転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。

椎名 富比路

文字の大きさ
5 / 42
第一章 竜胆の騎士:ジェンシャン・ナイト

第5話 嫁ゲット

しおりを挟む
「悪い。大丈夫か?」
「はい。なんとか」

 でも、ケガをしていてはいけない。オレは、レクシーを回復の泉に浸す。

「足元が見えないから、気をつけろ」

 両手を持ちながら、そっと泉の中へ。

「ありがとうございます」

 レクシーは、落ち着いたようだ。さっきまで泣きはらしていたらしい。腫れた目元が、泉の力で回復していく。

「どうして、こんなところに?」
「お背中を流して差し上げようと」
「長老の、じいさんの指示か?」

 レクシーは、首をブンブン振った。

「私からの感謝の印です」
「なにも、こんなことをしなくても」
「ハダカに慣れておきたいんです! お互いの!」

 どうやら、結婚話はマジみたいだな。

 相手は乗り気だ。それを断るとなっては。

「じゃあ、お願いします」
「はい。喜んで」

 背中を流すと言っても、回復の泉自体に石けんの機能がある。タオルで軽く拭う程度に過ぎない。それでも、レクシーの手付きにオレはゾクゾクした。

「何をビビってるんだい? 相手はキミと一緒になるのを、むしろOKしているよ?」
「多分、見た目からだ」

 幼女っぽいから、どうしても足踏みしてしまう。

「心配ないよ。彼女は一八歳だ。従来なら、行き遅れているくらいさ」

 そうなのか?

「はい。治癒・補助魔法の修練などに没頭してしまって、気がつけば婚期を逃していました。アカデミーでは、色々と私を狙っている男子生徒がいたようですが」

 何ひとつ青春らしい日々を送ろうとせず、レクシー女史はひたすら研究に没頭していた。

「なんでまた?」
竜胆の魔女ソーマタージ・オブ・ジェンシャンのは、私の憧れなのです。女性ながら社会進出して、数々の偉業を成し遂げました。魔族の侵攻をこれまで食い止められているのも、魔女様のおかげなのです」

 なるほどね。こいつは、人々の役に立っていたと。

「でも、魔女様はお亡くなりになり、我々の希望は途絶えました。それで魔族は息を吹き返し、私の両親は……」

 タオルでオレの背中を拭う手が、止まった。

「辛いな」
「でも、あなたがいます」

 オレは、レクシーの手をつかむ。

「じゃあ、ワタシは席を外すよ。素材から、武器の構築をしておく」
「頼む」

 ニョンゴが消えていった。

 照れくさいから見ていてくれ、なんて言わない。ちゃんと、レクシーに向き合わないと。

「あの、け――」
「結婚してください」

 オレの方から、前を向いてプロポーズをする。前をむくのは照れくさかったが、そうも言ってられない。

「え? ホントに?」

 自分から告げようとしたのだろう。レクシーが戸惑っている。

「ホントだ。一緒になろう、レクシーちゃん。あんたさえよかったらだけど。繁殖のためとか、そう言う事務的な結婚じゃなく。もっと夫婦らしいことを、たくさんしようぜ。楽しいぞ、きっと」

 思えば、この子は家族を失ったばかりだ。祖父である長老がいると言えど、寂しい思いをしているに違いない。支えが必要だろう。

「ありがとうございます。ありが、とう」

 レクシーが、オレの胸で泣き崩れる。
 こうしてオレは、元の世界で築けなかった家庭をもつことになった。 



 泉から上がって、二人で着替える。

 長老に連れられて、里の冒険者ギルドへ。

「忙しい所、すまん。この方の冒険者登録を」
「かしこまりました」

 受付嬢のポニテ女子エルフによって、冒険者カードが作られる。

「名前はモモチで登録。二つ名なんて項目があるのか」

 二つ名とは、「世間でどう呼ばれたいか」を書いておく項目だ。オレのように、匿名で活動したいヤツラは、二つ名を相手に呼ばせるんだとか。

「こっちは……シェリダンの方にしておくか」

 職業は、騎士として登録した。親しい人とだけ、モモチと名乗ろう。身を隠すため、フルフェイスのヨロイは常に身につけておくか。

 冒険者登録すればステータスがセーブされる、ってわけじゃない。ただ、こういうのは気持ちの問題だ。異世界に来たら、冒険者登録しないとね。

「配偶者名、配偶者……」

 うーん、手が震える。わかっていても、緊張するもんだな。

「さっさと書けよっ、モモチ」
「でもなあ……あ」

 業を煮やしたのか、レクシーがオレから用紙をぶんどった。さささっと、自分の名前を記入する。

「シェリダンことモモチ様と、奥様のレクシー様ですね。承りました。おめでとうございます」
「ど、どどどどうも」

 受付の人に歓迎されて、レクシーはどもった。

 さっきは勇ましかったのに、レクシーはすぐに縮こまっている。どっちが本当のキミなんだ?

「あっそうか。結婚したんだから、先に役所へ行かなきゃ」
「大丈夫ですよ。こちらでは、住民登録の手続きも兼ねていますから」

 受付さんが、そう教えてくれる。

 なるほど。ならとっと書いて正解だったのか。

「あと、街に出て必要なものを買いたい。とはいえ……」

 ここはもう、街としては機能していない。復興には時間がかかるだろう。

 ここより大きな街に出て、アイテム系を揃えようかと。こっちの武器・防具のデザインも見ておきたい。参考になればいいが。

「ですが街は、モンスターに襲われています」
「じゃあ、助けよう」

 休みなしだな。でもいいや。それくらいが、ちょうどいい。

 だが、その前に。

「えっと、レクシー。喪に服しておくか?」

 さすがに結婚していきなり新居へ、なんてわけにはいかない。

「両親を亡くしたんだ。お別れは伝えておいたほうが」

 新しい家族を招くんだから、部屋も片付けておきたかった。あの館は作業スペースばかりで、生活感もなかったし。

「ありがとうございます。では、葬儀だけさせてください。一日で済ませます」 
「わかった。日を改めて、迎えに行く」

 諸々の準備をするために、オレは魔女のラボへ一度帰ることにした。
 ついでに、森周辺のモンスターも蹴散らす。これで、少しは安心できるだろう。素材も手に入るし。
 あらかじめ、ギルドで初心者向け依頼も受けておいた。

「うーんと、薬草採取とハチ退治と、イノシシ撃退は……完了したな。これでランクアップと。

 申請なしでランクアップするシステムは、いいな。
 同時に、犯罪もすぐにバレるらしいが。

 ラボに帰還、っと!

「ニョンゴ、最適化は完了したか?」
「バッチリ! あとは、ビジュアルを決めるだけだ。それで、キミにとっておきのスキルを授けよう。さっき泉で席を外したとき、開発しておいた!」

 これからさらに強くなるってか? オーバーキルがすぎるぜ。

「その名も、ドドーン! 【フルモデルチェンジ】だ!」
「なんの機能があるんだ、それ?」
「アイテムのビジュアルを、キミの好きなように変更できるスキルだよっ!」

 そのスキルは、「アイテムを、オレの好きな見た目に変換できる」機能らしい。

「変わるのは見た目だけ! 性能はまったく変わらないから安心してね」

 物理法則で多少は軌道や操作性は変わるかもしれないが、基本的には元の数値を維持しているという。

 助かる。やはり見た目第一だからな。

 実際、オレはレクシーとの結婚をためらった。彼女はオレから見て、小学高学年くらいにしか見えない。やはり幼い見た目で、「YESロリ・NOタッチ」の精神が湧き上がってしまうのだ。

「ただし、アイテムだけだから、生きた人間とかの見た目は変えられないよ」
「わかった。ではさっそく、ヨロイの見た目を変えようじゃないか」
「そんなに、気に食わないんだね?」

 一生、着るものだからな。ビジュアルには、こだわりたいのだ。

 各素材を吟味しながら、ヨロイをヒロイックなパワードスーツへと仕上げていく。

「あと、武器も追加しておいたよ。近接武器だ」

 動物的デザインの武器が、ニョンゴの足元から降ってきた。

「刀か」

 握りが、ドラゴンの指でできている。爪を削って作ったのか。

「うーん、機能は実用的だな。仰々しい見た目もなかなかだが、今回は却下だ」

 これでは、悪者だしな。

「よし。他の素材を集めに街へ行くぞ!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...