勇者が最速魔王討伐に夢中で世界が崩壊寸前。代わりに友人の僕が領地経営やモフモフ娘の救出など人助けしまくっていたら最強に

椎名 富比路

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第一章 大勇者のあとしまつ

第4話 勇者と自分の違いを力説する。

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「アユム、こっちのエリアを探索するわ。警備をお願い」
「はーい」

 僕には、薬草を見分けるスキルはない。

 エリちゃんに薬草を採取してもらう間、近づいてくるモンスターを撃退していく。アイテムも手に入るから、役割分担としては合っているはず。

 僕の装備は、鎖かたびらに変わった。拾ったアイテムを街で換金して、店売りの装備に変えたのである。

「それにしても、次から次へと」

 モンスターの数が、まったく減らない。

 このままじゃジリ貧だな。

「この森に、瘴気を放っている魔物とかいない? そいつをやっつけたら、薬草取りと狩りは比較的安全にできるかも」
「よくわかるわね。森の奥に、アルラウネってモンスターがいるの」
「じゃあ、そいつをやっつけよう。きっとユウキなら、同じことを考えるはずだ」

 ユウキの名前を出して、エリちゃんはうつむく。

「アユムはどうして、そこまで勇者を信頼するの?」

 木のそばにある薬草やキノコを摘みながら、エリちゃんが声をかけてきた。

「うーん、そうだなぁ。あいつってさ、僕にできないことするから」

 昔、僕は遠足のときに谷底に落ちたことがある。雨で地盤が緩んでいたのだ。小さい谷だったが、救助隊を待つしかない状況だった。

 でも、ユウキは僕を見捨てなかったのである。自力で助けてくれたんだ。
どうして勝手なことをしたのかと先生に聞かれたら、ユウキは「体温が下がって死にそうだったから」と言い返した。

「それから、あいつのことで間違ったことは多分ないと思った」
「でも、今の状況は勇者が街を見捨てたために招いたと」
「本当にそうかな?」

 僕は、ガラガラだったギルドの様子を思い出す。
 たいていあんな場合は、チンピラめいた冒険者が絡んでくるシチュエーションだろう。
 なのに、ギルドの人たちはこちらに見向きもしなかった。
 羊皮紙の痛み具合からして、依頼書が消費されている気配もない。

「冒険者たちが機能していれば、避けられた問題のはずだ。根本的な原因が、ギルドにはあるんじゃないかな?」
「メファが、信用できない?」

 エリちゃんの声は、やや不満が混じっている。

「そうじゃない。初対面のとき、メファさんの靴は泥で汚れていた。泥も靴底から垂れていたから、おそらく新しい。さっきまで依頼をこなしていた証拠だよ。でもね、ギルマス自体が出張らないといけない、なんて状況自体が異常なんだ」
「よく観察しているわね……メファは、私を拾ってくれたの」

 エリちゃんは、魔法をメファさんから教わったという。

「私はただの村娘だった。子供の頃、村が魔物に襲われたわ。私も食べられそうになったところを、メファが救ってくれたの。そのとき、メファは勇者パーティの一人だった」

 しかし、勇者ユウキはメファをメンバーから外す。「力不足だから」と。その後、彼女はこの街でギルマスとして働き始めたそうだ。

「だから、私は勇者にいい感情を抱いていないの。でもメファは、なんの素質もなかった私をここまで鍛えてくれた。感謝してもしきれないわ」
「素敵な人だね」

 エリちゃんは、メファに育ててもらった恩を返してくて、冒険者になったそうだ。

「でも、私は弱くて」
「ちょっと、ステータスを見せて」

 僕は、エリちゃんのステータス表を確かめる。

 レベル一〇って、ボクより上じゃないか。そこまであれば、野盗の退治くらいできそうなのに。

「ああ、採取とか調合関連のスキルに振っているからか」
「私は戦闘向きじゃないって思っていたから、メファのサポートができる薬師になろうと」

 なるほど。レベルが高いのに野盗に後れを取るわけだ。各種スキル性能が、戦闘向きじゃない。

「それもアリだけどね。自己を防衛できるくらいには戦闘に振ったほうがいいかな」
「ありがとう。アドバイスに従うわ」

 エリちゃんが、炎魔法系にスキルポイントをふろうとした。

「あっ。ちょっと待って」

 とあるスキルを見つけて、僕は待ったをかける。

「どうしたの?」
「これさ、ひょっとすると強いかも」
「……これが?」

 僕が示したスキルを確認して、エリちゃんが首をかしげた。

「わかったわ。振ってみる。役に立たなかったらごめんなさい」
「いいよ。これから、強くなっていけばいいじゃん。ささ、アルラウネを退治しに行こう。そうすれば、大量の薬草が取れるよ」
「といっても、森は危険よ。道に迷うかも」
「大丈夫だって、ほら」

 僕は、足元をトントンと爪先で叩く。

 森に、黒い根っこが張り巡らされていた。この根をたどれば、アルラウネにありつくだろう。

 この手のイベントには、必ず攻略法がある。それを見つけ出せばいい。そうすれば、きっとエリちゃんだって強くなる。

 森を進むと、ボスっぽい見た目のモンスターを見つけた。
 上半身はハダカの女性、下半身が薔薇の花弁になっているバケモノだ。その場から動けないようである。
 しかし、イノシシを見つけると、アルラウネは根っこを伸ばして拘束した。

 イノシシが、みるみる干からびていく。

 なるほど。薬草採取すらままならない理由は、この怪物がいたからか。

「どうするの? ヘタに近づいたら、私たちも」
「いやあ。まいったね」
「そうよアユム! 早く逃げましょう」
「違う。迎え撃つ」

 ヤツは、こちらに気づいていない。絶好のチャンスだ。
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