転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。

椎名 富比路

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第二章 猛将と、闇の博士

第17話 闇の科学者、タキ

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 スーツが、プスンプスンと言い出した。一箇所だけじゃない。あちこちで煙が上がっている。

「お、うお」

 オレの身体も、地面へまっ逆ささまに。

「おおおお待て待て待て!」
「エネルギー切れだ。さっきの必殺技で、力を使い果たしたんだよ」

 そのまま、オレは地面へと落ちていく。

「待ってろ!」

 ニョンゴがオレの背中に取り付いた。魔力を注入している。

「うおっと」

 地面スレスレで、どうにか落下は止まった。ふう。

「ん?」

 眼の前では、なんともファンタジーらしい様子が展開されている。

「今更ノコノコ来おったか。タキよ」

 ウェザーズはまだ、生きていたらしい。

「やまかしいわ。お前のせいで、三分の一が死んだんやぞ。誰が魔王を守護すんねん?」

 身体が半分になったウェザーズを見下ろすのは、いつぞやのグラサンだ。
 茶色のスーツを来て、ウェザーズを不愉快そうに会話している。
 関西弁か。

「フン。自分の身も配下に守らせている段階で、魔王失格よ」
「自分が先陣きって仲間を犠牲にしている段階で、指揮官失格やぞ」

 やけにトゲがあるな。

 タキと呼ばれたグラサンが、オレに気づく。

 顔つき、シワの具合からして、同い年くらいか。

「おう。ようやってくれたわ。ワシはプロフェッッサー・タキちゅうもんや。あんたのおかげで、魔王陣営における膿が取れるで」

 プロフェッッサー・タキが、グラサンを外した。目元はタレていて、瞳孔になんの感情もない。

「モモチだ。こっちでは、シェリダンと名乗っている」

 こちらも、ヘルムを脱ぐ。

 こいつには、本名で名乗る必要がある気がした。

「シェリダン……もしかして、タイ・シェリダンから取ったんか?」

 やっぱりだ。こいつは。

「ええやんけ、お前。おもろいで」

 今までなんの感情もなかった目に、愉快さが浮かぶ。

「お前も、日本人か?」
「せや。魔王陣営に知恵を買われたんや」

 現魔王である、ジェランの力で呼ばれたらしい。

「どけ、タキとやら。コイツを殺さなければならない」
「ひっこんどけ。魔王の軍勢も下がらせとる。ライコネンも王都も無事や。あんたらに用事はないはずやで」
「そうはいかん。とどめを刺す」
「ワシらに任しとき」

 オレとタキがしゃべっているとまたウェザーズがわめき出す。

「貴様ら、我という偉大なる存在がいながら、雑談をするでない!」
「やかましいやっちゃで」

 ちらっと一瞥しただけで、再びオレとの会話に戻る。

「モモチ。あんたも日本人やったら、知ってるやろ? ゼークトの組織論の話」
「……ああ」

 有能な働き者は、参謀にしろ。有能な怠け者は、後方で指揮官に。無能な怠け者は、前線に出せ。



「正解や」

 タキが瞳に、薄暗い感情をのぞかせた。

「おのれ貴様ら! 吾輩を無視するでない!」

 なおも、ウェザーズはわめいている。


「で、無能な働き者は」
「今すぐ殺せ」
「お見事」

 同時に、タキの後ろで落雷が起きた。

 真後ろで大爆発が起きたというのに、タキは肩をパンパンと払うだけで動じない。

「なんだ?」

 オレは、口に入った砂を吐き出す。

 土煙が晴れていき、ようやく何が起きたのかが見えてきた。

 ジーンが、ウェザーズのコメカミを槍で貫いている。

 ウェザーズは今度こそ、死んだらしい。

「勝つことが正義、一番であることが正義やと、いつかこないになる」

 タキは、ウェザーズの角を拾う。

 ジーンは、動けない。タキが実力者であると感じているのか、力を使い果たしたのか。 

「娯楽に飢えとったんや。ゴーレムづくりにも飽きたところやで」
「持ち帰るのか。結局生き返らせると?」
「冗談やない。こんなんのクローンがぎょうさんおったら、世界中がスラムになってまう」

 角を担ぎながら、タキはオレに語りかけてくる。

「今日は退く。せやけど次からは、ワシが相手や」

 そう言い残し、タキが一瞬で消えた。
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