウアウゴを隠れ蓑にして動いていたのである。

「ずっと自分の死を隠して、騙していたのか」

「そう。オレサマが、カトウアウゴの代理ってわけ」

 ダンタリオンが、ケラケラと笑う。
 
「これより世界のダンジョン化は、このオレサマが引き継いだ。っていうか、カトウアウゴの魔力を使って、【デヴァステーション・ファイブ】を操っていたのも、ぜーんぶオレサマだったんだけどな」

 そこまで聞いて、ボクは一つの疑問を思い出す。

「たしかさ、デヴァステーション・ファイブって、もう一人いたって言っていたよね?」

 イナダイクミの父親、テロス、馬面の魔物、羽鳥社長。この他にカトウアウゴまでタシて、五人だと思っていたけど。

「カトウアウゴは、メンバーの一人ではない。メンバーを動かしていただけだ」

「それじゃあ、メンバーの最後の一人は」

「ああ。オレサマのこと。このダンタリオンってわけ」

 ゲラゲラと不快な笑い方をする。

「おのれ!」

 緋依さんが、ケイゴに斬りかかった。

 しかし、ケイゴの身体をすり抜けていく。

「だから、これは魔法によるグラフィックスだっての。アウゴにもやられたろうが。学習しねえなあ」

 魔力を直接、このフロアに流し込んでいるという。

「ヒライナオト。テメエが殺したダルデンヌには、アウゴの魂も入っていたのよぉ」

 だから、アウゴは力尽きたのか。

「どうして、そんなことを」

「用済みだからさ。オレサマが欲しかったのは、ダンジョン化の能力だけ。それさえ手に入れば、カトウ・アウゴなんてただのガキンチョに過ぎん」

 自分の息子を、ケイゴはガキ呼ばわりする。

「お前の目的は、なんです?」

「シンプルに、この世界に顕現することだよ。人間を食うために」

 大げさに、ケイゴは肩をすくめた。

「オレサマたち魔物は、お前らからしたらシロアリみたいなもんさ。この世界そのものを食うために存在している。つーか、そのためにしか、存在してはいけないんだよ。食って食って、消費して消費して、破壊して破壊して破壊すること。それこそ、オレサマの存在意義ってわけ」

 完全に、イカれている。

「地球は、以前からマークしていた。なにかとあれば、地球から刺客が送り込まれてきた。あげく、オレサマにとってデメリットだらけの地球に転生してきやがった。ダンタリオンをこの世界に集結させて、一網打尽にするつもりだったんだろうな」

 あるいは、それがアウゴの目的だったのかもしれないという。
 アウゴが望んで、自身の父親として転生させたのだろうと。
 
「コイツの目的ってなんだったか、知ってっか? 『外で遊ぶこと』さ」

 アウゴの本当の願いは、同い年の人と一緒に野山を駆けることだったらしい。
「異端者」「魔法使い」「呪われた子」として、アウゴは前世でずっと爪弾きにされてきた。
 自分が魔法使いでなくていい世界こそ、アウゴの望んだ世界だったのである。 
 
 たったそれだけの願いを持つことさえ、ケイゴは許さなかった。

「最初はオレサマも、なんでそんなことを許可しねえんだろうって思っていたんだよ。息子の願いを叶えてやるってのは、親の義務だろ? だがオレサマは、自分の義務を優先した。だが、死んでみてわかった。オレサマの方が、正しかったんだってな」


 クヒヒ、と、ケイゴはまた不愉快な笑い声を上げる。
 
 
「あったりめえだ! シロアリが破壊を否定してどうするってんだ!」


 ダメだ。コイツは、殺すしかない。
 
 話を聞いているだけでも、イライラしてくる。

「つーわけでよ。我が分身、ダルデンヌくんよ。このガキの身体を使って、アシタバヒヨリを連れてこい。リハーサルどおりに」

「リハーサルだって?」

「知らなかったのか? ヒライ・ナオト。お前さん、ダルデンヌの転生体なんだぜ?」
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