5 / 63
第一章 大勇者のあとしまつ
第5話 小さきものの強さを、わからせる
しおりを挟む
僕がアルラウネと戦うと言った途端に、エリちゃんが僕の肩をつかむ。
「バカ言わないでよ! 相手はレベル二〇超えのバケモノよ!?」
小声ながら、エリちゃんは相手がいかに強いかを訴えてくる。
「だから行くんだよ」
こんなヤツを放っておいたら、街のゴハンもままならない。肉が取れないから。
この怪物がいなくなれば、狩りだけではなくポーション採取も楽になるはずだ。
「僕がまいったのは、まさかキミのスキルが早くも役に立つなんて思わなかったからさ」
エリちゃんに振ってもらったスキルを、試す時が来た。
【トキシック:毒薬精製。回復に使える薬草さえも、毒薬へと変える】
「これは、絶対に使えるスキルだよ」
スキルの使い方を、エリちゃんに教える。
医療行為に使う注射器に毒を盛って、根っこに注入するのだ。
アルラウネは大地から生体エネルギーを吸い取っているから、毒と言えど取り込まざるをえない。
そこがポイントだ。
「でも、こっそりやるなんてムリよ。誰かがオトリに……」
そこでようやく、彼女は僕のやろうとしていることがわかったらしい。
「僕がアイツの注意を引き付ける。エリちゃんは、毒を根っこに」
「一人でなんて、ムチャよ! それに少しずつ毒を盛るなんて。毒が回るまで、どれだけ時間がかかると」
「やるんだ」
なんとか僕は、エリちゃんの説得を試みる。
「僕がやらないと、いっぱい人が死ぬんだ。ずっと薬草が取れなくて、狩りもできずに人も飢える一方なんだ」
「アユム……わかった。死なないでよ!」
できるだけ遠くから注射するように言って、僕はアルラウネの前に出た。
「おいバケモノ、こっちだ!」
中距離から、僕は弓を構えて矢を放つ。できるだけ、エリちゃんが視界に入らないように。
「ほらほら、こっちだっての!」
敏捷性を上げた足で、アルラウネの追跡を逃れる。
僕だってタダでやられてたまるか。
あの矢にも、エリちゃんが作った毒が塗ってある。
少しずつ、ヤツの身体に毒が浸透していくはずだ。
アルラウネだって、バカではない。ツタを操って、僕を拘束しようとする。
武器をロングソードに切り替えて、僕はツタを切り裂く。
アルラウネのツタが、断面同士を再生させた。
新しく生えてくるんじゃない。斬られた箇所をくっつけるのか。
思った通りだ。
僕の矢を受けてか、アルラウネの動きが鈍くなった。
そこで僕は、アルラウネの「根を」断ち切る。
アルラウネの毒が回るまで、もう少しだというのに。
「ちょっとアユム! 何をして……!」
エリちゃんは、とっさに口を閉じる。しかし、位置がアルラウネにバレた。
アルラウネが、斬られた根っこの切断面をくっつける。高速で、再生が始まった。
「心配ないよ。これで、僕たちの勝ちだ」
「なにを……!?」
エリちゃんが何か言おうとした途端、アルラウネが絶叫する。
とてつもないスピードで、アルラウネは干からびていく。それは、腐っていく根っこを見てわかった。
同時に、エリちゃんと僕に大量の経験値が流れ込む。
「少しずつだった毒を、一気に吸い取ったからね。一瞬で毒が身体中に行き渡ったんだ」
ヤツが根っこから毒が回っていると気づいたときには、もう遅い。
少しずつなら小さい毒でも、何回も注入すればとんでもない効果を生み出す。
僕はそういう生き方・戦い方で、ユウキを助ける。
「見て。森が」
昼間でも夜のように暗かった森に、光が差し込んだ。森の生気が、もとに戻ったのだ。
荒れた土地に、草木が生え始める。
動物たちも、たくさん集まってきた。今までどこにいたのかとういうくらいに。
「あなたって、とんでもない人ね」
「とんでもないのは、エリちゃんの方さ。あのアルラウネを撃退するほどの毒を作れるなんて」
「私もびっくりよ。自分にこんな力があったなんて」
エリちゃんが、自らの力に自信がついたようだ。
「そうか。わかったぞ。どうしてメファさんを追放したのか。理由はキミだったんだ」
「どういうコト?」
「ギルドに戻ったら話すよ」
ルルジョンの街に戻って、僕は調査報告をした。
「森の中が、清潔になっていくのを確認しました。これで危険なことをせずとも薬草が採れるし、狩りも可能でしょう」
僕の報告を受けて、早速ギルドは依頼書を更新する。
ギルドのメンバーたちが殺到し、依頼を達成しに向かう。
一夜明けると、ルルジョンのギルドは活気に溢れている。これが、本来の姿なのだろう。
「ありがとう。これでもう、この街は安心だ」
「礼を言うのは、こちらです。メファさん」
「と言うと?」
「ユウキはわかっていたんだ。エリちゃんは強くなるって」
メファさんに鍛えてもらったおかげで、エリちゃんは強くなった。森の生態系を戻せるほどに、強く。
「彼女には、再生の力があった。それを見抜いていたんじゃないですか? あなたか、もしくはユウキが」
「ワ、ワタシは知らんぞ」
なにかメファさんは知っていそうだったけど、追求しないでおこうかな。
「とはいえ、油断は禁物だな。この先にあるジルダの街には、例のドクロ党がいる」
「わかりました。行ってみます」
僕の前に、エリちゃんが立った。
「私も、アユムについていきます」
「ああ。世界を見てこい、エリアーヌ」
「メファ、今までありがとうございました」
荷物を整理して、メファさんが用意してくれた馬車で次の街へ向かう。
「バカ言わないでよ! 相手はレベル二〇超えのバケモノよ!?」
小声ながら、エリちゃんは相手がいかに強いかを訴えてくる。
「だから行くんだよ」
こんなヤツを放っておいたら、街のゴハンもままならない。肉が取れないから。
この怪物がいなくなれば、狩りだけではなくポーション採取も楽になるはずだ。
「僕がまいったのは、まさかキミのスキルが早くも役に立つなんて思わなかったからさ」
エリちゃんに振ってもらったスキルを、試す時が来た。
【トキシック:毒薬精製。回復に使える薬草さえも、毒薬へと変える】
「これは、絶対に使えるスキルだよ」
スキルの使い方を、エリちゃんに教える。
医療行為に使う注射器に毒を盛って、根っこに注入するのだ。
アルラウネは大地から生体エネルギーを吸い取っているから、毒と言えど取り込まざるをえない。
そこがポイントだ。
「でも、こっそりやるなんてムリよ。誰かがオトリに……」
そこでようやく、彼女は僕のやろうとしていることがわかったらしい。
「僕がアイツの注意を引き付ける。エリちゃんは、毒を根っこに」
「一人でなんて、ムチャよ! それに少しずつ毒を盛るなんて。毒が回るまで、どれだけ時間がかかると」
「やるんだ」
なんとか僕は、エリちゃんの説得を試みる。
「僕がやらないと、いっぱい人が死ぬんだ。ずっと薬草が取れなくて、狩りもできずに人も飢える一方なんだ」
「アユム……わかった。死なないでよ!」
できるだけ遠くから注射するように言って、僕はアルラウネの前に出た。
「おいバケモノ、こっちだ!」
中距離から、僕は弓を構えて矢を放つ。できるだけ、エリちゃんが視界に入らないように。
「ほらほら、こっちだっての!」
敏捷性を上げた足で、アルラウネの追跡を逃れる。
僕だってタダでやられてたまるか。
あの矢にも、エリちゃんが作った毒が塗ってある。
少しずつ、ヤツの身体に毒が浸透していくはずだ。
アルラウネだって、バカではない。ツタを操って、僕を拘束しようとする。
武器をロングソードに切り替えて、僕はツタを切り裂く。
アルラウネのツタが、断面同士を再生させた。
新しく生えてくるんじゃない。斬られた箇所をくっつけるのか。
思った通りだ。
僕の矢を受けてか、アルラウネの動きが鈍くなった。
そこで僕は、アルラウネの「根を」断ち切る。
アルラウネの毒が回るまで、もう少しだというのに。
「ちょっとアユム! 何をして……!」
エリちゃんは、とっさに口を閉じる。しかし、位置がアルラウネにバレた。
アルラウネが、斬られた根っこの切断面をくっつける。高速で、再生が始まった。
「心配ないよ。これで、僕たちの勝ちだ」
「なにを……!?」
エリちゃんが何か言おうとした途端、アルラウネが絶叫する。
とてつもないスピードで、アルラウネは干からびていく。それは、腐っていく根っこを見てわかった。
同時に、エリちゃんと僕に大量の経験値が流れ込む。
「少しずつだった毒を、一気に吸い取ったからね。一瞬で毒が身体中に行き渡ったんだ」
ヤツが根っこから毒が回っていると気づいたときには、もう遅い。
少しずつなら小さい毒でも、何回も注入すればとんでもない効果を生み出す。
僕はそういう生き方・戦い方で、ユウキを助ける。
「見て。森が」
昼間でも夜のように暗かった森に、光が差し込んだ。森の生気が、もとに戻ったのだ。
荒れた土地に、草木が生え始める。
動物たちも、たくさん集まってきた。今までどこにいたのかとういうくらいに。
「あなたって、とんでもない人ね」
「とんでもないのは、エリちゃんの方さ。あのアルラウネを撃退するほどの毒を作れるなんて」
「私もびっくりよ。自分にこんな力があったなんて」
エリちゃんが、自らの力に自信がついたようだ。
「そうか。わかったぞ。どうしてメファさんを追放したのか。理由はキミだったんだ」
「どういうコト?」
「ギルドに戻ったら話すよ」
ルルジョンの街に戻って、僕は調査報告をした。
「森の中が、清潔になっていくのを確認しました。これで危険なことをせずとも薬草が採れるし、狩りも可能でしょう」
僕の報告を受けて、早速ギルドは依頼書を更新する。
ギルドのメンバーたちが殺到し、依頼を達成しに向かう。
一夜明けると、ルルジョンのギルドは活気に溢れている。これが、本来の姿なのだろう。
「ありがとう。これでもう、この街は安心だ」
「礼を言うのは、こちらです。メファさん」
「と言うと?」
「ユウキはわかっていたんだ。エリちゃんは強くなるって」
メファさんに鍛えてもらったおかげで、エリちゃんは強くなった。森の生態系を戻せるほどに、強く。
「彼女には、再生の力があった。それを見抜いていたんじゃないですか? あなたか、もしくはユウキが」
「ワ、ワタシは知らんぞ」
なにかメファさんは知っていそうだったけど、追求しないでおこうかな。
「とはいえ、油断は禁物だな。この先にあるジルダの街には、例のドクロ党がいる」
「わかりました。行ってみます」
僕の前に、エリちゃんが立った。
「私も、アユムについていきます」
「ああ。世界を見てこい、エリアーヌ」
「メファ、今までありがとうございました」
荷物を整理して、メファさんが用意してくれた馬車で次の街へ向かう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる