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第六章 日常のあとしまつ
第56話 女神が、降臨した
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「ユウキ!?」
「王都アムンセンの大聖堂に、ユウキがいる」というので、僕は直行した。
大聖堂の治療院で、ユウキは横になっている。
「死んでいる……わけではないみたいですね?」
ユウキの様子を見ていると、わずかに胸が動いていた。
彼の仲間らしき集団が、ユウキを取り囲んで魔法を施している。
「あれは、治癒の魔法ね。それでも、危険な状態だわ」
エリちゃんが、ユウキの状況を確認した。
「どこもケガしてないのに、苦しそう」
マルちゃんも、眠っているユウキを心配そうに見ている。
「魔力を使い果たして、気を失っているだけだよ」
ユウキの仲間らしき少女が、僕にそう教えてくれた。
この人、どこかで見たことがある。
僕をこの世界に召喚した女神にそっくりだ。しかし、その女神と違ってまったく愛想がない。この世すべてに、退屈しているような顔をしていた。
「アユム、誰と話しているの?」
エリちゃんが、妙なことを言い出す。
あの子が、見えていないのか?
「いや、だってそこに子どもがいるじゃないか」
僕は、少女の座っている木箱を指差す。
「誰もいないぞー」
マルちゃんまで、少女は見えていないという。
「いや、たしかにいるな。ワタシたちにしか、見えてないようだな」
ユカさんだけが、どうやら確認できるようだ。
「ムリムリ。ボクの姿は、召喚された者にしか見えない」
少女が木箱から立ち上がる。「場所を移そう」というので、みんなと離れた。
「あそこだと、怪しまれる」
「あなたは?」
「ボクはソフィア。ユウキをこの世界に召喚した女神だよ」
ソフィアという少女が、僕たちを別室に連れてきた。
「あっ!」
そこにいたのは、もうひとりの女神ではないか。
「知り合いか?」
「僕をこの世界に喚んだ女神だよ」
大雑把なソフィアと違い、もう一人の女神は丁寧にあいさつをする
「お久しぶりですアユム。わたしはリディア。あなたをここへ召喚した女神です。そこにいるのは、妹のソフィア。ずいぶんと無愛想な子でしょう?」
「上位存在に指示されて動いているだけだからね。ボクは」
「ソフィア、そんな言い方はよくありませんよ」
リディアさんがソフィアさんをたしなめる。
「お二人が降臨なさっているということは、かなり危機的な状況だと?」
「ええ。ユウキはたしかに、魔王を倒せました」
二時間にも及ぶ死闘だったという。
とはいえ、結果的に魔王も死に、魔王城も破壊できた。
「しかし、自身もエネルギーを使い果たしてしまったのです。おまけに、魔王はまだ余力を残していました」
「実はもう一体、魔王がいたんだ」
勇者たちが倒した魔王は、ゲームでいうところの「表面のボス」らしい。
「つまり、裏ボスがいるんですね?」
「ええ。表ボスである魔王は、封印されている裏ボス魔王を守護するために存在していたのです」
ユウキはそれを倒しただけで、力尽きてしまった、と。
「つまり、勇者はがんばったけど、世界はまだ平和にはなっていないと?」
リディアさんは、僕が尋ねると力なくうなずいた。
「たしかに驚異的な速さだった。リアルタイムアタックで言えば、約四時間でクリアできたようなもんさ」
僕たちはこれまで、三、四年近く旅をしている。地球時間の一時間が、この世界での一年って計算かな?
「それでも、完全攻略には足りなかった。ボクたち女神だって二人いるんだ。魔王が二人いたっておかしくなかったのに、気づけなかった。我々の落ち度だよ。申し訳ない」
ソフィアさんが頭を下げた。
「こんなタイミングで、ご報告しなければならないとは」
「どうしたんです?」
僕が問いかけても、リディアさんはまだ言いづらそうにしている。
「キミらの世界で言う『リセット』さ」
代わりに、ソフィアさんが答えた。
「それって、まさか」
「ええ。上位存在の協議によって、この世界を滅ぼすことが決定しました」
「王都アムンセンの大聖堂に、ユウキがいる」というので、僕は直行した。
大聖堂の治療院で、ユウキは横になっている。
「死んでいる……わけではないみたいですね?」
ユウキの様子を見ていると、わずかに胸が動いていた。
彼の仲間らしき集団が、ユウキを取り囲んで魔法を施している。
「あれは、治癒の魔法ね。それでも、危険な状態だわ」
エリちゃんが、ユウキの状況を確認した。
「どこもケガしてないのに、苦しそう」
マルちゃんも、眠っているユウキを心配そうに見ている。
「魔力を使い果たして、気を失っているだけだよ」
ユウキの仲間らしき少女が、僕にそう教えてくれた。
この人、どこかで見たことがある。
僕をこの世界に召喚した女神にそっくりだ。しかし、その女神と違ってまったく愛想がない。この世すべてに、退屈しているような顔をしていた。
「アユム、誰と話しているの?」
エリちゃんが、妙なことを言い出す。
あの子が、見えていないのか?
「いや、だってそこに子どもがいるじゃないか」
僕は、少女の座っている木箱を指差す。
「誰もいないぞー」
マルちゃんまで、少女は見えていないという。
「いや、たしかにいるな。ワタシたちにしか、見えてないようだな」
ユカさんだけが、どうやら確認できるようだ。
「ムリムリ。ボクの姿は、召喚された者にしか見えない」
少女が木箱から立ち上がる。「場所を移そう」というので、みんなと離れた。
「あそこだと、怪しまれる」
「あなたは?」
「ボクはソフィア。ユウキをこの世界に召喚した女神だよ」
ソフィアという少女が、僕たちを別室に連れてきた。
「あっ!」
そこにいたのは、もうひとりの女神ではないか。
「知り合いか?」
「僕をこの世界に喚んだ女神だよ」
大雑把なソフィアと違い、もう一人の女神は丁寧にあいさつをする
「お久しぶりですアユム。わたしはリディア。あなたをここへ召喚した女神です。そこにいるのは、妹のソフィア。ずいぶんと無愛想な子でしょう?」
「上位存在に指示されて動いているだけだからね。ボクは」
「ソフィア、そんな言い方はよくありませんよ」
リディアさんがソフィアさんをたしなめる。
「お二人が降臨なさっているということは、かなり危機的な状況だと?」
「ええ。ユウキはたしかに、魔王を倒せました」
二時間にも及ぶ死闘だったという。
とはいえ、結果的に魔王も死に、魔王城も破壊できた。
「しかし、自身もエネルギーを使い果たしてしまったのです。おまけに、魔王はまだ余力を残していました」
「実はもう一体、魔王がいたんだ」
勇者たちが倒した魔王は、ゲームでいうところの「表面のボス」らしい。
「つまり、裏ボスがいるんですね?」
「ええ。表ボスである魔王は、封印されている裏ボス魔王を守護するために存在していたのです」
ユウキはそれを倒しただけで、力尽きてしまった、と。
「つまり、勇者はがんばったけど、世界はまだ平和にはなっていないと?」
リディアさんは、僕が尋ねると力なくうなずいた。
「たしかに驚異的な速さだった。リアルタイムアタックで言えば、約四時間でクリアできたようなもんさ」
僕たちはこれまで、三、四年近く旅をしている。地球時間の一時間が、この世界での一年って計算かな?
「それでも、完全攻略には足りなかった。ボクたち女神だって二人いるんだ。魔王が二人いたっておかしくなかったのに、気づけなかった。我々の落ち度だよ。申し訳ない」
ソフィアさんが頭を下げた。
「こんなタイミングで、ご報告しなければならないとは」
「どうしたんです?」
僕が問いかけても、リディアさんはまだ言いづらそうにしている。
「キミらの世界で言う『リセット』さ」
代わりに、ソフィアさんが答えた。
「それって、まさか」
「ええ。上位存在の協議によって、この世界を滅ぼすことが決定しました」
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