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第一章 壁役令嬢 ~ここはわたくしに任せて先へお行きなさい!~

第5話 孤児の少女を迎え入れる

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「え?」

 何を言われたかわからない様子で、イーデンちゃんが聞き返す。

「おうちが焼けたのでしょう。ウチに住みなさい」

「でも、子どもたちが」

「わたくしが、児童のお世話をできないと思いまして? まとめて育てて差し上げます!」

 出た。ツンデレ悪役令嬢!

「参りますわよ! 敵が来ないうちに」

「はい!」

 マージョリーたんは、イーデンちゃんの手を引っ張って、隣に座らせる。子どもたちは、荷馬車に乗せた。

 こういうところだ。天然人たらしなマージョリーたん、最っ高。

 馬車の中は空気が重い。

 イーデンちゃんは、ずっと黙り込んだままだ。マージョリーたんはというと、周囲への警戒を怠らない。

『えっと、こんにちは……』

「はい。こんにちは。ダテさんでしたよね?」

 私が声をかけると、イーデンちゃんはペコリを頭を下げた。

 ちなみにインテリジェンスアイテムは、非戦闘時は指輪に変形する。ムダな魔力の消費を抑えるためだ。とはいえ、視界は装着者のものを借りている。マージョリーたんが見えているものは、私にも見えるのだ。

『イーデンちゃん、あなたも、わたしの声がわかるんだよね?』

「ええ、まあ。どういう原理なのか、わかりませんが」

『だよねえ』

 本来インテリジェンス・ウェボンと会話できるのは、イーデンちゃんだけ。
 ネタバレは避けるが、彼女はかなり特殊な生まれなのである。
 今話せば、マージョリーたんは絶対に気にしてしまう。

「ダテさま。彼女とわたくしにだけ、あなた方の声が聞こえるというのは、どういったことなのでしょう?」

『ええっとお……補正、ってことにしておいて』

「補正、とは?」

『主人公・ヒロイン補正ってやつ』

 とにかく、イーデンちゃんはこの世界を救う聖女であり、マージョリーたんはその子をかばって死ぬ運命を回避した。

 それだけを、伝える。

『つまるところ、お二人が協力しなければ世界が滅ぶ、とだけお伝えします』

 本家『魔神の盾』さんが、フォローしてくれた。

「なるほど。わかりました。まあ、事情がなくても、あなたは保護するつもりでしたが」

 荷馬車では、子どもたちがワイワイとリンゴをかじっていた。あっちは楽しそう。

『あのさあ、マージョリーたん、提案なんだけど?』

「なんでございましょう。ダテさま」

『荷馬車に移動しない?』

 さすがに武装した二人がこんな狭いところにいては、窮屈だ。

『ワタシも同意見です。荷馬車で子どもたちとたわむれている方が、イーデンさまに適しているかと』

 本家魔神さんも、同じ意見を言う。

「そうですわね。この子も心を開いてくれませんし。ギャレン、降ろしてください」

 マージョリーたんは、豪華な馬車を降りた。

「あなたは先に帰って、お湯を沸かしておいてください。使用人用の浴室もすべて。わたくしたちは、あちらの荷馬車へ移動します」

「お嬢様、お召し物が汚れまして」

「お風呂に入りますから、構いません」

 もっと厳格な人かと思ったが、ギャレン氏はすぐにマージョリーたんの思惑に気づいたらしい。

「かしこまりました。では。お気をつけて」

 老紳士ギャレン氏に指示を送って、マージョリーたんはイーデンちゃんと荷馬車へ移動する。

 重いヨロイを着ているのに、軽快なジャンプで馬車に乗り込む。

 荷台に乗り込んで、マージョリーたんはイーデンちゃんと二人でリンゴをかじる。本当は二人きりがよかったの、わかるよ。でも焦ってはいけない。コミュニケーションを円滑にしないとね。


「今日からここが、あなたたちのおうちですわ」

 マージョリーたんのお屋敷に到着した。
 バラに囲まれた大豪邸を前に、イーデンちゃんが唖然としている。
 続いてマージョリーたんは、メイド長に指示を出す。

「メイド長、あなたは子どもたちを使用人用の大浴場へ。わたくしたちのお洋服も用意して」

「かしこまりました」

 子どもたちはメイド長のおばさんに連れられ、使用人用の大浴場へ通された。 

「まずはそのきったないお召し物をお脱ぎなさい! 後生大事にしているようですが、別に親の形見とかではないのでしょう?」

「ははい。うわ!?」

 イーデンちゃんが、一気に服を脱がされる。

 マージョリーたんも、一糸まとわぬ姿に。

 いいな。これは。眼福眼福。

 それにしても、二人ともスタイルがいい。

 マージョリーたんは、巨乳のモデル体型である。いわゆる凌辱される姫騎士系といえばいいか。
 イーデンちゃんはムチムチ健康体で、明るいエロスをお持ちだ。いかにも悪堕ちヒロインというべきな。

『ところで、ダテさま。ワタシには少々気になることが』

 湯に浸かりながら、本家さんが私に声をかけてきた。

『なんでしょう、本家さま』

『ダテさま、その「本家」という呼び名、なんとかなりませんでしょうか?』

『でも、本家だよね?』

『そうなのですが、お互い魔神の盾ですし。あなたはダテというお名前がございます』

 自分にも、呼び名がほしいと。

『ああ、スペルZindellジンデルの頭文字をとって、「ゼットさん」でどうかな?』

『伯爵家に仕えているのだと実感できて、素敵ですね。マージョリー様との愛を感じます』

 ゼットさんは気に入ってくれたようだ。
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