勇者が最速魔王討伐に夢中で世界が崩壊寸前。代わりに友人の僕が領地経営やモフモフ娘の救出など人助けしまくっていたら最強に

椎名 富比路

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第一章 大勇者のあとしまつ

第3話 街へ入って、冒険者登録をした

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「ルルジョン」の街へ入る。

 なんか、寂れているなぁ。まるで、ダークファンタジーの世界みたいだ。空は薄暗く、カラスが飛び回っている。

「ギルドはこっちよ。私も用事があるから、一緒に入りましょう」
「ありがとう、エリちゃん」

 旅先で仲良くなったエリちゃんことエリアーヌさんの後を追う。

「エリアーヌさま、おかえりなさいませ」

 ギルドに入ると、カウンターに立つ受付嬢さんがエリちゃんに微笑みかけた。緑色の制服に、長い耳の先。なんだか、エルフっぽい見た目だね。

「そちらの方は?」

 僕を見て、エルフ受付嬢さんが首をかしげる。

「ドクロ党のヤツらに襲われたところを、助けてくれたの」
「まあ。ドクロ党ですか! おケガは?」
「大丈夫よ。それも含めて、この方が。で、冒険者登録がまだなんですって。お願いできる」

 エリさんが言うと、受付嬢さんは「ハイ」と言って、カウンターに書類を出した。「必要事項をご記入ください」だって。

 僕はさっそく、書類にペンを走らせる。

「どうぞ」
「拝見いたします。なるほど、アユム様と」

 受付嬢が、僕をジッと見つめた。その後、「……少々お待ち下さい」と、カウンターの奥へ。

「あの、もしもし?」
「こちらへ」

 手招きをして、受付嬢が僕をカウンターへと誘ってくる。

 なんだ?

「行きましょう」

 エリちゃんに手を引かれて、ギルドの内部へ。

 簡素な事務机が並ぶ室内の更に奥、仕切りがされた場所に通された。

 黒いソファに座るよう言われる。

 肩身が狭い中、エリちゃんと並んで座った。

 数分後、やたらスカートの短いダークエルフのお姉さんが、向かいのソファーにどんと腰を下ろす。ブーツが泥だらけだ。さっきまで、どこかで戦っていたのかな?

「はじめまして。もうひとりの勇者。私は『メファ』という。ルルジョンの冒険者ギルドを統括する、ギルドマスターだ」

 銀縁の細長いメガネをかけ直し、メファさんは僕を見つめる。

「アユムです。ユウキとはガキの頃からの友だちで」
「なんと、あの勇者ユウキの知り合いだったとは。それにしては地味だな」

 メファさんは、僕がユウキの幼なじみと知って驚いていた。エリちゃんが野盗との戦いを話すと、ようやく信じてくれるように。

「勇者の再来はありがたい。あのユウキという男は、冒険者登録して早々に、魔王討伐に向かってしまったからな。おかげで問題が山積みだ」
「と、言いますと?」
「ここだけでも、千を超える案件に追われている」

 魔物討伐、薬草採取、通商路の確保、すべて滞っている。おかげで街は荒れ放題だという。

「そうなんですね」

 とはいえ、いくらなんでもあんまりな気がした。

「勇者だけに任せる必要は、ありません」
「ン?」
「例えば、ここです。少々の護衛がいれば、薬草などの採取は可能なのでは?」
「そうなんだ。いや、そうだったといえばいいか」
「なにか問題でも?」
「冒険者の数が減った」

 たしかに、この世界って冒険者があまりいない感じがする。

「ほとんどの冒険者が、敵に寝返っちゃったの。魔王の勧誘で」
「敵のほとんども、低級の冒険者崩れだ」

 ほとんどの案件は、報酬が少なくて稼げない。

 そのため低級の冒険者は、コツコツ稼ぐのをやめた。手っ取り早く強くなるため、悪の道に走ってしまったという。

「強い冒険者たちは、大型魔獣の討伐に向かってしまい、小さい案件は放置されている。

 特にここは、エリクサーの元が手に入るという。正式な手順で積まなければ根腐れするので、魔法使いに頼む。しかし、護衛役に乏しい。

「今回はエリアーヌにソロで行ってもらったが、大変だったな」
「アユムがいなければ、私は野盗に捕まって、怪しい薬の実験台にされていたでしょう」
「魔獣討伐に行っている間に、そんなことがな。すまない」
「いいえ。稼ぎにならないからと小さい案件を無視する冒険者が悪いのです。アユムなら、信頼できます。弱い人を見捨てません。私が保証します」

 エリちゃんに太鼓判を押されて、僕は恐縮した。

「頼もしいな。派手な活躍はできないかもしれないが、小さい仕事をお願いしたい」
「はい。そのつもりで来ました」

 大きいことを解決するのは、たしかにいいことだ。とはいえ、目の前の人を放置すれば死んでしまう。結果的に損だ。

「ユウキには、大きい仕事が待っています。僕はユウキとは違うやり方で、世界を救いましょう」
「ありがとう。さっそくカードができたので、どうぞ」

 僕は、メファさんから冒険者のカードを受け取った。

「さっそくだが、仕事を頼めるか?」
「はい。全部ください」

 メファさんが、僕の言葉に口をあんぐりと開ける。

「いや、小さい案件を大量にこなすと言っていたが、本当にそれでいいのか?」
「構いませんよ。誰もやらないなら、僕がやります」

 片っ端から、僕は掲示板の依頼書を取っていった。

「庭の手入れや、屋根の修理なんかもあるんだぞ? 猫探しとか」
「大丈夫。ユウキが高価な仕事で年収一〇〇〇万円稼ぐなら、僕は一万円の仕事を一〇〇〇件やります」

 同じ額を稼ぐなら、どの仕事も労力は同じのはずだ。

 おそらくユウキは、魔王討伐がどれほどの荒行か知っている。だから、他の用事に手が出せない。強い冒険者たちも、それを知っているんだ。

 だったら、僕が「小さい仕事をやる冒険者」になればいい。

「あのさ、エリちゃん。僕ってこんなカンジだから、嫌ならパーティを抜けても」
「お供します!」
「……いいの?」
「私もいたら、一〇〇〇件の仕事も五〇〇件ずつになるでしょ?」

 えへへ、とエリちゃんが笑った。

「じゃあエリアーヌさん、よろしくおねがいします」
「こちらこそ。アユムさん」

 僕たちを見て、メファさんが目を丸くする。

「仲睦まじいな。二人は、男女の仲なのか?」
「そんな! まだです! これから落とすの!」

 エリちゃん!?
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