勇者が最速魔王討伐に夢中で世界が崩壊寸前。代わりに友人の僕が領地経営やモフモフ娘の救出など人助けしまくっていたら最強に

椎名 富比路

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第六章 日常のあとしまつ

第55話 従業員の結婚式を祝った

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 聞けば、五人ほどが「嫁に来ないか」と相手方に求められているという。

 お相手の中には、農家の跡取りなどもいた。それで、大量の小麦粉や野菜が送られてきたのか。ご好意ってわけじゃなかったんだね。

「わあ。すごいじゃないか」

 従業員たちも特に断る理由がなく、実際に何度かデートを重ねている子たちもいる。

「その人間たちは、知っているな。宇宙人の正体を隠しているが、根はいい男だ。ワタシが保証しよう」

 ユカさんによると、交際を求めている男性は知り合いだという。

 おう、すごい偶然だね。

「でも、アユム社長を裏切ることになるので」

 とはいえ従業員は、なぜか僕に義理立てをしているように思える。

「どうしてさ? 社員が自分を家庭を持つって、立派なことだ。最高じゃん!」
「しかし、嫁に行くんだから、やはり妊娠や出産もあって。お仕事が」
「いいじゃん、それは。従業員は増やしていく予定だから、心配はないさ」

 本当にめでたいことだ。

 彼女たちだって、成長している。自分で考えて、行動しているんだ。

 他人の幸せを妨害するつもりは、僕にはないね。

「そうだ。式を挙げよう!」

 とまあ、僕たちはノリノリだった。

 やはりというか、商業ギルド側からは困り果てた顔をされる。

「よろしいのですか、アユムさま? せっかく、商売が軌道に乗っていますのに」
「だからです。ジルダとは、今後も一緒にやっていきたいと思います」

 宇宙人たちも社員として受け入れようと、僕は考えていた。だから、なにも問題はない。

 当分、王都とジルダを行ったり来たりすることになるだろう。

 相手さんたちの様子を伺って、本当に信頼できる人か探った。しかし、そんな調査なんてし
なくてもいい人だとわかる。

 結婚式の準備をしつつ、忙しい日々を送った。宇宙人の街『メトン』への引っ越し、商業ギルドと連携して仕事のあっせんと手続き、冒険者ギルドの設立など。

 大変だけど、これこそ僕らしい仕事だ。

 僕は、ユウキのように強い敵なんて倒せない。だけど、僕にしかデキないことだってあるんだ。

 で、あっという間に結婚式当日を迎えた。

 宇宙人街『メトン』での、最初の大イベントにしたのだ。

 ウェディングドレス姿になった社員たちを、宇宙人の街にいるみんなが見守っている。

 孤児たちだった子たちが、自分の家庭を持つ。なんてすばらしいことだろう。

「アユム、みんなよかったなー」

 手羽先をムシャムシャ食べながら、マルちゃんも祝福している。

「そうね。一人の人間として、立派に成長したわ」
「うむ。家族はいいものだな、アユム」

 エリちゃんとユカさんもドレスで正装して、式を見守っていた。

「いやあ、まったくだ。楽しいじゃないか」

 お酒を持ったドワーフが、珍しく蝶ネクタイなんてしていた。

「イーサクさん!」
「いやはや。こういう祝いの席っていいね。心が晴れやかになる。同時に、こういう日常をボクたちも守らなきゃって、気持ちが引き締まるってもんだよ」

 やけに、イーサクさんがマジメなことを言う。

「実はボクも、この街に住みたいんだ」
「ホントですか!?」

 イーサクさんほどの実力者がメトンを盛り上げてくれるなら、ありがたい。

「いやあ、住みたいってのは愛人の方なんだけどね?」

 王都で何不自由なく暮らすことも考えたが、面白いことがありそうなここに腰を落ち着けたいそうだ。

「大歓迎です! ぜひぜひ!」
「ああ。それとさ」

 イーサクさんは、愛人の方へ向き合う。

「ボクたちも、一緒になろう」

 手作りらしい指輪を、イーサクさんは愛人の指にはめた。

 なんと、突然のプロポーズが始まったではないか。

 周りにいた宇宙人たちも、興奮で湧き上がっている。

「いやいや。まいったね。主役は彼女たちだ。ジジイは退散するよ。じゃあね」

 照れながら、イーサクさんは引っ込んでいった。

 こうして、結婚式は大成功で幕を閉じる。


 そのときだ。ユウキの陣営から特使が来た。
 僕に、報せがあるという。

 
 ユウキが魔王と相打ちになったらしい。
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