クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

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第五問 ガウチョは何語? ~クイズ番組研究部の休日~

みんなでクイズするって、面白いですよね!

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「えっと、大した物はできませんが、何かご馳走しましょう」

 目に止まったのは、ワゴンで売られているたい焼きだ。

「あれでいいかな?」

 僕が言うと、女性陣はちょっとガッカリしたような顔をした。

「いいんじゃないかな。福原だし」
「まあ、しょーただしな。許してやるか」

 湊とのんから、称賛なのか侮蔑なのか分からないコメントが飛んでくる。

「晶ちゃんにしては太っ腹だわ」

 僕にしてはってどういう意味なの、やなせ姉。

「ご馳走になります、福原くん」

 唯一、嘉穂さんだけが真っ先に列へと並んだ。
 
 たい焼きを食べて寛いでいたら、夕方まで遊んでいた。

「今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「なんか、ごめんね。僕の思いつきで慌ただしくなっちゃって」
「でも嬉しかったです。友達同士とクイズって、ホントに面白いんですね!」

 嘉穂さんは、実に嬉しそうに語った。

「おい、しょーた」

 唐突に、のんが僕に詰め寄る。その顔は、どこか心配しているような顔をしていた。
 
「お前、大丈夫か?」

 いきなりそう尋ねられて、僕は戸惑う。

「別に、どうもしないよ」

「でも、今日のお前、どこか様子がおかしかったぞ?」

 どうも、こいつの野生的な勘が働いたらしい。

 僕は肩を落とす。先ほど、嘉穂さんに話したことを、みんなに伝える。

「オイラが越してくる前の前だな」
「へえ、結構、繊細なんだな、福原って」

 ほっといてくれ。

「ワタシも、その話は昌子から聞いていたわ。声を掛けられないくらい落ち込んでいたって。関係者じゃないから、何のアドバイスもできなかったけど」

「ありがとう。けど、もういいんだ。気を遣わなくても」

 あいつとは、違う道を進むって決めたんだ。
 それが、僕の目標だから。
 
「晶太くん、自分を責める必要なんて、ありませんよ」
 
 嘉穂さんは、力強く僕に意見する。

「だって、誰よりもお二方を気に掛けたいたんですよ。二人だって、納得した上で対立したんですから」
「ケンカした方がよかったってこと?」
「そうじゃなくて!」

 僕が言うと、嘉穂さんはブンブンと首を振った。

「ケンカするくらい本気だったんですよね? なら、晶太くんだって本気だったんですよ。でないと、そこまで落ち込まないでしょ? もし、晶太くんが本気じゃなかったなら、二人のことなんてどうでもいいはずですもの」
 
 嘉穂さんに説得され、僕は黙り込む。後悔、不安、謝罪、色々な思いが僕の心を駆け巡る。

「うん、そうだよね、ウチもそう思うよ」
「しょーたが落ち込む必要はないよな?」

 二人からも同じ答えが返ってきた。

「僕は、もう悩まなくてもいいんだな?」

「はい。晶太くんは十分苦しみました。今後は、クイズを楽しんでいいんです」
 
「元気が出たっぽいわね」

 やなせ姉が安心したような顔を見せた。

「じゃあ、ウチは帰るよ。なあ、のん。ちょっとまだ買ってない物があるから、ついてきて」
「おー? いいのか、しょーた? まあ、いいか。じゃあなー」

 のんの腕を引いて、湊は帰って行く。

「さーて、ワタシも帰るわね」

 今度はやなせ姉までがそう言い出す。
 心細くなって、僕がやなせ姉を引き留めようとした。

「しっかりね」

 そう言い残して、やなせ姉が帰っていった。

「あ、えっと」

 僕は、ポリポリと頬をかく。

「帰りましょうか」

 二人きりになってしまう。
 でも、ウキウキという気分じゃない。

 特別な会話もなく、僕たち二人は歩道をゆっくりと歩く。
 沈黙が僕たちの周りを支配する。

「実はですね、この本、昌子先輩に勧めてもらったんですよ」

 嘉穂さんが文庫本を差し出す。

「姉さんと話せたの?」
「はい。メールでオススメを教わりました」

 そうだったんだ。いつの間に仲が進展していたのか。

「面白い人ですね、昌子先輩」
「アホなんだよ」
「でも、楽しそう」
「まあ、退屈はしないけど、ずっといるとしんどいよ?」

 素直な感想を話したつもりだが、実に羨ましそうな顔を、嘉穂さんは見せる。
 そんな楽しいモンじゃないぞ。家事なんか何もしないし。

「じゃあ、夕飯の支度がありますので、これで」
「気をつけて」

 嘉穂さんが手を振って向こうへと歩き出す。
 さて、今日はこれから編集作業だ。僕は帰ろうとした。

「あの」

 嘉穂さんが、僕の方へ振り返る。
 笑顔が僕の目に焼き付く。
 
「みんなでクイズするって、面白いですよね!」

 その笑顔は夕陽に照らされて、より輝きを増す。

                                      ◆

 帰ってくると、リビングで姉がお茶を飲んで寛いでいた。

「ところでさ、晶太」

 お茶をすすりならが、姉が尋ねてくる。

「何だよ?」

「お前さあ、あの三人で、どの子がタイプなんだよ?」

 お茶を吹き出しそうになった。

「ノーコメントだ!」

 どら焼きに記された『×』のマークを、姉に見せつける。

 
 だが、危機は唐突に、現実となって僕たちの前に立ちはだかった。

(第五章 完)
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