勇者が最速魔王討伐に夢中で世界が崩壊寸前。代わりに友人の僕が領地経営やモフモフ娘の救出など人助けしまくっていたら最強に

椎名 富比路

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第二章 盗賊団のしまつ

第11話 裸の付き合いをした

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「お前も入れよエリアーヌ! でないと、アユムと交尾しちゃうぞぉ」
「ダメェ!」

 なぜか、エリちゃんまでが浴室へ入ってくる。バスタオルだけを羽織って。

 全員、丸裸でお付き合いとか。勘弁だ。

「ここはどこだ?」

 キョロキョロと、獣人が辺りを見回した。

「僕たちの会社の宿舎だ」
「お前、社長なのか。すげえな」
「今、なったばかりだよ」
「いや、すげえ。こんなでっかい風呂まであるなんてな」

 マルちゃんは、お風呂のお湯を手ですくう。

 従業員用の、大浴場なんだけどね。

「この風呂って広いな! 中で身体も洗えるぞ」
「特注の薬草で作った、泡風呂だからね」

 この浴槽には、泡の出る入浴剤が入っている。いわゆる「外国人の泡風呂」だ。

 いくら従業員たちに体を洗うためのタオルを提供しても、受け取らない可能性があった。ドレイの身分なのだからと。この世界に風呂の文化があるかどうかすら、怪しい。

 ドレイの飼い主たちは、汚れたまま行為に及んでも平気なのか。相手が汚れている方が嗜虐心を煽るのかはわからないし、知りたくもない。

「上にある鉄棒は何だ?」

 何本もの細い鉄棒が、天井を覆っている。

「すぐにわかるよ」

 一応洗い場も用意しようとしたら、エリちゃんから首をかしげられた。

「この世界にそんな文化はない」と。せいぜい、シャワーくらいなんだって。なので、大きい浴槽と休憩用の石段しかない。ちょっとした洗い場だけ用意してもらったが。

 なので、「この浴槽に浸かって、体を擦って消毒してください」と彼女たち指示したのである。

「汚れた身体もピッカピカ!」

 突然、マルちゃんが泡だらけになって立ち上がった。

「うわ! いくら薬草泡風呂だからって、全部見えちゃうって!」
「アユムなら平気だぞ。誰もノゾキしてないしな!」

 泡まみれの身体を、マルちゃんはくねらせる。

「そうよね。ノゾキ防止のために、窓の向こうは女性寮なのよね」

 この浴場は、工場を再利用した場所だ。中で何が作られているかわからないように、窓の外に宿舎を建てて目隠しもされている。これを活かしたのだ。道路側には窓はなく、空気穴しか通していない。

「だからって直接見せなくても……あっ!」

 ヤバイ。時間に気を取られていて、従業員の入浴時間をすっかりわすれていた。

 作業員さんたちが、バスタオルのまま棒立ちに。雇い主が湯を使っていては、自分たちは入れないと考えている。

「ごめんなさい! 僕たちはもう出るので!」
「お前らも入れよ。みんなで入ったほうが、お湯の節約になるって社長が言っているぞー」
「こんなときに何を言っているのマルちゃん!?」

 マルちゃんの一言で安心したのか、ゾロゾロと従業員の少女たちはお湯に浸かりだす。二〇人くらいいるけど、浴槽内は全然余裕だ。

「みんな、社長をねぎらえ」

 とんでもないことを、マルちゃんが言う。

 従業員たちの目が、ヤバい。次々と僕に近づき、身体を触ってくる。

 ああそうか。この子たちは「そういうことをするために呼ばれた」って思っているのかー。

「違う違う! 僕はなにもしないから!」
「そういう趣味みたいだから、ほっといていいぞ」

 マルちゃんの一言で、事態は沈静化した。

 風呂から出るため、僕たちは浴槽内の石段に腰掛ける。
 壁にもたれていると、隙間からわずかにお湯が出てきた。
 身体についた泡を洗い流す。それでいて、体を冷やさない仕組みだ。

 浴槽のお湯が減り、泡が排水口へ流れていく。マーライオンの形をした注ぎ口から、お湯が出てきた。

 浴槽が空になると、上の鉄棒からシャワがブワーッと吹き出す。それで、わずかに身体に残った泡を落とすのだ。鉄棒からのシャワーは、浴槽に残った泡や汚れも流していった。

 全自動洗濯機で言う、洗濯とすすぎの要領だ。
 泡が減っていくってのは、つまり。

「ひゃあああ!」

 しまった。エリちゃんのことを、すっかり忘れていたじゃないか。

 恥ずかしがらないマルちゃんにばっかり、気を取られていた。
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